「報告が遅い」は致命的な欠点である
「確認を頼んでいた納期の件、どうなったんだ?」
「先日のイベントの報告書はどうなった?」
「そういえば、あの取引先との打ち合わせはどうだったんだ?」
報告の遅い部下に対して、上司がこのように尋ねるのは、珍しいことではありません。
しかし、「話し方」「伝え方」をテーマとした名著100冊には、「報告」は聞かれるより前に行うように書かれていました。
その理由は、
「報告が遅いのは、それだけでビジネスパーソン失格」
「上司の期待に応えられていない」
「聞かれるまで黙っていると自主性に欠ける“受け身人間”と誤解される」
「作業が遅れていると思われる」
といった、心構えの面だけではありません。
実は、尋ねられるよりも前に自分から報告することで、
「言うべきことをうまく伝える」
「誤解なく短時間で共有する」
ことが可能になります。
なぜ、報告は自分からすることが大事なのでしょうか。
報告に必要な3つの準備
たとえば、冒頭のように、納期について尋ねられた場合を考えてみましょう。
何の脈絡もなく急に尋ねられると、多くの方はあわてて答えることになります。
すると、しどろもどろになり答えられなかったり、自分の整理がついていなくて、
といった要点のはっきりしない報告になりがちです。
口頭でこのような報告を聞いた方には、予定どおり納品されるのか、どこに問題があるのか、いくつならいつまでに手に入るのか、残りはいつになるのか、などの具体的な情報が入ってきません。
上司から、
「最初の納品ではいくつ入る?」
などと具体的に問われると、またあわてて資料を確認することになります。
結果的に、伝えるべき情報がすべて正しく伝わるまでには、必要以上の時間がかかるのです。
また、上司は、情報が整理されないまま受け取ることになるため、そもそもの報告漏れに気づかなかったり、報告されたはずのことを後々になって「聞いていない」と思ってしまったり……。
報告で、必要な情報を正しく伝えるためには、
2 伝える順番を整理しておく
3 具体的に話す材料を用意しておく
という3つの準備が必要なのです。
報告に必要な、「要点」の絞り方
「要点を絞る」ことには、以下の3つのメリットがあります。
・相手が覚えやすい
・課題や論点を絞り込むことで、時間を有効活用できる
「記憶してもらいたい」ことだけを話し、それ以外のことは話さない。
そのためには、報告の内容を事前に整理しておくことが不可欠です。
前述の納期の報告は、起こったことを順番に並べていて要点が整理されていないため、聞き手自身が整理をしながら聞かなければいけません。
「下手な報告」は得てしてこの傾向があり、聞き手に負担をかけてしまいます。
報告は、「起こったこと(事実)を、ただ言えばいい」ものではありません。
「自分が一番伝えたいこと」「相手が一番知りたいこと」(=結論)こそが、報告で求められている要点です。
報告をする前に、何を中心に伝えるのか(結論)を、事前に準備することが必要です。
伝える順番で伝わり方が決まる
会話のプロの多くが、
「何を言うのかと同じくらい、どの順番で話すかが大事である」
「話す順番を変えると、伝わりやすさが変わる」
と述べていました。
報告の場合は、まず、結論から伝えること。結論から伝えることには、
(2)「話し手が最も伝えたいこと」「聞き手が最も知りたいこと」が正確に伝わる。
(3)途中で話をさえぎられても(途中で時間切れになっても)、要点を伝え残すことがない。
(4)「一番大事な情報」を先に話せばいいので、「最初に何を話せばいいのか」(会話の導入)で悩まない。
(5)聞き手の関心が高まるので、話に引き込むことができる(最後まで聞いてもらえる)。
(6)短い時間で、必要な情報を伝えることができる。
という6つのメリットがあります。
結論→説明の順番に伝え、場合によっては、最後に再び結論を繰り返す。
伝える順番を整理しておくことによって、報告のわかりやすさは見違えます。
具体的に話す
「できるだけ早く」「でき次第」「なるべくたくさん」などは、人によって解釈にバラつきのある言葉です。
こうした言葉を多く用いると、その分だけ説得力が失われ、また混乱の原因にもなりがちです。
ビジネスの報告で、具体的に話す方法は、おもに3つ、紹介されていました。
(2)固有名詞を入れる
(3)体験談を入れる
とくに、今回のようなケースでは、(1)の数字を入れると有効です。
これらの3つのポイントを踏まえて報告を見直した例が、下記の文章です。
納期に関しては、再度の調整が必要です。(結論)
といいますのも、先日、ご指摘いただいたように、やはり試作段階では、タグを取り付ける部分の仕様について詰められていませんでした。至急調整を進めていますが、今月中の全量納品は難しいとのことです。(説明)
発注した100個のうち半数は今月中、残り半数は来月10日納品とさせてもらえないかとのことですが、よろしいでしょうか?(結論と確認)」
最重要ポイントは、「自分のタイミング」で報告
以上の3つの準備は、コツさえわかれば、どれも決して難しいものではありません。
でも、上司に尋ねられてあわてていては、できないことばかりです。
尋ねられる前に報告をする、というのは、言い換えれば、「自分の準備ができたタイミングで報告をする」こと。
しっかり整理をする時間を、自分で確保できている、ということなのです。
事前にしっかり準備をして、自発的で質の高い報告をし、仕事をスムーズに進めたいものです。
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