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「数字に踊らされる人」と「使いこなす人」の差

数字に踊らされないために

気合を入れて考えた企画書を説明したところ、「数字(データ)をちゃんと確認したのか」と差し戻されてしまった。「これ、今月の数字(データ)、明日までにちょっと分析しておいてくれるか」と依頼を受けた。このように、ビジネスにおいて、「数字」は切っても切り離せません。数字をうまく、武器として使いこなせれば、強力な味方になります。ただ、逆に数字に踊らされてしまうという危険もあります。

そこで、今回は、数字を使いこなすためのポイントを解説します。いずれも基本的なことばかりです。読んでしまえば、当たり前のことと感じる人も少なくないでしょう。ただ基本的なことは、得てして頭ではわかっているけど、ついサボってしまいがちです。そして、いざやってみるとすぐにはできなかったりします。

最初は少し面倒かもしれませんが、慣れるとすぐにできるようになるので、この機会に身につけてみましょう。

新しい地域を担当することになったあなたは、各店舗のスタッフの人数と売り上げの状況を調べてみることにしました。さて、スタッフの人数と店の売り上げは、A右肩上がり、B右肩下がり、Cバラバラ、どのような状態になっているでしょうか。考えてみてください。

Aの状態(右肩上がり)は、スタッフの人数が増えれば、売り上げも増えるという状態です。人員がうまく配置されていて、無駄なく接客ができているとこのような状況になりそうです。もしくは、面積がそもそも広く、スタッフの人数が必要な店舗であれば、このような状況になる可能性があります。

Bの状態(右肩下がり)は、スタッフの人数が増えるほど売り上げが減っているという状態です。店舗が狭く人が増えるほど作業効率が悪くなるいといった場合にはこのようなことも発生するかもしれません。ただ、このような状況になる可能性はそう高くはないでしょう。

Cの状態(バラバラ)は、スタッフの人数と売り上げの間に関係性があまり見いだせないという状態です。売り上げに影響を与える可能性のある要素は、スタッフの人数だけとは限りません。したがって、Cのような状況になる可能性もありそうです。

数字から想像し、思考のきっかけを得る

さて、今考えたように、実際の数字を分析してみる前に、データがどのような状態になる可能性があるのかを考えるようにしましょう。

その理由は、2つあります。1つは、自由に発想できるからです。実際に集計して、いきなりグラフにするといったことをしてしまうと、集計した結果やグラフ化されたものに意味合いをつけようとすることから考えがスタートしてしまいます。集計結果やグラフに頭が支配されてしまう前に、自由に発想できるタイミングで、どういう可能性があるのかを考えるようにしましょう。

もう1つの理由は、分析をして見えてくる情報に対してより感度を高くして解釈することにつながるからです。人は事前に思考投入をするとその結果がどうなっているのかを純粋に知りたくなるものです。出てきた結果が予想どおりであれば、考えたとおりだったと印象に残ります。また、違っていた場合は、なぜ違うのだろうとさらなる思考のきっかけを得ることができます。

実際には、右肩上がり、右肩下がりのような直線的な関係にならない場合もあります。また、同じ右肩上がりと言ってもその上がり方はさまざまですが、データを見る前の想定としては、まずは、大きく先述の3つを想定しておくとよいでしょう。もしほかの想定が持てるのであれば、それはそれで問題ありません。

 

大切なことは、何も考えずにいきなりデータを分析するのではなく、事前に少しでも考えることです。事前の想定があっていても、違っていても示唆を得ることができます。

意図を持ってデータを見ることも意識する

多くの場合、データから何が言えるかを考えます。これはこれで非常に大切な行為なのです。ただ、気をつけないと、データに解釈を与えることが目的化してしまう可能性があります。また、データがあればあるだけ、データに引っ張られてしまうという弊害もあります。データが大量にある場合は、すべてを考慮にいれることはできません。

そこで、必要となってくるのが、そもそもどのデータを見るのか、そして、そのデータから何を読み取るのかという意図をもつことです。対象を選択すること、そして、そのデータを何のために見て、そして、何を読み取るのかという意図を持つようにしましょう。データに踊らされないためには、意図を持つことが重要です。

数字から何が言えるのかを考えることは非常に大切なことです。ただ、それだけだと、数字が主役になってしまい、数字に踊らされる可能性が出てきてしまいます。そうならないために、2つのことを意識しましょう。

1点目は、意図を持って数字にあたること。どの数字を見るのか見ないのかを選択し、何を目的に何を読み取るのかを考えること。そして、2点目は、数字を見る前に想定を持つこと。この2つを心がけることで、実際に数字が示してくれている事実に対して、数字に踊らされることなく解釈ができる可能性が高まっていきます。

「データから何が言えるのか」、そして「データから何を拾うのか」、両方の視点を意識しながら、数字に向き合えるようにしていきましょう。