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一念発起で「脱サラ!」失敗する人の三大特徴

自由度が手に入る一方で…

その1つは、「自分を律することができない」という特徴です。

会社勤務と独立の最も大きな違い、それは自由度です。独立すると自由が手に入ります。独立後は意思決定の連続です。自分を律することができない人は、次第に自分に甘い意思決定をするようになります。

独立すると、ビジネス上の意思決定はもちろんのこと、今日は仕事をするかどうか、朝何時に起きるかまで自由に決められます。サラリーマン時代は出社時刻までに出社する必要があるので、自ずと生活リズムができます。しかし、独立後は自分を縛る社則もなく、上司もいません。

自分を律することができない人は、平日でも昼まで寝ていたり、そのまま仕事をしなかったりということもあります。「午前中に出社するなんてもう無理」という経営者の方もいます。「これから事業を拡大するぞ」と最初は意気込んでいても、自分を律することができずに生活が乱れ、成功とは程遠い状況になってしまうケースもあります。

独立すると上司がいなくなるため、叱ってくれる人がいなくなります。そのため、自分の短所は自分で気づき、改めていかなければいけません。

「裸の王様」になりやすい経営者

よくあるのが感情の暴走です。部下の仕事ぶりや態度がいまいちだと、イラッとして怒りをぶつける。そういったことがサラリーマン時代だと上司からたしなめられて歯止めがきいていても、独立後はたしなめてくれる人がいないため、自分を律することができず、エスカレートしていきます。

それによって従業員の離職が止まらない経営者もいます。抜群の営業力で仕事を取ろうとしても、その仕事をやってもらう従業員が次々に辞めるため、仕事を請けられずに売り上げを伸ばせない経営者も数多く見てきました。

また、事業が軌道に乗るまでは謙虚だったのに、事業が軌道に乗り、拡大していくと態度が横柄になり、金遣いまで荒くなる人もいます。それによって従業員や顧客、提携先からの信頼を失い、事業が傾くケースもあります。

事業規模が大きくなるほど、より多くの人を率いるだけの人望を備えていく必要があり、そのうえで自分を律する力は欠かせない要素です。優れた経営者はその点を認識しているため、事業規模が大きくなるにつれ、より強く自分を律していきます。

経営者は「裸の王様」になりやすく、そうなると現場の実態や本音が把握できなくなり、その状態で意思決定をすると大きな過ちにつながりかねません。そのため、優れた経営者は苦言を呈してくれる部下を大切にし、部下からの苦言に素直に耳を傾け、自分が改めるべき点は反省して改めます。

このように自分を律する力は、独立後、事業を拡大していくうえでは極めて重要な力となります。

2つ目の特徴が「自分の力を過信していた」ということです。

よくこんな話を聞きます。

大手企業に勤めていた頃、取引先から厚遇され、こちらの言うことは何でも聞いてくれた。なので、サラリーマン時代は高い成果を出せていた。しかし、大手を辞めて独立した後、前職の取引先を回ると、どこも態度がそっけなく、まともに相手にしてもらえなかった。その反応を見て、「自分の力=大手の肩書」だったことに気づいた。

一方でこういう方もいます。

独立した後、前職で自分が担当したお客様は自分に付いてきてくれた。また、前職の取引先も独立を応援してくれて、独立後は新たな顧客も紹介してくれた。

このように、前職の肩書がなくなった後の取引先や顧客の反応に、自分に対する本当の評価が表れます。

独立して初めて、「自分の価値=大手の肩書」だったことに気づくケースも多くあります。つまり独立後に自分の力を過信していたことに気づいていたのでは、当初の計画が大きく狂いかねません。

そのためにもサラリーマン時代から「今の肩書がなくなっても、同様の付き合いをしてくれるだろうか」という意識で取引先や顧客と接することです。

その際は、2つの信頼について意識することをお勧めします。1つは能力や腕前等に関する「能力的信頼」、もう1つは人柄や人間性に関する「人間的信頼」です。

信頼を得るために必要なこと

能力的信頼を得るうえでは、十分なスキルや技術、知識、経験を身に付けるとともに、対応の早さと正確さ、一手先まで読んだ対応などが求められます。そして何より結果や実績を残すことです。

人間的信頼を得るうえでは、マナーや言葉遣い、立ち居振る舞い、謙虚さ、ユーモアなどに始まり、小さなことでも約束は必ず守るといったことが求められます。さらには、お互いのプライベートや過去についても理解し合う関係作りも重要です。

この両方の信頼が得られていると、独立後も継続的な付き合いを求めてくれるでしょう。ちなみにこれは、独立しない場合であっても重要なことです。

常にこの2つの信頼を得られるように接する人と、そういった意識のないまま接する人とでは、相手との関係性や本人の成長度合いに大きな差が生じます。それは自ずと社内の評価の差にもなっていくことでしょう。

そして、3つ目の特徴は「数字が読めない」ということです。

数字の認識の誤りは致命的な経営判断のミスにつながり、それによって倒産する会社もあります。例えば「利益が出ている=儲かっている」という認識の誤りです。実際そう思っている経営者はかなり多いです。念のため、なぜこれが認識の誤りかを説明しておきます。

会社は赤字が続いても、必ずしも倒産するわけではありません。しかし、キャッシュ(現金+預金)がなくなり、支払いが滞ると倒産します。つまり、赤字であってもキャッシュがあれば会社は続けられますが、黒字であってもキャッシュがなくなれば倒産します。これを「黒字倒産」といいます。

そのため、経営において重要なのは利益よりキャッシュであり、実態として儲かっているかどうかも利益が出たかどうかではなく、キャッシュが増えたかどうかで判断すべきなのです。

この点、利益は出ているのにキャッシュは減っているというケースがあります。その原因は、借入金の元本の返済や売掛金の回収遅延、在庫の滞留などが挙げられます。

キャッシュが減り続けているのに、利益が出ているから儲かっていると思い込み、従業員を増やす、新たな設備を購入するなどして、キャッシュが底を尽き、倒産。これも典型的な独立の失敗例です。

サラリーマン時代に数字を読んで経営判断を行うことをしていなければ、独立後にこういう失敗をする可能性は十分にあります。

独立する前に意識しておくとよい3点

①自分を律する環境がなくなる
②会社の肩書がない状態でビジネスをする
③数字を読んで経営判断をする

これらはサラリーマン時代にはなかなか経験できないものです。だからこそ、サラリーマン時代は活躍できていても、これらのことが原因で独立後にうまくいかなくなることがあるのです。

今後、独立を目指される方はこういった点を意識しながら、日々の仕事に取り組んでいただければと思います。それを意識するのとしないのとでは、独立後の展開に大きな違いが生じるでしょう。