「自己肯定感高い人と低い人」幼少期の決定的な差

自己肯定感は親の接し方で決まる

私たちが物事をどう感じるのか、心の中にあるどの感情を意識するのか――これらのことは、生まれつきの性質と子ども時代の経験に大きく左右されます。

心理学における「信念」とは、心の奥深くに根ざしている確信で、自分自身と人間関係に対する考え方を意味します。たとえば「私は大丈夫!」や、逆に「私はダメだ!」といったようなものです。多くの信念が0歳のうちに早くも養育者との相互作用によって生まれます。

私たちは通常、子ども時代とその後の人生を過ごす中でポジティブな信念とネガティブな信念の両方を持つようになります。養育者から受け入れられ、愛されていると感じる状況では、「私は大丈夫!」というようなポジティブな信念が生まれ、その信念は私たちを強くしてくれます。

これに対して、生まれてきたのは間違いだったと感じるような、養育者から拒絶されている状況では、「私はダメだ!」というようなネガティブな信念が生まれ、その信念が私たちを弱らせてしまいます。

とはいえ、子ども時代にとてもつらい経験をした人でも、人格の中には必ず健全な部分も持ち合わせています。どんな人にも、周囲に対して過剰に反応しなくていい状況もあったはず。楽しく、ワクワクし、夢中で遊んでいるとき、いわば自分の中のポジティブな信念が前面に出ているときがあったはずです。

逆に、親に十分に愛された人であっても、ネガティブな部分は必ずあります。生まれたばかりの子どもは、親の助けなくしては生きていけません。お腹がすいたとき、少しも待たされずに満たされたという人はほとんどいないでしょう。

こうしたポジティブな信念とネガティブな信念は、誕生後の6年間でかなりでき上がります。この時期に脳の構造がほぼ完成するので、最初の6年間は人間の成長にとって非常に重要なのですが、なかでもとくに影響するのが2歳までの経験です。

すべての子どもは「自分はダメだ」と思う

親が自分にどのように接したかは、その後の人生におけるあらゆる人間関係の青写真になります。つまり、親との関わりから自分自身や人間関係に対する考え方――自己肯定感と他者に対する信頼感、あるいは不信感が生まれるのです。

ただし、この時期について白黒をつけることはしないようにしましょう。親子関係はよし悪しだけで評価できるようなものではありません。前述したように、いい子ども時代を過ごしたと思っている人も、子ども時代にまったく傷を負わなかったわけではないのです。

生まれてきたばかりの赤ちゃんは小さくて裸で、まったく無防備な状態です。そのため、赤ちゃんにとって、自分を受け入れてくれる人がいるかいないかは、命に関わる重大なことです。そのため私たちは、生まれた直後はもちろん、その後も長期間、自分が劣っていて依存している存在だと思いながら生活を送っていきます。それゆえ誰の心の中にも、「自分はダメだ」という信念があるのです。

また、子どもに愛情をたっぷり注ぐ親でも、子どもの願望を必要に応じて拒まなければなりません。とくに、歩けるようになる1歳のころには、子どもは親からいろいろな行動を禁じられたり、制限されたりします。

たとえば、おもちゃを壊さないようにしなさい、花瓶に触れてはダメ、食べ物で遊ばないように、などです。子どもは、そのたびに自分が何か間違ったことをしてしまったと感じ、なんとなく「自分はダメだ」と思うようになるのです。

「誕生後2年間」で感じたことが重要

子どもにとってつらいのは、親が子どもの教育やケアを重荷に感じ、子どもを怒鳴りつけたり、ひっぱたいたり、ほったらかしにしたりする場合です。幼い子どもは、親の行動の良し悪しを判断できません。幼い子どもにとって、親は間違ったことをしない偉大な存在なのです。

たとえば、父親が子どもを怒鳴りつけたり、ひっぱたいたりしたときに、子どもは「パパは自分の攻撃性を調整できないんだ。パパには心理療法が必要だな」とは思いません。「ひっぱたかれたのは、自分がダメな子だからだ」と思います。その子どもが言葉を覚える前だったらなおさら、自分が本当に悪かったのだろうかと考えることは一切できず、単に自分はしかられていて、自分が悪い、間違っているとしか感じません。

私たちは、誕生後の2年間で感じたことによって、自分が基本的に愛されているのか、そうではないのかを学び取ります。この時期の子どもへのケアは、まずは食べ物を食べさせ、身体を洗い、おむつを替えるといった身体のケアで始まりますが、この身体ケアでとても大切なのは、「なでること」です。子どもは、親のなで方やまなざし、声のトーンから、自分がこの世界で歓迎されているかどうかを感じ取っていくのです。

この誕生後の2年間は親の行動に頼るしかない時期であるため、この時期に基本的信頼感もしくは基本的不信感が生まれます。基本的信頼感が育まれた人は、意識の深いところで、親に対する信頼感だけでなく、自分自身に対する信頼感も持っています。これは、親以外の他者を信頼するための前提条件になります。

一方、基本的信頼感が育まれなかった人は、意識の深いところで自分自身を不安定に感じ、周りの人に対しても不信感を抱きやすくなります。もちろんその後の成長期も人格形成に非常に重要であり、そのときには親だけでなく、祖母や同級生、先生などからも影響を受けます。が、もっとも大きく影響を与えるのは、誕生後の2年間での事柄です。

これらは無意識の中に保存されているため、自分では思い出すことができません。覚えているのは、たいてい幼稚園時代や小学校に通い出したころの事柄からです。しかし、その頃の記憶でも積極的に思い出していけば、自分と親との関係がどのようなものであったのかがわかってきます。

自分の陰の部分を知ることで感情に対処できる

こうした場合、ネガティブな自分の信念に気づくことが大切です。自分の陰の部分もわかっていれば、自分の考えや感情をうまく対処できるからです。

たとえば、自分が相手に共感できなかったときに、相手の感じがよくなかったからなのか、あるいは自分が相手の成功を妬んでいるからなのか、見極めることができます。そして、自分の妬みを認めた場合には、相手の心を傷つけるのは決してフェアなことではないと考えられるようになります。

また、自分に対して「私もすでに多くのことを成し遂げてきたし、それらの努力は正当に報われてきた」と言い聞かせるなどして、自分の妬みと劣等感にポジティブな影響を及ぼせるようになります。こうして人に穏やかな態度で接したり、自分の妬みをうまく調整したりすることができるようになります。

逆に、自分の妬みや劣等感を認めることができないと、相手を攻撃してしまう可能性があります。ちょっとした嫌みを言って相手を見くびるようなことをしてしまうのです。

このように、自分を知ると、自分自身の問題を解決できるだけでなく、他者とうまくつき合っていけるようになります。「内省して自分を知ること(自己認識)」には、個人的意義だけでなく社会的意義もあるのです。