確率と期待値「賢くお金を増やす」のは、どっち?

株式投資の成功確度を高める物差し

株式に投資する人は、将来的に株価は上がると思っているから、その会社の株式を購入するわけですが、絶対に株価が値上がりするという保証はどこにもありません。

もし、その会社が倒産でもしてしまったら、投資したお金は恐らく戻ってこないでしょう。つまり、投資したお金がゼロになってしまう恐れもあるのです。会社が倒産するという悲惨な状況に直面しないまでも、思った以上に売り上げや利益が伸びなかったというケースはあります。

その会社の業績が良くなるかどうかは、正直、誰にもわかりません。さまざまな材料を集めて総合的に判断し、「この会社の業績は確実に伸びる」と結論づけたとしても、どこかに不確定要因が潜んでおり、それが顕在化して業績が急落することも十分に考えられますし、そうなれば当然、株価は下がります。

つまり株式投資は、短期間で株価が数倍にも跳ね上がることがある一方で、最悪の場合、株式の価値がまったくゼロになってしまうケースも考えられます。

株式投資には、銀行預金のような確実性はありません。だから、リスクとリターンを天秤にかけて、成功の確度を少しでも高めるための物差しが必要です。それが「期待値」です。高校数学で学習することなので、君が高校生なら、大人の個人投資家よりも有利な位置にいます。ここで復習して、一気に差をつけましょう。

もし、その会社が倒産でもしてしまったら、投資したお金は恐らく戻ってこないでしょう。つまり、投資したお金がゼロになってしまう恐れもあるのです。会社が倒産するという悲惨な状況に直面しないまでも、思った以上に売り上げや利益が伸びなかったというケースはあります。

その会社の業績が良くなるかどうかは、正直、誰にもわかりません。さまざまな材料を集めて総合的に判断し、「この会社の業績は確実に伸びる」と結論づけたとしても、どこかに不確定要因が潜んでおり、それが顕在化して業績が急落することも十分に考えられますし、そうなれば当然、株価は下がります。

つまり株式投資は、短期間で株価が数倍にも跳ね上がることがある一方で、最悪の場合、株式の価値がまったくゼロになってしまうケースも考えられます。

株式投資には、銀行預金のような確実性はありません。だから、リスクとリターンを天秤にかけて、成功の確度を少しでも高めるための物差しが必要です。それが「期待値」です。高校数学で学習することなので、君が高校生なら、大人の個人投資家よりも有利な位置にいます。ここで復習して、一気に差をつけましょう。

●期待値を求める式
値1×値1の確率+値2×値2の確率+……

期待値とは、ある投資を行うことによって生じる損益(リスクとリターン)の平均値を表しています。計算式で求めた期待値が、投資すべきか、やめるべきかの判断基準になります。投資額が期待値よりも低ければ投資する、高ければ投資しないという判断ができるわけです。

この宝くじを買うべきか?

実際に問題を解きながら、期待値の考え方をマスターしましょう。

●問題1
総数10本で、当たりが5枚あるくじを1枚300円で売っています。当たりは500円、はずれは0円です。このくじを買うべきでしょうか?

確率で考えると、50%の確率で300円が500円になるので、買ってもいいかなと思えます。

でも、期待値を計算すると、500円(当たりの値)×0.5(当たりの確率)+0円(はずれの値)×0.5(はずれの確率)=250円となります。つまり、このくじ1枚の期待値は250円です。

期待値を基準に投資判断する場合、1枚300円は期待値の250円よりも高いので、買わないという選択をします。

次の問題はどうでしょうか?

●問題2
総数10本で、当たりが2枚あるくじを1枚300円で売っています。当たりは2000円、はずれは0円です。このくじを買うべきでしょうか?

当たりの金額2000円は魅力的ですが、その確率は20%です。買わないと判断する人が多いかもしれません。

期待値を計算してみましょう。2000円(当たりの値)×0.2(当たりの確率)+0円(はずれの値)×0.8(はずれの確率)=400円。つまり、1枚の期待値は400円です。

1枚300円の価格よりも期待値400円のほうが高いので、このくじは買いです。しかも、10枚すべてを3000円で買えば、4000円入るので、確実に1000円儲かります。

現実には、売上額より当選額が多くなるような胴元が損をするくじは存在しませんので、あくまでも期待値の感覚をつかむトレーニングとして考えてください。

公営ギャンブルの期待値

ギャンブルでは「還元率」という言葉が用いられるのですが、実質的には期待値と同じです。還元率とは、賭け金に対して賭けた人に戻される金額の割合のことです。還元率が80%だとしたら、賭け金の8割が戻ってくるという理屈になります。そして、残りの2割は胴元に入ります。

気が付いたでしょうか。期待値の問題で見たように、賭けた人が手にできる総額が、胴元の売上総額よりも低い時は、賭けた人が損をします。

日本で認められているギャンブルの還元率は公営競技(競馬、競輪、オートレース、競艇)が約75%、宝くじが約45%、サッカーくじが約50%、パチンコが約85%です。つまりギャンブルは、続ければ続けるほど負けるのです。しかも、宝くじは45%、サッカーくじは50%です。競馬や競輪、パチンコよりも低いのです。

もちろん一発逆転はあります。宝くじだって、買い始めて2、3回目で1等に当選するかもしれません。でも、何十年も買い続けているのに、一度も高額当選しない人がいるのも事実です。いや、むしろ大多数の人はそのはずです。

このように、冷静に期待値で判断すれば、ギャンブルがいかに割の合わないことをやっているのかがわかるというものです。

期待値の考え方がわかったところで、株式投資の投資判断で使うための練習をしてみましょう。

問題3
現在、A社の株価は100円です。この株価が1年後に300円になる可能性が10%、50円になる可能性が90%とします。A社の株式を買うべきでしょうか?

期待値を計算してみましょう。300円(高値)×0.1(高値の確率)+50円(安値)×0.9(安値の確率)=75円です。現在の株価100円よりも安いので、この投資をしても負ける確率が高いことを意味します。株価が75円を大きく下回らない限り、見送ったほうがいいでしょう。

では、次はどうでしょうか。

問題4
現在、B社の株価は100円です。この株価が1年後に1000円になる可能性が10%、30円になる可能性が90%とします。B社の株式を買うべきでしょうか?

期待値を計算する前に、直感で、このような案件に投資しますか。つまり、投資したお金が10倍になる可能性が10%ある反面、投資したお金が3分の1弱にまで目減りする可能性が90%もある投資案件に手を出すかどうかを考えてみてください。

多くの人は手を出さないでしょう。確かに10倍になる魅力はあります。でも、その可能性は1割しかないのですから。しかも、3分の1弱に目減りする可能性が9割もあるので、恐らくそうなるだろうと思うのが普通ではないでしょうか。そして、そんな可能性の低いものに賭けること自体が、まさにギャンブルだと思うに違いありません。

でも、感覚的な判断を下す前に、期待値という数字を求めることを習慣にしましょう。

この期待値は、1000円(高値)×0.1(高値の確率)+30円(安値)×0.9(安値の確率)=127円です。つまり、現在の株価よりも高いのです。

期待値が1を超える株式に投資しよう

確かに、投資した元本が3分の1弱に目減りするリスクはありますが、そのリスクよりも元本が10倍になる可能性に賭ける価値が十分にあります。

株式投資の場合、期待値が1(投資額)を超える銘柄を選んで投資していけば、長い目で見てお金を増やすことができるのです。

もちろん、期待値を計算するための確率自体があくまでも推測した数字です。当然、人によって違ってきます。1万円の株価が1万5000円まで値上がりする確率を30%と考える人もいれば、50%と考える人もいるのです。

過去の株価の推移を判断基準にする人がいる一方で、業績や財務内容を総合的にチェックしたうえで、だいたいこのくらいではないかという数字を出す人もいるでしょう。

アプローチが異なれば、期待値も違うものになります。つまり株式投資の期待値には正解がないのです。ウォーレン・バフェットのような天才投資家でも失敗するように、確実ということはありません。

それなら期待値は使えないかと言えば、そんなことはありません。成功も失敗も含めて経験値を積めば、より精度が高まります。なぜそのように考えたのかを数字で説明する習慣を身につけることで、賢い投資家の道を進むことができます。そして、着実にお金が増えていくでしょう。