本当のお金持ち「笑顔を増やす」お金の使い方

君の1000円札1枚が世の中を変える

働く会社も、働き方も大きく変わろうとしている時代に、株式投資家になるとしたら、どういう投資家を目指しますか?

お金に振り回されない生活を手に入れるお金を稼ぐ投資家、自分の夢をかなえるためのお金を稼ぐ投資家、それともデイトレーダーになって何億円、何十億円という資産家を目指しますか。

自分のお金を増やすのもいいのですが、社会を変えるきっかけをつくる投資をしてみたいと思いませんか? 投資家の行動には、社会を変える力があるのです。

古くは1920年代の話です。欧米で教会の資金を運用するに際して、タバコやアルコール、ギャンブルなど、キリスト教の教義に照らし合わせて相応しくないと思われる業種を、投資対象から外すという動きが広まりました。

ベトナム戦争では、AP通信社のカメラマンが撮影した1枚の写真が大きな話題を呼びました。ナパーム弾の攻撃を受けた人々の中、全裸で逃げる1人の少女に焦点を当てた写真です。この写真が報じられたことで、世界的にベトナム反戦運動が広がりました。投資家も行動しました。ナパーム弾を製造していたダウ・ケミカルに対して、同社の株主は、その製造中止を訴える株主提案を行ったのです。

南アフリカの人種差別政策であるアパルトヘイトに対しても、アメリカの大手自動車メーカーであるGMに対して、南アフリカから事業を撤退させるべきだとする株主提案が行われたことがあります。

最近はESG投資が話題になっています。投資をする際に、従来は財務諸表や損益計算書などの決算書類の数字を見て投資するかどうかを判断しましたが、それらに加えてESG投資では、環境(Environment:E)、社会(Social:S)、ガバナンス(Governance:G)の3要素も考慮に入れたうえで投資先を選びます。

この3要素を見ればわかると思いますが、それらに配慮して投資先を選ぶことによって、たとえば地球環境に対して配慮していない会社、反社会的な会社、企業統治がしっかりしていない会社は投資対象から外されるリスクが高まります。投資対象から外されれば、株価は下がります。

そして、大半の会社はそうだと思いますが、やはり株価が大きく下がるのは望ましくないと考えているので、これら3要素の実現に向けて企業努力をします。結果的に、世の中、社会は少しずつではありますが、よい方向へと進んでいくはずなのです。

君の1000円札1枚でも、世の中を大きく変えるきっかけになるのです。

かけがえのないリターン

世の中をよくする投資家になるには、君が成長するための「自分への投資」も大事です。そもそもお金が無かったらどうにもなりません。そのお金をつくるうえで、自身の能力を高めていく必要があります。

語学や会計、経営、マネジメント、マーケティング、法律、税務などの知識は、投資をする時にも役に立ちますし、ビジネスの現場でも有効活用できます。これらの自己投資は一時的にお金が手元から離れていきますが、必ず後になって大きなリターンにつながっていきます。

若いうちは自分に投資をして、将来、大きなキャッシュフローを生み出せるような実力を身につける。お金を生み出す実力がついたら、今度はそのお金を、社会にとって有益と思われる会社の株式に投資する。

そして、資産がどんどん大きくなったら、応援したいと思う社会起業家やNPOに寄付して世の中全体にお金が回るようにしてください。子育て、介護、環境保護、地域活性化など、君たちの周りには解決しなければならない社会的課題が数多くあります。

これらの課題解決のためにすばらしい活動をしている人たちがたくさんいます。でも、資金が足りずに、大きな影響力を持てないでいる人もたくさんいます。「誰かが経済活動を行ううえで必要な原資として提供する」ことが投資の大前提ですから、その意味で投資と寄付は同じです。

寄付することで、社会の問題を解決できた、誰かの役に立てたと実感できれば、かけがえのないリターンが得られます。お金が増える投資のリターンも、笑顔が増える寄付のリターンも一緒です。幸せをもたらしてくれます。

お金に振り回されるのではなく、お金を自由に動かす。それが本物のお金持ちなのです。

君は、何をしているときに幸せを感じるか?

もう少し身近な話をしましょう。君は、何をしているときに幸せを感じますか? 高校生の君は、「友達と一緒にいるとき」「おいしいものを食べるとき」「オンラインゲームをするとき」「好きなミュージシャンのライブに行くとき」「映画を観るとき」「部屋でぼーっとしているとき」などといったことが挙がると思います。

では、それを実行するためにはどのくらいのお金が必要でしょうか? そのお金をつくるために、君はどんな工夫をする必要があるでしょうか?

社会人になると、幸せの基準に「仕事」が入ってくると思います。あるいは結婚して「家族」という基準も入ってくるでしょう。家族と過ごす時間を幸せと感じるのであれば、その生活を維持していくのにいくらお金が必要なのかを計算して、そのお金が滞りなく得られるような仕組みを築いていく必要があります。

いずれにしても、人によって幸せの基準は異なりますし、何が正しくて、何が間違っているのかということもありません。

大切なことは1つです。君にとっての幸せを実現するために、道具としてのお金を手に入れることです。

自分が今、何をするのが幸せなのかという軸を持たないと、ただただお金を貯めるだけの人生になります。それは結局、お金に振り回されるだけの人生になります。それはやはり不幸なことです。

ですから、まずは自分の幸せの基準を見つけて、そのうえで世の中にお金を循環させる方法を考えてほしいと思うのです。

究極の幸せはミッションの追求

究極の幸せとは何かを考えると、それはミッション(使命)の追求なのではないかと思います。

高校生の君は、まだ自分のミッションが何か、わからないと思います。どうすれば自分のミッションに気づけるのでしょうか。それは今、自分に与えられたことに一生懸命に取り組むことです。

高校生なら勉強や部活に、社会人になったら与えられた仕事に一生懸命に取り組んでください。勉強にしても仕事にしても、ただ漫然と続けるのではなく、なぜ学ぶのか、なぜ働くのかをつねに考えてください。 すると、世の中をよくするために、自分がしたいことが見つかります。それが、君のミッションです。

そして、日本人だけではなく世界中の人々にとって共通のミッションがあります。それは、平和を維持する、貧困をなくす、多様性を認める、差別をなくすなど、世の中を少しでも誰にとってもいい方向に進めていくことです。

そして、これらの課題を解決するための地下水脈として「お金の流れ」があるのです。お金が脈々と流れなければ、何も実現できません。それだけお金は大切なものなのです。

お金には必要性の4段階があります。第1段階が「自立して生きるのに必要なお金」、第2段階が「やりたいことをするためのお金」、第3段階が「不測の事態に備えるためのお金」、第4段階が「他人や社会のために使うお金」です。