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「人生100年時代、年齢は操れる」提唱者が語る真意

「選択し決断する」という行動や思考が年齢を決める

ライフシフト「1」では、100歳まで生きることがどのような意味を持つのかを描いた。しかし、人々がどのように対応すべきかについて、もっと多くのことを語らなければならないと考えた。

長い人生に備えるために個人がどのような行動を起こすべきか、また個人が長く生産的で健康な生活を送るために各組織がどうすべきかを論じたいと考えた。

著者として今回の「2」で最も伝えたかったことは、人生100年時代を生きるための新しい行動戦略だ。

1つ目は、「1」で示した「マルチステージ」だ。多くのステージを予期し、さらに新しいステージを出現させるというものだ。この考え方は人生の柔軟性について考えるうえで重要だ。

2つ目は、「年齢を自由に操れる」だ。生まれてからという生物的な年齢ではなく、選択し決断するという行動や思考こそが、年齢を決める要因となる。

3つ目は、人々や社会が直面する制度的な課題への対処法だ。その中には、マインドセットや固定観念も含まれる。

例えば、60歳以上の人は働けない、社会で重要な役割を果たせない、新しい技術を習得できない、起業できないといった思い込みだ。

また、高齢者が生産性を維持できるよう再教育の機会を確保すること、長く幸せな人生を送るために人とのつながりを保てるよう支援することも社会の重要な課題だ。

高等教育を受けた多くの日本人にとってこれまでのよい人生とは、よい大学に進み一流企業に入ることだった。だが、このような決まったレールは人生100年時代には当てはまらない。

今回の新型コロナウイルスも、人生や働き方を見直すきっかけとなっている。パンデミック以前、社員は長時間通勤し、職場で何時間も働いてから家に帰るというのが当たり前だった。そのため、新しいことに挑戦したり、健康を維持したり、家族や友人と強い絆を築いたりという時間がほとんどなかった。

しかし、今回のパンデミックで多くの人が自宅で仕事をするようになると、たとえ自宅で仕事をしても社員が生産的になれると一部の経営者は理解した。そのような経営者の間では、より柔軟な働き方を試みる動きも出ている。

こうした企業変革は非常によいニュース。人々がマルチステージの人生を構築し70代まで働くために不可欠な、働き方の柔軟性を生み出すからだ。

自分がどうなりたいかを想像して思考する

また個人がより積極的に動くためには、「ありうる自己像」という考え方を挙げたい。「ありうる自己像」とは、自分がどうなりたいかを想像し、何が可能かについてより創造的かつ実験的になれるよう、新たな人生に思考を巡らすきっかけとなるものだ。

例えば、自分がなりたい姿に近い人たちと一緒に過ごしてみてはどうだろうか。彼らは新しい働き方や生き方のロールモデルとなる人たちだ。

自らの中に、起業家として「ありうる自己像」が存在するかもしれない。その場合、起業家とのネットワークをつくり、彼らがどのように時間を過ごし、どのような動機で行動しているのかを理解することに意味がある。そうすることが、変化に向けたヒントを多くもたらしてくれる。

長生きのための計画を立てることも勧めたい。50代に入ったらすぐに、いや、もっと早くから、どうすれば年を取っても生産的なキャリアを送れるかを考えるべきだ。

そうすれば、ネットワークを広げ、新しいことに挑戦し、80、90代にどのような人生を送りたいかを考え始めるきっかけになる。