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コロナでさらに進化「出会い系アプリ」の最新事情

「出会い系アプリ」の最新事情

①新「出会い系」サービス:外出が減っても出会いは増える?!

コロナ下では外出自粛で未知の人と出会う機会が極端に減ったが、それを補うように人気を博したのが、初対面をオンラインで行う出会いの新しい形だ。特に欧米のサービスは一歩先を行く。

例えば、米国の「OKZOOMER」は、自宅待機中でも新しい出会いが見つかる大学生限定のマッチングサービス。アメリカの認定大学に在籍中で、大学アカウントのメールアドレスを持っていれば誰でも参加できる。デート相手を見つけられたユーザーは84%に上り、友人を作ったユーザーが47%、自分のネットワークを広げたユーザーが10%と実績も出ている。

また、英国発の恋活アプリ「Hinge」が提案するのは「Date from home」、つまり“自宅でデート”だ。登録者のうちプロフィールを見て気になる人がいればメッセージを送り、互いに同意すれば、FaceTimeやZoom、Skype、Google Meetなどテレビ電話にステップアップして、「動画デート」に発展する。

 

一人暮らしの生活者向けに、ふと人と話したいときに世界の誰かとランダムでつながることができるサービスが「Quarantine Chat」(検疫・隔離チャットの意)。ウェブサイトで自分の電話番号を登録後、ボイスチャット専用のアプリ「Dialup」をスマートフォンにダウンロードすると、ランダムに話し相手を見つけてくれて、音声通話だけで誰かとつながる仕組みだ。通話はアプリを介してインターネット経由で行われるため、世界中の相手と無料で話すことができる。

「OKZOOMER」は大学生に限定している点がユニークであり、フィルターがかかることで、利用者も一定の安心感を持って参加できる

「Hinge」はプロフィールが公開され、双方の同意が必要な点などによって、出会い系アプリとしてのある程度の安全性が担保されていることが特徴だ。「Dialup」はビデオ会議が続き、画面越しに対面することに疲れている人に支持された。音声のため自分の姿を見られる心配もない。オンラインでの出会いは、ある程度の安心感や安全性があるサービスが伸長した。

今後有望なのは「特化型」

日本でも「Pairs」や「tapple」などの恋活・婚活アプリで、ビデオチャットなどを通じてデートを楽しむ「オンラインデート」の人気が加速した。一方、婚活サービス大手のIBJは、Zoomを使った「オンラインお見合い」を2020年3月から開始。同社のシステムにプロフィールを登録している会員に「オンラインお見合い」の可否を問う項目を設け、双方合意のうえで行う仕組みだ。

自宅でリラックスし、互いの話に集中できることなどから、次のステップである「仮交際」に進む確率が50%と、リアルの30%より高く、オンラインのほうが好成績になるという結果もある。オンラインデートやオンラインお見合いは、若者を中心に一つの選択肢として「当たり前」になりつつある。

今後、ビジネスとして有望なのは、「OKZOOMER」のように大学生に限定したり、「Dialup」のように音声だけにするなど、特化型のオンラインデートサービスだ。学生限定以外でも、医者限定、スポーツ選手限定、アーティスト限定、LGBT限定など、やりようはいくらでもある。

また、米国ではオンラインデートの作法や励まし、モチベーション維持を動画や電話で指南するデートコーチサービスが人気だ。日本でもオンラインに特化したデートコーチサービスはビジネスになり得る。

一方、日本の若者の間でも出会いについて「安心感」を求める傾向が強くなっている。例えば、音声SNSのClubhouseは、自分の姿を画面上にさらすことがない安心感が流行のポイントとなった。親友や恋人同士で自分の空き時間情報をシェアできるカレンダーアプリ「FRIDAYS」は、限られた人だけと予定を共有でき、親友や恋人といえども知られたくない予定は非公開設定が可能など、安心して使える点が人気につながった。

「ノミニコ」は今飲みに行きたいと思った瞬間に、Twitterで相互フォローしている友人を一斉に誘ってマッチングできるアプリ。これも安心できる人のみを効率的に誘えることが受けた理由だ。出会い系のさまざまなサービスも、「安心感」を付加することで、若者を中心に大きな支持を得られる可能性が高い。

②バーチャル冠婚葬祭:礼拝もオンライン化、伝統にも変化

欧米では国民の約75%がキリスト教信者で、コロナ禍では毎週日曜日に家族で教会に通っていた人々向けに、教会の礼拝や洗礼式もオンライン配信に切り替える例が続出した。2020年4月に行われたイースター(復活祭)では、通常、教会に集まり大人数で集団礼拝を行うが、 YouTubeで多くの動画が配信され、自宅から各自が祈りを捧げる動きが目立った。また、イスラム教が国民の約9割を占めるインドネシアで、1割足らずのキリスト教徒の日曜礼拝においてオンラインストリーミング配信が活用された。

結婚式や葬式などのイベントも次々とオンライン化されている。米国では、葬儀に参加できない家族に、Zoom配信やFacebookのライブストリーミングで生配信するサービスも行われるようになっている。

スペインの注目株は無料アプリ「ETERNIFY」だ。アプリ上で家族が故人の特設ページを作り、友人や親族にチャットアプリ「WhatsApp」やメールでリンクを送信。スマホでログインすると、故人への別れのメッセージを投稿し、思い出の写真をアップロードすることができる。火葬の日時などのスケジュール共有も可能だ。アプリでメッセージや写真をあらかじめ集め、火葬の日にオンラインでアクセスした人たちに紹介したり、相互にやり取りして故人をしのぶこともできる。こうしたサービスは全て無料だ。

感染拡大が深刻な国で一層促進

海外は、日本よりコロナの感染拡大が深刻な状況だった。厳しい外出禁止措置などがとられたため、集まっての礼拝や葬儀を行うことができず、オンライン化が日本より促進された。また、普段なら参加しづらい遠方の人、高齢者、体が不自由な人も“擬似参列”することができ、便利さもあいまって広まった。

日本では一部の葬儀業者がリアルで行う葬式の追加オプションとしてオンラインサービスを提供し、参列できない人の弔電や供花、クレジット払いの香典に対応しているが、まだ利用はそれほど進んでいない。世界で最も高齢化している日本では、高齢者が多く参加する行事である葬儀こそより新しいアイディアが必要とされる場だ。

 

有効なビジネスの一つは、「ETERNIFY」のようなオープンなプラットフォームの展開だ。同様のアプリを日本でも立ち上げれば、リアルの場で葬式を行いたくない人、参加したくても体の自由が利かない高齢者のニーズを捉え、利用が進む可能性は十分にある。集まった写真をアルバムにする有料サービスなどを提供するのも手だ。

③デジタル教科書:進化するオンライン学習

コロナ以前からデジタル教育、オンライン教育の導入が先行していた中国では、幼稚園から小学校卒業までの学習内容が入ったアプリ「納米盒(ナーミーフー)」の人気がさらに高まった。コンセプトは「保護者の秘書、先生のサポーター、子どものパートナー」。中国全土の教科書の約95%をカバーし、2500以上の学習コンテンツを提供する。

映像、音声、画像を用いて予習・復習ができるほか、朗読や英語の発音チェック機能などもある。コロナ禍で休校が続いた時期にいっそう利用者が増えた。2021年2月1日時点で、累計ダウンロード数は2億9000万を超えている。

英国では「親起点」の取り組みが続々

一方、ロックダウン中の英ロンドンでは、メッセージアプリ経由で、担任からの学習課題や自作の動画などが毎週送信された。だが、小学生は毎日遊んでいた友達と会えないことにストレスが溜まり、保護者も家庭でのサポートに不安を抱えた。

そこで、保護者たちが自主的に始めたのが、チャットアプリ「WhatsApp」を使って、子どもたちが友達に向けて書いた手紙や写真を送り合う「デジタル交換日記」。また、ZoomやSkypeを使って保護者が交代で行う「グループ読み聞かせ」も実施した。

 

さらに、英国の公共放送BBCは2021年1月、政府が3回目のロックダウンを発表したことを受け、インターネットにアクセスする環境が整っていない生徒に対し、学校のカリキュラムに基づいた本格的な教育番組の放送を決定し、1月11日に開始した。小学生向けに平日の午前9時から3時間、中学生に対しては少なくとも2時間の番組を放送した。

「納米盒」は基本的に無料で、学習内容のカバー率が非常に高く、コンテンツが豊富なことから、利用が促進された。有料の電子参考書のダウンロード、有料の授業(数十元程度)なども用意し、ビジネスとしても成り立たせる試み。子どもだけでなく、宿題を見るときに教え方が分からない親も参考のために多くが利用した。

英国では、オンライン上でつながりたい子どもたちの思いを、保護者が工夫して実現させた。子どもたちの間で連帯感が生まれ、家庭内の子どもと親、あるいは子どもの家族同士の交流も深まったという。子どものために困難を共に乗り越えようとする機運が原動力となった。さらに公共放送が児童の授業を補完する番組を放送し、社会貢献する姿勢に対して共感が
集まった。

肝心の日本は?

日本では児童・生徒一人ひとりにタブレットを配布する「GIGAスクール構想」が前倒しで進む。だが、肝心なコンテンツの供給が不十分なのが現状。将来的にコンテンツが充実したとしてもそれを個々の生徒の疑問解決や教育指導に活用する教員の研修や訓練も必要で、デジタルデバイスなどハード面が揃っても教員の指導力の差で教育格差が生まれないようなサポートも求められる。

「納米盒」のように9割以上の教科書をオンライン化し、あわせて映像などを用意することは難しいにせよ、教科書をつくる一部の出版社が先んじて、デジタル化や映像配信に取り組んだり、教員のオンライン授業の研修、支援を行うことはビジネスとして有効。パンデミックでなくとも、例えば従来のようにインフルエンザで休校になったときもオンラインに切り替えて学習の継続が可能になる。

また、英国の事例のように、子ども同士、保護者同士のオンラインコミュニケーションをサポートするサービスも需要が高まるだろう。

さらに、オンラインによる学習や授業が可能な環境が整備された場合、学校や先生の役割も“ティーチング”(授業を行う)から“コーチング”(わからない箇所を指導したり、モチベーションを高めたりする)へと変わってくる可能性があり、そうした未来を見据えた視点も重要となる。