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ものづくり・もの売り「以外」の利益をどう取るか

主要プロダクト販売以外の価値獲得

「プロダクト販売」「定額制サブスクリプション」「フリーミアム」をはじめ、代表的な30に分類した「価値獲得」について簡単に説明しました。

これまでのものづくり企業やもの売り企業は、主要プロダクトを収益源として、そこからもたらされる利益から採算を評価し、自社の価値獲得としてきました。価値創造で提案された主要プロダクトとコスト構造によって利益を生む考え方なので、利益の取り方が劇的に変わることはありませんでした。

しかし、デジタル時代に興隆を極めた「定額制サブスクリプション」や「フリーミアム」の価値獲得は、プロダクト販売を常識としてきた会社からすると考えられない利益のつくり方をしています。

「定額制サブスクリプション」は、主要プロダクトという最も重要な課金ポイントで課金をせず、販売後(契約後)の利用という課金ポイントで課金しています。「フリーミアム」はゲームアプリに代表されるように、主要プロダクトから課金せず、課金をユーザーに任せるやり方をとっています。

これら価値獲得のパターンは「すでにできあがった完成品」ですが、変化の激しい今、誰かの作った価値獲得に飽き足らず、経営者が舵を取り、自分たちの力で革新的な価値獲得を生み出し、飛躍的な発展につなげてほしいと思っています。

価値獲得を生み出す利益ロジック

その大きなヒントになるのが、価値獲得の作り方を考えるうえでベースになる「利益ロジック」です。

すべての価値獲得は、

・誰から儲けるのか?(Who)
・どのプロダクトで儲けるのか?(What)
・いつ利益を回収するのか?(How)

を考え、組み合わせて設計されており、これを価値獲得のWho-What-Howと呼んでいます。

最終的に期待水準以上の事業利益を得るために、Who-What-Howそれぞれの質問の答えとして得られる選択肢をどのように組み合わせるのか。これが、新たな価値獲得を生み出す要になります。

儲ける支払者を考える「誰から?」という質問の答えは、「主要顧客から期待水準以上の利益を獲得する」というのが望ましい答えですが、さらに儲ける支払者を見つけて、さらに多くの利益を取りに行くやり方もあります。

あるいは、さらに儲ける支払者から利益を取れるならば、主要顧客を儲けない支払者に設定して、母数となるユーザーを増やすこともできます。結果として、期待水準以上の利益を得られればよいので「損して得取る」方法が実現できるはずです。

どのプロダクトで儲けるかを考える「何で」に関する質問も、「誰から?」と同じ考え方です。「主要製品で期待水準以上の利益を獲得する」という答えが望ましいと言えますが、ここでもさらに儲ける製品を見つけて、それらと組み合わせながらより多くの利益を獲得するやり方があります。

また、さらに儲ける製品が見つかれば、主要製品を儲けない製品にすることもできます。そうして、トータルで期待水準以上の利益を得られないか考えていきます。

いつ利益を回収するのかを表す「どのようにして」の質問については、一度の支払でただちに利益を回収するか、あえて時間をかけて回収するか2通りの答えがあります。

利益の生み方には8つのロジックがある

「誰から」「何で」「どのように」という3つの質問には、解答がそれぞれ2通りあるため、それらを組み合わせると、利益の生み方には8通りのロジックがあることになります。8つのロジックは、理論的にはすべての価値獲得が説明可能となります。

この表の右側には、代表的な30パターンの価値獲得を示しています。それぞれが8つの利益ロジックのうちどれに属しているのかがわかります。

「定額制サブスクリプション」は、「主要顧客から、主要製品で、時間をかけて期待水準以上の事業利益を回収する」利益ロジック(2)です。

「フリーミアム」は、「主要顧客から、さらに儲ける製品を加えて、時間をかけて利益回収する」利益ロジックです(4)。「カミソリの刃モデル」として知られるレーザーブレイドや、コストコホールセールが活用するメンバーシップ(会費で儲けて製品販売で儲けない)も同様の利益ロジック(4)に該当します。

これら利益ロジックをもとにすれば、これまでの価値獲得を説明できるだけでなく、新たな価値獲得を生み出すことが可能です。

そのためには、現在の自社の価値獲得がどのような利益ロジックに基づいているのかを分析したうえで、別の価値獲得を想定し、利益ロジック自体を別のものに変えられないか考えていくことが望ましいといえます。