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投資家が参考にすべき「12%の法則」とは何か

2021年の日経平均株価の終値は2万8791円71銭だったが、2020年の終値2万7444円17銭に対して、1347円54銭(4.9%)高でしかなかった。

片やNYダウはどうか。2020年12月31日の終値3万0606ドル48セントに対して、2021年同日では3万6338ドル30セント。年間では5731ドル82セント(18.73%)高となっている。

さらに、リーマンショック(2008年9月)後の「ダメ押し底」6547ドル(2009年3月)から2021年12月29日の史上最高値3万6432.22ドルまで約5.6倍となっており、足かけ13年にわたる大相場の最中だ。

しかも、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの混乱によるものとはいえ、高いレベルに突き上げられた消費者物価により、金融政策は緩和縮小から利上げへと進む。1月5日に発表されたFOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨(2021年12月14・15日開催分)により、早い段階でのFRB(連邦準備制度理事会)保有資産の圧縮懸念まで出ている。

投資家の「大天井懸念」は正しいのか

当然、多くの投資家の心の中には、上昇14年目にして相場が終わる「大天井(おおてんじょう)懸念」が生まれている。したがって、少しの事象に対して過度な反応をすることになり、2022年は2021年よりも上げ下げの激しい年になることが考えられる。

このとき、それが短期的な下げか、相場が後退期に入る大きな流れの入口かの判断で、今年の投資成果は天と地に分かれる。筆者は、今回のインフレ率による波乱に対しては、次のように考える。

まず重要なことは「インフレそのものは企業にとって敵ではない」と考えるべきだ。「敵は価格転嫁できなくなる」ことである。価格転嫁ができれば、高インフレは企業に莫大な利益をもたらす。単にインフレ率だけで下げたところは、押し目買いのチャンスと考える。

 

金融当局の政策金利引き上げについても、同じことがいえる。景気の上昇とともに金利が上がるのは当然で、これはまったく問題ないと考えるべきだ。

重要なことは、企業の利益率や景気を圧迫する水準まで上昇するかどうかだ。その水準まで上昇したとき、大天井の要因になると考える。それが何%なのかは企業の利益率との見合いになるので、現時点では特定できない。だが、10年債利回りの上昇だけで過度な下げがあれば、買いチャンスとなる。

まとめると、「企業が価格転嫁できないほどのインフレ率」と「企業利益を圧迫する金利水準」が大天井の条件ということになる。

需給と人気はどうなっているのか

さて、ここまでは企業業績に関しての「ファンダメンタルズ(基礎的条件)的アプローチ」といえるものだが、相場にはその対をなす「需給・人気的アプローチ」も必要だ。

株価の3要素は「業績」「需給」「人気」といわれる。そこで現在の需給と人気を考察してみよう。

マネタリーベース(日本銀行が直接的に供給するお金)は、2021年11月末残高が過去最高の約660兆円となったあと、12月は670兆円と記録を更新している。

一方、マネーストックM3(企業、個人などの通貨保有主体の持つ通貨量)の月中平均残高も同11月現在で約1527兆4000億円と、過去最高を記録している(12月分は1月13日に発表)。

モノの値段を決めるのは「お金の量とモノの量のバランス」であることは経済の原則である。これを日本の株式に当てはめると、モノ(株)の量は、岸田政権が今後規制をかける(実際にはありえないはずだ)とまでいわれる高水準の自己株買いおよび消却分は、IPO(新規株式公開)の時価総額を上回っている。

つまり、お金が増えて、モノは減っている。こうした状況で株が天井を打つことはないと考える。大天井はこのバランスが崩れるときだ。

一方、インフレ退治の金融政策は①緩和縮小②利上げの順で行われる。①②が効かないときは③量的引き締め(FRBの資産圧縮)の順で進むのが王道だが、今回のアメリカでは②と③が同時に進む可能性が、前出のように5日に発表された昨年12月分のFOMC議事要旨によって明らかになった。これが今回の大幅安の理由だ。

「12%の法則」は参考に値する

では、最後の「人気」はどうか。実は最も投資家にとって判断が難しい。これは株価に聞くしかない。

各種移動平均線からの乖離率や騰落レシオなど、人気を測る短期的バロメーターはたくさんあるが、これについては投資家自身が各自の感覚に一番合った指標を採用することをお勧めする。筆者は長期的に見た「12%の法則」(相場は12%下がると20%下がる可能性が高く、20%下がるとその相場は終わるといわれる)を参考にしている。

とにかく、波乱のときには自分で決めたルールを忘れないことだ。せっかく押し目買いと決めていたのに下げたら怖くなって売ってしまったとか、高くなったら売ろうと思っていたのに逆に高いところで買い乗せてしまったとか、投資には「あるある」がたくさん存在する。冷静に相場を判断すれば、今年の波乱はチャンスになると思っている。

さて、最後に今週の注目点をまとめよう。まず、11日は東京証券取引所が上場企業の申請済みの新市場区分の一覧表を公表する。企業決算では、ハイテク企業の先行きを占う意味で重要な、安川電機の発表(2021年3~11月期)がある。

続く12日には、昨年12月分の景気ウォッチャー調査、1月日銀地域経済報告さくらリポート、中国12月CPI(消費者物価)・PPI(生産者物価指数)、アメリカの12月消費者物価CPI、13日には同12月のPPIなどがある。

また14日には、アメリカの12月小売売上高、12月鉱工業生産指数、1月ミシガン大学消費者態度指数などの発表がある。これらの中には波乱の材料が隠れているかもしれない。だが、今年も本欄でしっかり本質を伝えたいと思っている。