「経費で落ちる領収書」「落ちない領収書」の違い

経費で落ちる領収書と落ちない領収書の違い

最初に、皆さんがいちばん頭を悩ませがちな問題から話をはじめましょう。領収書に「経費で落ちる領収書」と「経費で落ちない領収書」があることは、よくご存じかと思います。経費で落ちる領収書と落ちない領収書の違いは、ざっくり言えば、事業に関係するかどうかです。

結論から言うと、一定の条件をクリアすれば、大半の領収書が経費で落とすことができます。たとえば、旅行費用。単なるプライベートの旅行であれば、事業の経費で落とすことはできません。しかし、旅行を事業に関連付けることができれば、事業の経費として計上することができるのです。個人事業の場合、これを「必要経費」といいます。

またテレビやDVDなどのAV機器も、まったくのプライベートでの使用であれば、必要経費で落とすことはできません。しかし、事業に関連する情報を収集しているという事実があれば、必要経費に計上することができるのです。

基本となる認識として、事業と関係のある支出は、すべて経費計上できることは、おわかりいただけたかと思います。

会社の場合、「事業と関係のない経費」について、経費に計上することができないように見なされがちですが、事業と直接関係のない支出であっても、一定の条件を満たしていれば、経費とすることができるのです。「福利厚生費」として支出できる要件を満たしていれば、会社の事業に直接関係しなくても、社員の衣食住やレジャー費などを経費として計上することができます。福利厚生費というのは、会社の従業員の福利厚生などにかける費用です。

この福利厚生費は、実は税法上けっこう広範囲に認められています。健康診断や慰安旅行のみならず、コンサートのチケット、スポーツジムの会費などのレジャー費やアパート、マンションなどの住居費などもOKなのです。はては夜食代や昼食の補助まで適用されるのです。社員(経営者を含む)の衣食住の大半は、福利厚生で賄えるといっても過言ではありません。しかもレジャー費まで、経費で落とせるのです。つまり、福利厚生費をうまく使えば、節税に結びつくと言えるでしょう。

個人事業では福利厚生費は認められない?

会社の場合、福利厚生費をうまく使えば節税につながります。では、個人事業で福利厚生費は認められているのでしょうか。個人事業でも福利厚生費は認められます。従業員を雇っていて、その従業員に福利厚生を施した場合は、会社のときと同じように福利厚生費を計上することができます。

もし、個人事業を営んでいる方が、従業員を雇っていない場合、自分自身に対する福利厚生は経費として認められるでしょうか。これは残念ながらグレーです。現在、国税庁では、「個人事業者は自分に関する福利厚生費を使えない」という指導を行っているようです。

一方で国税庁は、個人タクシーの福利厚生関係の会費を、必要経費に含めていいという通知をしています。「1人(もしくは家族だけ)でやっている個人事業者の福利厚生費は必要経費と認められない」という国税庁の方針は、法律にもないし、判例にもなく、社会通念上もおかしいのです。

しかし、現在のところ国税庁の方針を覆すためには裁判を起こしたりしなくてはならないので、あまり現実的ではありません。自分個人や家族への福利厚生は、経費に計上しないほうが無難だと言えます。

日常生活のなかで、買い物をした際、レシートは保管しているものの、領収書をもらい忘れてしまうことが、しばしばあるかと思います。この場合、領収書をもらっていなくても、レシートをもらっていれば、それで大丈夫なのでご安心ください。

税法では、事業の経費を計上するうえで、「領収書が必ずなくてはならない」ということになっていません。領収書は、事業の経費を証明する証票類の1つにすぎないのです。

領収書というのは、「いつ」「どこで」「だれに」「何の目的で」「いくら払った」ということを証明するためのものです。レシートには、この事項はすべて記載されていますので、レシートだけをもらっていればいいのです。

仮に、もらった領収書に相手の印鑑が押していない場合でも、領収書として認められます。「領収書には相手の印鑑がなくてはならない」と思っている人もいるようですが、それも誤解です。相手の印鑑があろうがなかろうが、自分が支払ったものであれば経費として認められるのです。

領収書の宛名が個人名になっていたら?

領収書の宛名が個人名になっていたとしても、会社の経費で落とすことはできます。領収書の宛名が何であれ、その会社の経費であるということであれば、経費で落とすことができるのです。

領収書をもらい忘れたうえ、レシートもどこかになくしてしまった場合、経費計上はできないのかというと、そんなことはありません。領収書やレシートがなくても、会社の事業のための支出をしたという事実があれば、経費計上できます。「事業の経費は領収書がないと認められない」と思っている経営者も多いようですが、これは勘違いです。

領収書がなくても事業に関する支出の事実があり、その事実を何かに記録していれば、それで経費として認められます。

具体的に言えば「使った日時」「使った場所」「使った目的」「金額」さえわかっていれば、いいのです。金額も正確なところがわからなければ、少なめにしておけばOKです。要は、実際に使ったかどうかが問われるのであって、それさえクリアしていれば、経費として認められるのです。

では、領収書はまったく残さなくてもいいのかというと、そういうわけではありません。領収書は必ず残さなくてはならないものではありませんが、できるだけ残さなくてはならないものではあるのです。

税法では「決算にかかわる証票類を残しておかなければならない」、ということになっています。だから、あえてまったく領収書をとっていないようなことはさすがに許されません。その場合、「正確な申告をする気がない」として税務署にペナルティーを課されるおそれもあります。

事業に関するものをインターネットで購入し、取引をすべてメールで済ませるため、紙の領収書やレシートなどがない場面がよくあると思います。

この場合でも、メールの記録は、領収書の代わりになります。電子メールに、領収書と同じ事項(日時、金額、商品名、宛名、領収したものの氏名など)が書き込まれていれば、立派に領収書の代わりになるのです。

メールというのは、お互いのパソコンに記録が残りサーバーにも記録が残るものなので、証拠としての能力も高いのです。払ったかどうかの証拠としても、十分に使えます。メールを印刷すれば、それが経費の証拠書類となりますし、税務署に見せるときにも、 メールを打ち出したものを見せればいいのです。

メールの領収書には印紙税はかからない

メールを領収書の代わりに使う場合、印紙税は払わなくていいのでしょうか。

印紙税は払わなくて大丈夫です。印紙税は書類に対してかかる税金なので、メールにはかからないのです。だからメールの領収書は印紙税の節約にもなります。

もしメールを紙に打ち出しても印紙税はかかりません。打ち出した紙には相手先の印鑑が押していないので、印紙税法のうえでの領収書とはされないのです。印紙税をなるべく払わなくていいように、今後はメールで領収書を発行するべきかもしれません。

事業の光熱費などの支払いをクレジットカードで行うことも、昨今では多々あることと思います。その際は、領収書などはもらっていないとして、改めて領収書をもらう必要はありません。昨今は、すっかりカード社会になってしまいました。多くの社会人は、2、3枚はクレジットカードを持っているものです。手元に現金が少ないとき、カードで支払いをする人は多いでしょう。

もし領収書をもらっていなかった場合、後から送られてくるクレジットカードの明細書を領収書として使えばいいのです。クレジットカードというのは、使用したときには細かい明細書が送られてきますので、領収書の要件はすべて満たしています。それをとっておけば領収書としての要件は十分満たしているのです。

またクレジットカードで事業に必要なものを買ったとき、クレジットカードの手数料や利子も払っている場合があります。この手数料や利子も当然、事業の経費で落とすことができます。