「ヤバい」が口癖の人に伝えたい"24種類の言い方"

感情には種類がある?

さっそくですが、あなたは「感情にはどのような種類があるか?」と聞かれたら、いくつの言葉を挙げられますか?

「怒り」「悲しみ」「喜び」「期待」なども含め、パッと頭に浮かんだものを挙げていこうとすると5つ程度、少し考えてみても10項目出せれば多いほうではないでしょうか。

それも当然で、僕たちは毎日、目覚めてから眠りにつくまで、次々と生まれては消えていく感情を「この感情は〇〇だ」といちいち言語化して認知しているわけではありません。「感情の種類」など知っていなくても、困ることはそうないと思います。

他者との会話だって、感情のニュアンスを伝えることや質にこだわらなければ、「ウケる」「ヤバい」「エモい」「ぴえん」などの表現で成立させることだって可能です。

しかし、自分の感情を理解しようとするならば、ある程度の種類は知っておいたほうがいいし、思考を深めるための多様な視点も必要です。「悲しみ」の中には「悲嘆」や「哀愁」といったニュアンスの異なるものがありますが、それぞれの言葉と概念を知っているからこそ、区別をつけることができます。

そこで僕が活用しているのが、アメリカの心理学者、ロバート・プルチック博士が提唱した「感情の輪」です。

「感情の輪」は、8つの基本感情(1次感情)と、その基本感情のうちの2つが結びついて生まれる混合感情(2次感情)で構成されています。感情というあいまいな概念を、視覚的かつ体系化した状態で捉えることができるのが大きな特徴です。

「感情の輪」の主軸となる基本感情は、次のとおり。

【8つの基本感情】
 喜び/信頼/恐れ/驚き/悲しみ/嫌悪/怒り/期待

花びらのように見える8つのブロックは、それぞれの基本感情の強さによって段階的に分かれています。中心に向かうほど強い感情となっており、「喜び」という1次感情がより強まると内側の「恍惚」に、弱まると外側の「平穏」といった具合です。

僕はこの「感情の輪」を、プロのマンガ家育成を目的とした講座『コルクラボマンガ専科』や新人マンガ家との打ち合わせなどで使用しており、いつでも確認できるようにスマートフォンの待ち受け画面にも設定しています。ちょっとした空き時間を利用して感情について振り返ったり、理解を深めたりするのにとても役立っています。

作品の中で「怒り」を表現するとき

たとえば作品の中で「怒り」を表現するとき、その怒りはどのくらいの「強さ」を持つのかによって、人物の表情や発する言葉はもちろん、前後の行動までも大きく変わってきます。

怒りと自覚するほど強い感情ではないけれど、内面に何かしらの不満やストレスを感じているのであれば「苛立ち」に近いでしょうし、湧き上がる怒りを抑えきれず、鼓動が高まるほどの激しい情動であれば「激怒」です。

また感情の強さに明確な境界はなくグラデーションなので、「苛立ち」が蓄積することで少しずつ感情が強まり「怒り」に変化するなど、多様な見方をすることができます。

さらに、各ブロックの反対に位置する感情同士は相対的な関係とされていて、感情を理解するのにとても重要な組み合わせです。

基本感情の相関性】
 喜び⇔悲しみ
 信頼⇔嫌悪
 恐れ⇔怒り
 驚き⇔期待

これをコンテンツに置き換えると、「喜び」を伝えるのであれば、「嬉しい」というシーンをいきなり描くよりも、相対感情の「悲しみ」を先に描いたほうが、感情の振り幅があるぶん、「大きな喜び」になります。「驚き」に関しても、事前に「期待」があり、それを裏切られたときのほうがより強い感情として伝わります。

必ずしも対義語になっているわけではありませんが、それぞれの相関性を意識しながら感情を俯瞰することで、より奥深い世界が広がっていくのです。

 

POINT
感情を視覚化することで関係性を理解しよう