他人の成功への「黒い嫉妬」をこじらせる人の心理

「嫉妬」の対象はいったい何なのか?

私たちは、どんなときに「嫉妬」を感じているのでしょう?

もちろん、その「対象」は人によってさまざまです。次の項目は、私のブログやSNSをフォローしてくれている方たちから寄せられた「嫉妬してしまう対象」のリストです。

Q.あなたは何に嫉妬しますか?
① 仲良しカップルや既婚の友人
② パートナーに大事にされ、幸せオーラの出ている人
③ 周囲の異性からチヤホヤされている職場の同僚
④ 優しい夫(妻)と子どもに囲まれ、持ち家で暮らす友人
⑤ 優雅な生活を送り、お金に苦労していない人
⑥ 生い立ちに恵まれ、望んだ未来を手に入れている人
⑦ 仕事も家庭もバリバリこなしている人
⑧ 夢に向かって頑張っている人
⑬ 端正な顔立ちの人/スタイルがいい人
⑭ 喜び上手で受け取り上手な人
⑮ 「楽しい」や「嬉しい」を素直に口に出せる人
⑯ 欲しいものを「欲しい」と言える人

ざっと紹介しただけでも16個。なかには思わず「それ、わかるなあ」と共感してしまう項目があったかもしれませんね。一見するとバラバラのようにも思えますが、①~④は恋愛や結婚、⑤~⑧は仕事やお金、自己実現、⑨~⑫は若さや家族との関係、⑬~⑯は容姿や性格に関わるものへの嫉妬ともいえそうです。

そしてもうひとつ、すべての嫉妬に当てはまるものがあります。

それは、嫉妬の対象こそ「じつは自分自身が手に入れたいと望んでいるもの」であるということ。

仲のよい夫婦になりたい、仕事をバリバリこなしたい、夢に向かって頑張りたい、素敵なスタイルを手に入れたい、受け取り上手になりたいといった願望が、嫉妬の背景にあるのです。

多くの人は「だったら、それを素直に認めればいいのに」と、頭では理解できています。でも、それがなかなかできないのです。なぜなら「幸せな家庭を手に入れたい!」そう願うけれど、心のどこかで「どうせ私には手に入らないのだろうな……」とも思っているから。

「休日に仲良くショッピングモールで買い物をしている家族」に激しく嫉妬してしまうのは、「私もそれが欲しい!」と思う一方で、「私にはそんな魅力もないし、手に入れることはできない」という思い込みがあり、その「葛藤」がやがて嫉妬というかたちになって湧き上がってきます。

素直に認められない理由には、無価値感や劣等感といった別のネガティブ感情が影響しています。つまり嫉妬というのは、「欲しいけれど、手に入らない」という心の葛藤が生み出している複雑な存在でもあるのです。

嫉妬のレシピは「うらやましい」「ネガティブ感情」

日頃から自分のことを客観視できる人は、自身が望むものを手にしている人に抱いた感情に対し、「ああ自分は今、あの人のことがうらやましいんだな」と分析しています。たとえば職場で自分より先に出世した同僚に嫉妬を覚えたのなら、「出世していいな、うらやましいな」という思いがあるわけです。

でも「うらやましい」という気持ちと「嫉妬」って、厳密には違いますよね? 嫉妬のほうがはるかに激しく、暗く、ネガティブに感じられます。

じつは私たちは、「いいなあ、うらやましい!」と素直に認められる心理状態であれば、「嫉妬」をさほど強くは感じていません。多少の悔しさや寂しさはあるかもしれませんが、むしろ「おめでとう」「よかったね」と祝福し、「私もそうなれるように頑張る!」と前向きにとらえられるのが「うらやましい」という感情なのだと思います。

ということは、嫉妬を覚えたときに「いいなあ、うらやましい!」と素直に思えたなら、嫉妬に苦しまずに済むわけです。

では「いいなあ、うらやましい!」と素直に認められる気持ちと嫉妬は、何が違うのでしょうか。どうやら「うらやましい」という気持ちに、次に紹介するようなネガティブな感情が入り込むと、嫉妬に姿を変えるようなのです。

それは、無価値感、劣等感、怒り、罪悪感、嫌悪感、無力感、不安、怖れ(抵抗)、不信感、失敗感、競争心、独占欲といった感情です。

前述した「出世した同僚」を例に、具体的に当てはめてみましょう。

【無価値感】……私には出世できるような魅力も価値もない。そんな自分はどうせ認めてもらえない。

【劣等感】………私は出世したあの人よりも、さまざまな点で劣っている。
【怒り】…………なんで会社や上司は、私のことを認めてくれないんだ!
【罪悪感】………私が出世しても、会社や部下に迷惑をかけるだけだ。
【嫌悪感】………出世したからって、別にいいことなんて何もない。
【無力感】………私には、出世して責任を負うほどの能力がない。
【不安】…………私が出世しても、うまくできるかどうか不安だ。
【怖れ(抵抗)】…出世なんかしたら、仕事がさらに忙しくなって大変になる。 
【不信感】………あの人が出世するなんて信じられない。絶対に何か裏がある。
【失敗感】………かつて責任ある立場でうまくいかなかったことがあるので、自信が持てない。
【競争心】………あの人よりも私が下だなんて、納得できない。
【独占欲】………他の人が会社から評価されるなんて許せない。

しかし、ここに書いたような感情は通常は抑圧されているので、その人自身も認識はしていません。無価値感があるのだけれど、それを感じないようにしているので「嫉妬」になっていると考えられます。

「私なんてどうせ大した実力もないし、出世なんてできない」という無価値感が心の中にある人の場合、嫉妬を本質的に解決していこうと思ったら、その嫉妬という感情をつくっている無価値観と向き合っていく必要があるのです。

もしその無価値感を癒していくことができれば、純粋に「うらやましい」と思うだけになり、嫉妬する自分への苦しみから解放されます。嫉妬の裏に隠れた本当の感情を知ることで、より具体的な対策を考えることができるようになるのです。

嫉妬をパワーに変える3ステップ

では、嫉妬を覚えたときに、その感情そのものと向き合っていく方法をお伝えしていきましょう。

【ステップ1】自分の「魅力」を発見する

自分が嫉妬していることに気づいたら、そこから目を逸らさずに、次の質問を自分自身に投げかけてみます。

・私は、相手の「何に」嫉妬しているのだろう?
・私は、何を「うらやましい」と思っているのだろう?
・私は、何を「手に入らない」と思って、嫉妬してしまったのだろう?
・そこからわかる、私が本当に「欲しいもの」は何だろう?

頭で考えるのではなく、胸に手を当てて心の中にいる自分に問いかけ、その声を聴くつもりで、ゆっくりと質問を繰り返してください。

「嫉妬に向き合う」という行為は、自分のあらゆる感情を否定することなく肯定し、その意味を探る作業でもあります。直視したくない気持ちが出てくるかもしれませんが、できるだけ逃げずに向き合ってみてください。そして、自分が欲しいものが何かがわかったら、次のステップに進みます。

【ステップ2】欲しいものを素直に認める

自分が本当に欲しいものが見つかったら、それを素直に欲しいと認めます。できれば声に出して次のセリフを口にしてみてください。

「私は、○○が欲しい」

1度だけでなく何度も言葉にしてみるといいでしょう。

そのとき、惨めさや無価値感、自己嫌悪などの感情がどっと襲ってくるかもしれませんが、そのときはノートや紙にネガティブ感情をただ吐き出していきます。出し切ったら再び「私は、〇〇が欲しい」と声に出して繰り返します。

欲しいものを「欲しい」と認められるようになってくると、心は不思議と落ち着きを取り戻していきます。

ホッとした気持ちになれたら、次のステップです。

【ステップ3】プラスの言葉にする

私たちは手に入らないものを欲しがることはしません。つまり、あなたが嫉妬している何かは「自分も手に入れられる」と知っているものだけなのです。顕在意識ではそのことに気づいていないかもしれませんが、心の中ではちゃんと知っているのです。自分自身の心を信頼して、再び次のセリフを口に出して言ってみてください。

「私は、○○を手に入れられる」

この言葉も何度か繰り返して言ってみます。できるだけお腹に力を入れてみると、より効果が実感できるかもしれません。

なお、この「○○」入るものが相手の魅力や価値、才能に関するものならば、次のように言い換えてください。

「私も、○○です」

「私にも、○○という魅力があります」

何度もこれらの言葉を繰り返し言っていると、お腹の底からだんだん力が湧き上がってきて胸が温かくなったり、ホッと安心したりすることに気づくと思います。

ポジティブな方向に進むために

嫉妬そのものは大きなパワーを持っています。そのエネルギーはネガティブな方向に進むと、ますます強烈な嫉妬として膨らんでいきますが、いったん嫉妬を直視した上で、自分が望んでいるものが何なのかを知ることができれば、ポジティブな方向に進めます。

つまり、嫉妬したからこそ、そのパワフルなエネルギーをプラスに変えて手に入れることができるということ。

避けがちな嫉妬と向き合うことで、あなたは自分が本当に欲しいもの(望んでいること)や、自身の魅力、才能に気づき、それらを手に入れられる可能性があるということを認識できたのです。

そこまでたどり着けたら、あとはそのプラスとなったパワーで、魅力や才能をどんどん磨いていきましょう!

ここで紹介した3つのステップは、すべてがスムーズに進めるとは限りません。ステップ1で時間がかかる人もいますし、ステップ1、2と順調にきたものの、最後のステップ3でどうしてもポジティブな方向へ踏み出せない人もいます。

しかしこれは、それだけ向き合うものも大きいということ。ステップを進めることを目的とせず「私にとって今はまだ、このステップでじっくりと向き合う時間が必要な時期なのだな」と受け止め、焦らずに自分のペースで行ってください。