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マーケティングがもはや「運ゲー」ではない理由

「労働人口の49%」はAIで代替可能になる

有名なハーバードレビュー誌で「最もセクシー(魅力的)な職業」として紹介されたデータサイエンティスト。AIの普及により、このデータサイエンティストという職種は今後、どうなっていくのでしょうか。

AI(人工知能)で将来の仕事・職種が大きく変わると言われています。“定型的な”仕事については、データさえあればAIで置き換えることが可能だと考えられるからです。

仕事がなくならないまでも、大幅に簡略化されたり、効率化されることで、その職種に必要な人の数は減少するでしょう。

野村総合研究所では、日本の労働人口の49%がAIやロボットで代替可能という試算を行っています。日米英の3カ国で比較をしており、特に日本では、AIで代替できる仕事についている人の割合が多いという試算を行っています。

 

野村総合研究所発表のレポートの中では、AIで代替される具体的な職種として、一般事務員、オペレーター、警備員、建設作業員、スーパー店員、電車運転士、電気通信技術者などをあげています。

また、他の論文では、弁護士などの専門知識を有する仕事でも、AIで仕事のやり方が大きく変わると指摘しているものもあります。弁護士の文書作成などの業務はAIに変わるでしょう。さらに、過去の判例に基づいて訴訟の内容を考えるような業務についても、AIの助けをかりて相当な効率化をすることが考えらます。

専門的な知識を持つ限られた人しかできなかった仕事が、必ずしも専門知識を持たない人でもできるようになると言われており、弁護士という専門職でも業務内容が大きく削減、変化していくものと考えられます。

AIによって削減される仕事の多くは、背景には「データ」があります。過去のデータを整理・分析することで、人に変わってノウハウを蓄積し、効率的な検索の仕組みを作ることで、人が行っている仕事を代替することができるのです。データがあるからこそ、仕事が削減・変化するのです。

膨大な判例のデータベースの中から、適切な事例を抽出し、訴訟戦略を立案する弁護士の業務を想像すれば、データの重要性が理解できると思います。AIで変化する仕事の背景には、データを整理・分析できるデータサイエンティストが必須なのです。

AI時代の到来は、データサイエンティストの仕事を増やし続けるといえます。では、今後、データサイエンティストの活躍が期待される仕事について見ていきましょう。

マーケティングの歴史は「データ取得」の歴史

今後、データサイエンティストの活躍が期待される仕事は「マーケティング」です。マーケティングの歴史はデータ取得の歴史です。

かつてのマスマーケティングの時代は、消費者のデータが取れなかったため、より多くの人に、情報を届け、購入してもらうことを重視した時代でした。結果として、より多くの人の満足度を高めることが戦略上のポイントでした。CS(Customer Satisfaction)の時代です。

2000年頃になると、CRM(Customer Relationship Management)の時代がやってきます。IT技術の進展により、個々の消費者のデータがとれるようになりました。POSデータなどから、顧客属性(性別、年代)などの情報や、購買履歴の情報がとれるようになりました。それらの情報をもとに、50代・男性であればこのような商品が好きなはずだとか、牛乳を買った人はパンを買う可能性が高いなどの傾向が把握できるようになりました。企業は、消費者に対して、興味がありそうな情報(興味をもつ確率が高い情報)を提供することが戦略上のポイントでした。

近年は、マーケティング戦略ではCX(Customer Experience)戦略が注目をあびています。CRMの時代と比べて、さらに深い消費者のデータが取得できるようになったことをうけて、消費者とのコミュニケーションのあり方を設計していこうという考え方です。

具体的には、CRMの時代では、消費者の購買履歴しかわからなかったものが、その背景までわかるようになりました。例えば、Webサイトの閲覧履歴などのデータも取得できるようになったため、その人の志向を分析できるのです。同じカテゴリーの商品を買う際にも、高級ブランド志向なのか、価格重視なのかなどを推測できます。顧客の感情も考慮して、顧客接点をマネジメントすることがCX戦略のポイントです。

もはや「運ゲー」ではない

CRMの時は、消費者に対して、確率論的に最適化された情報を提供することがポイントでした。CXの時代では、さらに、顧客の特徴を分析し、顧客をプロファイリングしながら、好みの情報を提供することがポイントです。言い換えると、プロファイリングするために必要なデータを取得できるようになったことがCX戦略ブームを起こしたといえます。

取得できるデータの質・量が変化するたびに、マーケティング戦略のトレンドは変化してきました。今ではデータサイエンスがマーケティング戦略を牽引しているのです。