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「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路

2021年の婚姻数は40万組前後

まず、婚姻数が現状どう推移しているかを確認します。2020年の婚姻数は52万5490組で、前年59万9007組から12.3%も減少しました。

減少の理由を厚生労働省の担当者は、「改元に伴う令和婚の反動や、新型コロナウイルス感染拡大の影響でカップルが結婚を先延ばしした可能性が考えられる」と説明しています。2019年の婚姻数は、令和婚で7年ぶりに前年比で増加していました。

2021年初めには、コロナが終息するという想定で58万組まで回復するという見通しがありました(リクルートブライダル総研、4月公表)。しかし、コロナが想定外に長引き、1~8月の婚姻数は23万5106組にとどまっています(厚生労働省「人口動態統計月報」)。月平均2万9388組と3万組を下回っています。

秋以降の直近の状況について、婚礼関連サービスを提供するスフィア(名古屋市)の岩本直美社長は、次のように指摘しています。

「コロナが長引いて、『さすがにもう待っていられない』ということで、10月以降、延期していた結婚式に踏み切るケースや籍だけ入れるケースが増えています。ただ、地域によって回復に大きな差があります。東海4県で言うと、名古屋など愛知県の都市部ではかなり回復していますが、岐阜・三重・静岡の郡部ではまだまだ結婚式がはばかられるようで、戻りが鈍い印象です」

つまり、1~8月の実績と直近の状況を見ると、2021年は40万組に届くかどうかというショッキングな数字になりそうです。

問題は、この先どうなるかです。壊滅的な事態にもかかわらず婚姻数の減少があまり話題にならないのは、厚生労働省が2020年の減少を特殊事情によると説明している通り、「コロナによる一時的な現象で、コロナが終息すれば戻るでしょ」という認識だと思われます。

しかし、この認識は間違っており、婚姻数の減少はむしろこれからが本番です。まず、婚姻数は長期的に減少傾向にあります。2000年に79.8万組、2010年70.0万組、2020年52.5万組と減り続け、1970年の102.9万組から半世紀でほぼ半減しています。独身志向が高まっていることやそもそも少子化で結婚適齢期の人口が減っていることなどが原因です。

出会いの機会もコロナで激減

そして、この2年間のコロナに対応した生活様式の変化が、減少トレンドに追い打ちをかけています。結婚するには、まず男女の出会いが必要ですが、コロナ対策のイベント中止やテレワークの普及で、出会いの機会が激減しています。

結婚に至るには、出会うだけでなく、カップルになる必要がありますが、マスクで顔が見えない相手のことを好きになるでしょうか。飲食や旅行を制限されて愛が深まるでしょうか。将来の収入を見通せない状況で「結婚しよう!」という気になるでしょうか。

男女が出会ってから結婚するまでの平均交際期間は、4.34年(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」)です。コロナが終息した直後の年は50万組台を回復するかもしれませんが、2019年までに出会っていたカップルの結婚がピークアウトし、コロナ時代になって出会ったカップルの結婚が主流になると、2025年以降、婚姻数は再び激減します。

長期的には、コロナ終息後にどこまで元の生活様式に戻るかが焦点です。多くの企業でテレワークが定着していることから、完全に元通りになることはないでしょう。これらを総合すると、2030年頃には40万組を下回ることになりそうです。

日本では、生まれてくる子どもに占める非嫡出子の割合は2.3%に過ぎません。したがって、婚姻数の減少は出生数の減少、人口の減少に直結します。

仮に年40万組が結婚し、1.3人の子どもを産むとすると、出生数は平均で年52万人です。コロナ前の2019年の出生数が21世紀以降で最少の86万5239人にとどまり、「86万ショック」と騒がれましたが、これをはるかに下回る超少子化です。そして、子どもを産むカップルが減っていくので、状況はさらに悪化し続けます。

人口減で「韓国消滅」のリスクも

という話をすると、「結婚するかどうか、子どもを産むかどうかは、個人の自由」という反発があります。また、少子化による人口減少については、経済の専門家からも「生産性を高めれば問題ない」といった意見が聞かれます。

こうした意見は一理あるものの、少子化の影響を甘く見過ぎているのではないでしょうか。

少子化で生産年齢人口が減るのに高齢者の数は2042年まで増え続けるので、社会保障(医療・年金)の負担が現役世代に重くのしかかります。人口が減っても国の借金は減らないので、将来の増税懸念が消費を抑制し、経済成長率を下押しし続けます。

そもそも、今後も人口が減り続けて、日本という国を維持できるのか、という究極の大問題があります。人口減少と国家の存亡というと、いま話題になっているのは中国と韓国。とくに韓国は、合計特殊出生率が0.84(2020年)まで急低下し、「人口減少で22世紀に地球上から最初に消滅するのは韓国」(国連人口部、オックスフォード人口問題研究所など)というのが定説になっています。

しかし、日本でも合計特殊出生率が2005年の1.26を底に持ち直していたのが、直近の5年間は連続で低下しており、再び明確な低下トレンドになっています。このまま婚姻数の減少=少子化を放置すると、世界で最初かどうかはともかく、22世紀のどこかで日本は消滅します。

婚姻数の減少を「コロナの一過性の現象」の一言で片付けたり、少子化を「韓国よりはマシ」と溜飲を下げるのは、日本の将来にとってあまりにも危険なのです。