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3億円築いた元会社員が語る「成長株発見」5つの技

最も重視すべきは売り上げと利益の伸び

決算短信において注目すべきポイントは5つ。それは冒頭1~2ページでチェックできます。ここでは例として、5年間で79倍株に成長した半導体メーカー、レーザーテックが2021年4月30日に発表した2021年6月期第3四半期の決算短信に、注目すべきポイント5カ所を赤字で示しました。

 

■POINT1 売り上げと利益は増えたか

最も重視すべきは「売り上げと利益は増えたか」です。売り上げと利益の「伸び」、利益は営業利益や純利益ではなく、経常利益(IFRSや米国基準では税引前利益)の伸びを確認します。経常利益には、その年だけ発生した特別利益や特別損失が含まれていません。あくまで、その会社の通常の企業活動で得られる利益であるため、評価に最適というのが理由です。

レーザーテックの場合、2020年7月1日から2021年3月31日まで9カ月間の売り上げは「51945百万円」でした。つまり、519億4500万円です。その下には前期の第3四半期までの売り上げが記載されていますが、金額は256億0100万円、今期売り上げは前年同期比102.9%増で伸び率は2倍以上です。

では、利益はどうでしょうか。ポイントとなる経常利益は189億6100万円で前年同期比112.7%増。2倍以上に伸びています。この決算は長年、決算書を見続けてきた私から見ても「印象的」と言ってよい好業績です。こういった誰もが目を見張る数字を叩き出すのが「スター成長株」です。

「では、レーザーテックが買いなのか?」と言うと、必ずしもそうとは限りません。現在の株価はもう数年先の成長まで織り込んだ水準にあり、市場期待は高く、株価はすでに上昇しています。

 

株価10倍株(テンバガー)を狙うコツは、レーザーテックのような成長企業を成長の初動や成長加速前に買うことです。このような観点から、決算書はできるだけ発表当日に読むことが望ましいといえます。

■POINT2 純資産は増えたか

純資産は、会社の財務状況(貸借対照表<BS>)がどうなっているかを見る指標です。

成長株の純資産は通常、増加し続けます。大きく(20%以上)減少したり、2年連続で減少したりする場合は、成長倒れのサインになりますので、理由を確認する必要があります。理由がわからない場合は投資対象から外すことも検討します。

レーザーテックの2021年6月期第3四半期の決算短信の「(2)連結財政状態」を見ると、純資産は484.6億円。2020年6月期末は391.8億円なので、24%ほど増えています。

自己資本比率が大きく減るのは要注意

■POINT3 自己資本比率は適正か

「自己資本比率」は会社が持つ総資産に占める純資産の割合で「自己資本比率=純資産/(純資産+負債)」で計算します。

自己資本比率があまりに低いと、負債すなわち借金をたくさんしてビジネスしていることになります。場合によっては借金を返せないで倒産、となりかねませんので注意してください。

また、自己資本比率が大きく減るのは、純資産が大きく減少するか、借金が急増しているときで、どちらも注意が必要です。

私は自己資本比率の安全ラインとして20~30%以上の数字を使っています。ただし、銀行などの金融業は負債比率が大きくなるので別の基準を使います。金融業を子会社に連結する会社の場合は、普通の企業と金融業の中間くらいが望ましいでしょう。

レーザーテックの自己資本比率は前年同期より低下し、46.2%になっています。前2020年6月期は47.9%だったので1.7%低下していますが、この程度の減少は、事業が成長しているのであれば、まったく問題ありません。

■POINT4 今期予想はどうか

「今期予想」は、その四半期が属する事業年度(決算期末の決算書の場合はその次の年度)に、どれくらい売り上げや利益を上げるか、会社自身が予想した数字です。

株価は、過去の業績よりも、将来の業績(=推定される未来の企業価値)に応じて値動きします。そのため、「業績予想」欄は重要な意味を持ちます。

 

予想に変化がない場合、掲載欄の下に「直近に公表されている業績予想からの修正の有無:無」と記載されています(ただし、業績予想を公開していない企業もあります)。

注目すべきは、業績予想に変化があったときです。

業績予想の修正は、決算発表より前に発表され、決算時にはその修正が反映された数字が記載される場合と、決算発表と同時に発表される場合があります。決算短信に「修正の有無:有」となっている場合は、決算と同時に業績予想が修正されています。「修正の有無:無」であっても、事前に修正が発表されている場合もあるので注意してください。

業績がよくなったときは「上方修正」、悪くなったときは「下方修正」で、数字によって今後の成長ストーリーに変化が出てくるため、株価を動かす要因となります。修正内容によっては、株価が1日の値幅制限の上限・下限に達する「ストップ高」「ストップ安」まで動くこともあります。

ただし、成長株の場合は、下方修正であっても「先行投資」による前向きな「下方修正」というケースもありますので、修正理由や内容は確認しておきましょう。

レーザーテックの2021年6月期第3四半期における、通期の連結業績予想は売り上げが620億円で前期比45.6%増、経常利益は200億円で前期比32.3%増、「修正の有無:無」になっています。

その後、レーザーテックは2021年8月6日にこの業績予想を上回る2021年6月期の本決算を発表しました。最終的な売り上げは702.5億円(前期比65.0%増)、経常利益は264.4億円(前期比74.9%増)と、従来の予想をさらに大きく上回って着地しました。

業績の進捗率を計算してみる

 

■POINT5 進捗率はどうか

「業績進捗率」は決算短信の中に記載されているわけではなく、電卓などで計算する必要があります。

レーザーテックの2021年6月期第3四半期時点の今期予想は、すでに第3四半期まで終わっているので、実績値が出ています。

売り上げは、第3四半期までの累計で519.5億円、通期の予想が620.0億円。今までのペースでもう1四半期分、売り上げが増えた場合、実績値の約1.33倍が想定される通期売り上げになります。

レーザーテックの2021年6月期第3四半期までの進捗率は、「5195×1.33=69096909/6200=1.1144」で計算します。すると、売り上げ進捗率は111.4%になります。

四半期ごとの進捗率の計算レート
●第1四半期の場合:4倍
●第2四半期の場合:2倍
●第3四半期の場合:1.33倍
×売り上げ・利益の進捗率がともに会社予想より下
△売り上げ・利益の進捗率のいずれかが会社予想より下
○売り上げ・利益の進捗率がともに会社予想より上

つまり、このペースで行くと会社予想を11%超上回って着地することになります。

一方の経常利益はこれまでの累計が189.6億円で、通期予想が200億円ですから、

「1896×1.33=25222522/2000=1.26」

と会社予想より26%増益になりそうです。

そして、実際の本決算では売り上げ702.5億円(>690.9億円)、経常利益264.4億円(>252.2億円)と、第3四半期時点の累計の1.33倍をさらに上回る好結果となりました。

このように、同じ決算発表でも、第1~第3四半期は会社の通期予想に対する進捗率を計算して、業績が会社の予想通りに進んでいるかどうかを確認しましょう。