「デジタルは苦手」を克服するちょっとした心構え

まずは触ってみることからはじめる

スマートフォンを使っていて便利だと感じた瞬間はたくさんあるはずだ。すべてを使いこなす必要はなく、自分が興味のある分野からまずは使ってみて便利さを実感していくといい。スマホがあれば、調べ物や買い物のみならず、映画や音楽を楽しんだりすることもできるので、食わず嫌いをやめて、まずは触ってみるところから始めよう。

パソコン(PC)、スマホ、タブレットはそれぞれ形状が違い、得意な分野も異なっている。PCは長い文章を打ち込んだりするのには便利だ。スマホは持ち運びに便利だが、画面が小さく、細かい文章を読んだり、入力したりすることには向いていない。反面、動画や情報の視聴という意味では事足りる。タブレットはスマホの画面が大きくなったものと考えればいい。それぞれのライフスタイルや用途によって使い分ける。

デジタルツールに苦手意識を持っていると、「まず習ってからでないと怖くて触れない」と考え、使うことを躊躇してしまう。だが、ここは「習うより慣れろ」だ。自分の興味のあることを優先して、キーボードや画面に触ってみる。このように心がけていれば、気がついた頃にはある程度使えるようになっているものだ。

PCやスマホなどはしょせん道具にすぎず、私たちの生活を便利にするものである。それらを使うこと自体が目的ではなく、自分が使える部分のみをかじればいい。それ以外のことは無理に覚える必要はない。

最近のデジタルツールは基本的にネットにつながるので、最低限のリテラシー(知識)は必要だ。これは交通ルールのようなもので、知らずに使っていると思わぬ事故に遭ったり、事故を誘発したりする。

ネット上では、本物そっくりのサイトに誘導して銀行やクレジットカードのID、パスワードを窃取するフィッシングといわれるような詐欺や悪質なウイルスメールなどが増えている。手口は日々巧妙になっているが、悪質なメールはパターンが類似しているので慣れてくると見分けることができる。このような最低限のリテラシーを身に付けて、財産や情報を奪われたり、悪用されたりすることがないようにしたい。

デジタルツールを使っていて、困ったことが起こると、すぐに知識のある人に連絡し、解決策を求める人がいる。しかし、知識のある人もそれなりに調べたり、その結果を詳細に伝えたりする必要があり、労力と時間を費やしているわけだ。人の時間はタダではない。

自分で解決する習慣を身につける

現在ではネット上で検索すれば、ツールのおおよその使い方はわかるものだ。トラブルについても、詳しい人のブログや解説記事が見つかるはず。人に尋ねる前に自分で検索して調べてみる習慣を身に付けよう。それがデジタルツールを身近な存在にする近道なのである。

デジタルデータは慎重に扱う必要がある。データは意図的に削除するときだけでなく、紛失したり、機器や記憶装置が故障したりすると簡単に失われてしまう。とくに撮影した写真や作成した文書などは失われると二度と戻らない。

PCに保存した写真データなどは定期的に別のハードディスクやUSBメモリーなどにバックアップを取り、2つ以上の場所に保管しておく。スマホにはネットを介してクラウド上に自動的にバックアップを取る機能があるが、無料で使える容量は限られており、データが多くなると追加で費用を払って容量を購入する必要がある。自分で必要な容量を把握し、バックアップに必要な分が確保できているか確認しておきたい。

デジタルの世界ではさまざまな場面でIDやパスワードの入力が要求される。たくさんのパスワードを設定すると忘れてしまうので、1つのIDとパスワードの組み合わせを複数のサイトで使用している人も多いと思うが、これはあまりお勧めしない。いずれかのサイトでそのIDとパスワードの組み合わせが漏れると、それを入手した悪意を持つ者がすべてのサイトにアクセスできてしまうからだ。SNSのアカウントが乗っ取られる原因の大半はこれだ。

サイトごとに異なるパスワードを使用し、パスワードはなるべく長くするのがいい。最近では「s9Jgl%r34!」などの意味のないパスワードより、「kyomoiitenkida(今日もいい天気だ)」などの「文章になっていて、ある程度の長さのあるもの」が推奨されている。文字列が長いとそれだけ解読に時間がかかるためだ。

パスワードを書いた付箋をPCに貼るのは厳禁

ブラウザー上に各サイトのパスワードを安全に保存する機能があるので、それも活用しよう。パスワードを書いた付箋をPCのディスプレーの横に貼っている人がよくいるが、これは家の鍵をかけてそれをテープでドアの横に貼っておくことに等しいので絶対にやめるべきだ。

ネットは世界中とつながっており、それゆえに新しい情報がすぐに手に入ったり、仲間や友人とすぐつながれたりする便利さがあるが、それだけに危険なこととも隣り合わせだ。詐欺行為や犯罪行為も多発しており、知識なく使用していると被害に遭うこともある。

悪質なウイルスに感染すると、自分の端末の中の情報をネット上に勝手に流出させられたり、勝手に暗号化され開けなくされた揚げ句、身代金を要求されたりするケース(ランサムウェア攻撃)もある。これらの被害情報や対処法などもネット上に載っているので、一度見ておき、被害に遭わないように気をつけたい。

さらに、ネット上では誰でも情報発信ができるので、検索に引っかかった情報が必ずしも正しいという確証はない。真実でない情報を意図的に拡散させることも容易にできてしまうので、情報を鵜呑みにするのは危険だ。情報が正しいかどうかを見極める能力をつけるよう努力してほしい。

デジタルツールは使い方を誤ると自身や他人を傷つけてしまう両刃の剣でもある。メリットとデメリットを十分理解したうえで、便利に使いたい。