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デキる人が無意識でやる「思考の地図」の描き方

上手くできない人は迷子になってしまう

分析をして、わかったことがあって、それを踏み台にして、また調べて、分析をする……。この一連の思考の流れを上手に進めることができる人がいる一方、上手く進めることができず途中で迷子になってしまう人もいます。迷子になってしまう原因は、いくつか考えられますが、よく見られるのが2つです。

ひとつは、いろいろ調べているはずなのに、その調べた結果を上手く利用できないこと、もうひとつは、今、自分がどこにいるのかが途中からわからなくなってしまうということです。そこで、大事なことは思考の地図を書きながら進むこと。では、思考の地図はどう描いていくとよいのでしょうか。

これから紹介することは、いずれも基本的なことばかりです。読んでしまえば、当たり前のことと感じる人も少なくないでしょう。ただ基本的なことは、得てして頭ではわかっているけど、ついサボってしまいがちです。そして、いざやってみるとすぐにはできなかったりします。

最初は少し面倒かもしれませんが、慣れるとすぐにできるようになるので、この機会に身につけてみましょう。

■変化がなかったことも重要な情報になる

あなたは、複数のレストランを経営する会社の営業管理の担当です。ある店舗の今月の売上が芳しくないので、少し調査をしたところ、新規顧客の売上には問題はなく、既存顧客の売上が下がっていることにきづきました。さらに、既存顧客の売上を調べてみると、単価は下がってはおらず、客数が減っているということがわかってきました。

今月になって、変更したことを振り返ると3つ。WEBのリニューアルをしたこと、料理長が変わったこと、そして、現場のオペレーションを変えたことです。そこで、3つの仮説を立ててみました。

・WEBのリニューアルで逆に使い勝手が悪くなったのではないか
・食事が前と比べてまずくなったのではないか
・接客品質が下がったのではないか

 

さて、既存顧客の客数が下がっている原因となりそうなものはどれでしょうか。

ここで、改めて考えてみましょう。既存顧客の客数が減っているということが問題だったのですが、調べた過程において、わかっている情報が実はあります。それは、新規顧客は問題がないということ、そして、既存顧客の単価は減っていないということです。

この3つの情報をもとにして、先ほどの3つの原因を考えてみましょう。

デキる思考の流れ

まず、WEBを考えてみます。使い勝手は既存顧客にも影響を及ぼす可能性はありますが、これが原因であれば、新規顧客も下がる可能性があります。しかし、新規顧客には問題は起こっていません。

次に、食事です。食事がまずくなっていると、確かにリピートにはつながらないかもしれません。一方で、既存顧客の単価は減っていないということは、注文は減っていないということになります。そう考えると、食事がまずくなっているという訳ではないかもしれません。

そうすると、残るのは接客です。これは、新規のお客さんには体感できない内容です。単価にも影響はないとは言いきれませんが、食事がまずくなったことと比べるとこちらのほうが可能性は高そうです。

このように、わかった情報をもとに原因を考えるということは重要ですが、実は変化がなかったという情報も重要な情報になるということです。

さて、あらためて今行った思考の流れを振り返りましょう。ポイントは2つです。

①問題があった場所が何かを明確にする

 

分析を進めてわかった問題の流れを図示化しましょう。「売上低下→既存が低下→既存の客数が低下」です。表から理解したことをしっかりと見える化することが重要です。

②問題がなかった場所も明確にする

 

問題の流れが見える化できたら、そこに、問題がなかったことを追加しましょう。「新規は問題ない」「既存の単価は問題ない」の2つになります。

既存の客数の低下ということだと、考えた3つの仮説はどれも可能性があります。

一方で、新規と既存の単価には問題がないということがわかれば、サイトと食事は、可能性を下げて考えることができるということです。

得てして人は問題があったという情報をもとに考えてしまうものですが、実は問題がなかったという情報も考えていくうえでは重要な情報になります。せっかく調べてわかった情報はしっかりと次につなげていきましょう。

足取りを記録する

迷子にならないためには、問題がなかったという情報もきちんと使っていくということだけでは十分ではありません。人の思考の過程は、いくつかの可能性を広げ、選択するということを繰り返して進んでいくからです。

つまり、思考を進めていくと情報量がどんどんと増えていき、その結果、どういう過程を経て今に至っているかを理解することが難しくなるからです。また、繰り返し進んでいく過程を踏むと時間が進むこともあり、出発点に近いところの内容は記憶しておくことが難しく忘れ去られる傾向にあります。

その結果、覚えている範囲の情報から、なんとなく思考を進めるという状態に陥ってしまいます。何を調べて、何に問題があり、何に問題がなかったのかが、曖昧になってくると今考えている結論がなぜ出ているのかもわからなくなります。また、正しい内容なのかどうかも経緯が追えないため、判断がつかないということになってしまいます。

そこで、思考の地図を書きながら進むということを意識してみましょう。心がけてほしいことは、2点です。問題があったことだけでなく問題がなかったことにも価値があるため、きちんと漏らさないように記録をすること。そして、どういう流れで今、その結論をだしているのか、そのつながりがわかるように考えてきた経緯を足取りとして追えるように記録をしておきましょう。

できると言われている人は、このわかったことと何を調べてきたかの足どりをきちんと記憶し認識できる容量が実はあるのです。「できる人」と自分は違うからとあきらめてしまうのではなく、今回解説した2つのポイントを意識して訓練することで迷子になる確率はきっと下がってくるはずです。