面接でアウト判定される「残念な就活生」の共通点

表情がなければ会話は成立しない

面接は会話によって成立し、会話は言葉のキャッチボールを意味する。ただ言葉だけが行き交うのではない。言葉と共に感情も行き来する。バラエティ番組を観ると、ボケやツッコミが飛び交い、笑ったり怒ったりと表情が豊かだ。表情は感情を相手に伝える。

 

表情がないと、言葉があっても感情を共有できない。相手は否定的な感情を持つようになる。逆に、笑顔やうなずきなどの所作は相手への同意を伝え、好感度が高くなる。

人事がマイナス評価を下すポイントは明確。以下に紹介しよう。

「笑顔や元気のない学生」「挨拶がない」「棒読み的な返答」「声が小さい」「目を伏せる」「やる気が感じられない」

低く評価される学生の特徴を読むと、オンライン面接に対する不慣れがあるようにも思える。面接スキルの基礎が身についていないままに、オンライン面接に臨む学生がいる。こういう学生に対し人事の評価は厳しい。

「表情が暗い、姿勢が悪い、声が小さい等の基礎的部分が低い学生。回答がズレている」

油断もある。想定質問シートを壁に貼ってカンニングしている学生がかなりいる。たぶん面接官に気づかれないと思っているようだが、たくさんの学生と接する面接官はそういう素振り(顔の向きや目線)に敏感だ。

もしかするとその学生は面接に慣れておらず、内気なので目線が揺れているのかもしれない。しかし、インチキ行為と疑われたら、即アウトだろう。こういうカンニング学生を採用すると、仕事でインチキをする可能性がかなり高いと判断されるからだ。

疑われないためには、会話の基本が必要だ。面接中は、「相手の顔を見ながら話す」が鉄則だ。

「表情が出にくい学生。(オンライン面接で)シナリオを手元に置いて利用している学生」

「PC周辺のメモを見ている」

論理性に欠ける長い回答は「アウト」

友だちや家族との会話と面接での会話は異なる。親しい関係での会話は短い。「食べに行く?」「ぼくも行きたい」「あのラーメンはおいしかった」「私も行ったよ」と「話す」内容はシンプルだ。面接ではストーリーが必要になる。ストーリーは論理的な展開を持つ。

論理的展開の要素が5W1Hだ。「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(何を)」「Why(なぜ) 」「How(どのように)」が6つの要素だ。それほど難しいことではない。正確に話したり書いたりしようとすると5W1Hが必要になる。新聞記事は5W1Hの勉強になる。ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)などでは「With(だれと)」も重要になる。

ところが、きちんと話せない学生は多い。たぶん論理的な会話の経験が少ないのだろう。

「会話が弾まない、要領を得ない回答が多いこと」

「自分の言葉で話せない学生」

「“言葉のキャッチボール”にならないトンチンカンな答えをする学生」

論理性に欠ける話の特徴は「長い」ことだ。学生は正確に自分を表現し、面接官に理解してもらいたいので延々と話すのかもしれない。しかし、面接官は表現力に欠け、冗長と判定する。長すぎる回答はアウトだが、短ければいいかというとそうではない。中身がなければ「アウト」判定だ。

「話が長い、的外れな回答をする、自己分析ができていない」

「質問に対する回答が不明確で、冗長としている」

「極度に冗長であったり、短い回答は独り善がりの対応に感じ、評価は低くなる」

 

柔道や剣道、空手では基本的な精神を「礼に始まり礼に終わる」と表現する。「礼」とは相手に正対し、腰から上半身を折って頭をかがめ、敬意を示す行為を指す。武道に限らず、相手がいれば常に「礼を尽くす」のが大人の礼儀だ。礼節という言葉もあるし、ビジネスマナーという言葉を使うこともある。

相手を尊重するために謙虚な姿勢を示すことが礼儀。面接の開始時に頭を下げて「よろしくお願いいたします」と挨拶(お願い)し、終了時にも頭を下げて「本日は貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました」と御礼(ありがとう)を述べる。そして、すべての会話は敬語で行われる。

面接はこのような基本的なマナーを前提にしているが、その前提を守らない学生がいる。これは即「アウト」判定だ。

面接担当者のなかにはフランクに話す人がいる。「ふーん」「そうか」「オレの時代には」「それは違うね」などの語り口を聞くことがあるだろう。だからといって学生が対等なタメ口を使っていいわけではない。

「基本的なマナーを備えられていない学生。質問に対する回答がズレてしまう学生。用意してきたことしか話せない学生」

「主体性がない。敬語が使えない。志望度が感じられない」

トンチンカンな回答に不満

人事にとって面接の目的とは、言葉の応接によって学生を理解することだ。理解して自社への適性を判断する。ところが、理解できない類の学生がいる。面接官の質問の意図をくみ取れず、トンチンカンな回答をする学生だ。人事の不満コメントを読むと、かなりの数の学生がコミュニケーション不全らしい。

「早口や、質問に対する答えが的はずれの学生」

「質問の意図の理解が不足している学生」

こういう学生は、面接に関する基礎から学習しなければならない。ただ、面接の基礎から学んで、きちんと応接すればそれでいいのかというと、それだけではない。その内容が問われるのだ。

「面接」と検索すればたくさんの想定問答や注意事項を知ることができる。一生懸命に読めば一通りのスキルを身に付けることは可能だろう。模範回答を読めば、「ああこういうふうに話せばいいんだな」と強く影響されるだろう。そこに落とし穴がある。

就活サイトに影響されて同じような内容を話す学生はとても多く、面接官はうんざりしている。本人は真面目に面接対策をしたと思っているかもしれないが、まねごと、偽物の言葉なのだ。

「テンプレート的な回答が多く、深い質問をすると回答につまる学生」

「選考を受けている会社の説明会資料や、ホームページなどから拾った言葉でしか説明できない学生」

「予め用意していた回答しかできない学生」

人事が低い評価を下す学生に共通するのは、コミュニケーション力の低さや欠如だ。質問の意図を理解できない学生、冗漫に延々と話し続ける学生、言葉が極端に短い学生、言葉が曖昧な学生は、いずれもコミュニケーション力が不足している。

コミュニケーション力不足以外の欠点もある。チャラい、消極的、素直さがない、自己中心的、他責的で無責任な学生もいる。

こういうコメントを読んで感じるのは、人間として成長が足りないということだ。もちろん「わからないのが当たり前だと思い、面談している」という面接官もいる。社会人経験のない若者にわからないことが多いのは当然である。

だが、別の面接担当者は、「学生生活の経験値が低い、考え方が浅薄」とコメントしている。さらに「大学生活の経験から学ぶことが少なく、考え方が浅くて薄っぺらな学生がいる」と考えている。

コロナ禍も一因かもしれない 

なぜ経験値が低いのか? その原因はコロナ禍かもしれない。講義はオンラインで実施できたかもしれないが、大学生活での学びはキャンパスでの交遊から得られるものが多いからだ。ところが、一昨年も昨年もキャンパスを自由に闊歩することができなかった。

就活においてもキャリアセンターの支援を十分に受けられなかった学生が多いはずだ。オンライン模擬面接を実施しているキャリアセンターもあるが、これまでの支援と比べれば手薄いといわざるをえない。

これから2023年卒採用の面接が本格化するし、6月からはもう次の2024年卒のインターンシップ募集が始まる。キャリアセンターの支援体制の強化を期待したい。