人気青果店が実践する「型破り」な伝え方の極意

人気の青果店が自然にやっている「伝わる方法」とは?

ある地域で人気の青果店の話です。

このお店では普通はあまり伝えない「あること」をお客さんに伝えているそうです。

さて、「あること」とは何でしょうか?

答えは、「今日おすすめしない野菜や果物」を正直にお客さんに伝えること。

おすすめしないことを正直に言ってしまったら、その野菜や果物は売れ残ってしまいます。ですが、その青果店はそれでもいいそうなんです。青果店のお客さんはほとんどがリピーター。日常的にそのお店を使ってくれる人です。

そういう人が「おいしくない野菜や果物」を買っていってしまったら、お店の評判も落ち、次からは近所のスーパーに買いに行ってしまうかもしれない。だから、できるだけ正直に言っているそうです。

この話を教えてもらったとき、この青果店は「伝え上手」だと思いました。この話の中には「伝わる方法」が凝縮されているからです。

この青果店はただお客さんのことを考えてそう伝えているだけだと思いますが、この中には2つの「伝わる方法」が使われています。

ひとつは「ダメなものを伝えることで、いいものが引き立つ」という方法です。「おすすめしない」ことを伝えることで、逆に「おすすめされたもの」の価値が高まります。これは伝わる方法のひとつ「比較」です。

たとえば、比較は本のタイトルでもよく使われています。『金持ち父さん貧乏父さん』『頭がいい人、悪い人の話し方』など歴代のベストセラー本にも比較が使われています。

もうひとつの伝わる方法は、「信頼感」です。ダメなものを正直に伝えることで、お店の信頼感を高めています。正直に話す→信頼感が生まれる→信頼感がある人の言葉はスルスル入ってくる。そんな流れができています。ちょっとしたことですが、これだけで伝わり方が大きく変わります。

このような「伝わる方法」はほかにもいろいろあります。「ファクトとメンタル」「フリとオチ」「外部力」「相手メリット」など、その方法を身につけることは、仕事や日常に起きる「なかなか伝わらない」「コミュニケーションがうまくいかない」という問題を解消する一助になるはずです。

伝え方がうまい人は「たとえる」のも上手

ここでもうひとつ、「伝わる方法」を紹介します。それは「たとえる」です。

「○○界のユニクロ」

「○○界のスターバックス」

そういわれるとはじめて聞く会社名であっても、どんな会社かイメージがつきやすくなります。身近なものにたとえる。これも伝わる方法のひとつです。たとえることによって「イメージが見える化する、自分ごと化する」という効果があります。

この「たとえ」を使うときは、伝えたい相手が「理解しやすいもの」にするのがポイントです。相手が一人ならその人が理解しやすいものを、相手が複数ならみなが理解しやすいものを選びます。相手が野球好きなら野球に、登山が好きなら登山でたとえる。

一方で、多数の相手に伝えるシーンでは、野球や登山など好みが分かれやすいたとえではなく、比較的共通して理解しやすいものにたとえる。食べ物やレストランの話や、話題になっているニュースを使うと、伝わりやすいたとえかになると思います。

たとえばこんな感じです。

先輩が後輩に「仕事は細部までこだわることが大切だと伝えたいとき」。

「神は細部に宿るというけど、仕事でもディテールにこだわることが大切。レストランでも料理はおいしいのに、グラスに汚れが残っていたり、サービスが悪くて不快な思いをすることもあるよね。おいしいからいいというわけではなく、お客さんが喜んでくれるよう細部まで手を抜かずにやりきることが大切で、仕事もレストランと同じように細部に手を抜いてしまうと、成果が出ないことがあるので、やりきろう」

「たとえる」は最初に伝えたいことを話し、そのあとに「たとえ」を入れることで、話の意味が伝わりやすくなります。

ここまで、「比較する」「たとえる」「信頼を得る」といった方法をお話ししましたが、ひとつの物事でも、さまざまな方面から多角的に伝えることが可能です。ここでもうひとつクイズを出題しましょう。

居酒屋などでおなじみの「煮込み」。煮込みのおいしさを、あなたならどう伝えますか?

たとえば、グルメ評論家ならこんな伝え方をするんじゃないでしょうか。

「この煮込みは、新鮮なモツを丁寧に下処理していて、その仕事がすごいんです。ですから一切臭みがありません。ワインと味噌を合わせてそこに隠し味のしょう油を入れていて、味がとにかく奥深いんです……」

これは煮込みの本質的な魅力を「深掘りしていく伝え方」です。

ほかには、こんな伝え方もあります。

「アツアツのごはんにぶっかけて食べたら超うまい!」

 これは煮込みの魅力を「広げていく伝え方」です。

伝え方がうまい人の話をじっくり聞いてみる

また、煮込みを作っているお店のご主人にスポットをあてて伝えるケースもあります。

「創業以来50年継ぎ足されてきたたれを使って、さらにご主人が改良を加えた煮込みです。ご主人はもともとフレンチのシェフでしたが、先代との出会いで煮込みの世界に魅了され、弟子をとらない先代に何度も何度も頼み込んで弟子入りし……」

これは「ストーリーを使って伝える方法」です。

さらには、映像で伝えるなら、食べながら満面の笑みで「うまーーーーい!!!」という伝え方。

これは「見た目で伝える方法」です。

これらの方法をかけあわせて伝えてくれる煮込みの名店があったら、絶対行きたくなりますね!

どれもコツを手に入れれば再現可能な方法です。伝え方がうまい人の話をじっくり聞いてみてください。多くが、このような「伝わる方法」をうまく活用しているはずです。

これらの方法を、コミュニケーションの課題解決にぜひ役立ててください。