· 

目標必達できる「ヌケ・モレない計画」作る7つの技

目標を「実行しやすいサイズ」に細分化する

計画は、未来の目標と現状のギャップを埋める「ロードマップ」を描くようなものですが、計画を立てるうえでの最初のポイントは、①「目標を細分化する」です。

皆さんは300gのステーキが目の前に出てきたら、どのようにして食べるでしょうか。ほとんどの方はナイフで食べやすいサイズに切り、切ったステーキを順番に食べると思います。

同じようにプロジェクトの目標も1日では達成できませんので、目標を「実行しやすいサイズ」に細分化します。この実行しやすいサイズを「タスク」といい、それぞれのタスクに6W2Hを設定していきます。つまり、それぞれのタスクを、「いくらで」「どこで」「いつまでに」「誰が」「誰に対し」「どのように」「何を行い」「なぜ実行するか」などを考えるのです。これにより、詳細な計画をつくることができます。

細分化について「本」を具体例にして考えてみましょう。本は、「本文(書籍本体)」「カバー」「帯」などのパーツで構成されています。さらに本文は、「目次」「第1章」「第2章」などに細分化できます。では打って変わって、カレーライスのセットはどうでしょうか。「カレーライス」「サラダ」「食器」「ドリンク」などに細分化できます。

これと同じように目標についても、②「『どのパーツがそろえば達成できるのか』という思考で要素分解する」ことがポイントになります。要素分解をせずに、いきなりタスクやスケジュールを作成してしまうと、タスクのヌケ・モレや、それによるスケジュール遅延などが起きます。

すると、目標達成の確度も低くなってしまいますから、そうならないためにも、要素分解で目標達成に必要なパーツや作業の「全体像」(=スコープ(作業範囲))を導きましょう。

「ツリー図」を活用してみる

要素分解するためのツールを「WBS(Work Breakdown Structure、作業分解構成図)」といいますが、計画時の3つめのポイントは、③「WBSを作成する」です。WBSは、作成すればするほどスキルが高まりますから、皆さんも身近なモノやコトで要素分解してみましょう。

一般的なWBSは4層構造の「ツリー図」です。

1層目にはプロジェクトの「目標」や「名称」を記載します。

2層目には、プロジェクトの達成のために大枠として「どの成果物がパーツとして必要か」という観点で「成果物」を書き出します。先ほどの本の例でいうと、本文(書籍本体)、カバー、帯などが成果物として要素分解できます。

3層目は「要素成果物」。2層目の成果物をさらに分解するとどのような要素で構成されているかがわかるように書き出します。本のカバーでいえば、タイトル、デザイン、紙、著者プロフィールなどが要素成果物です。

4層目は、3層目の要素成果物をどのように生み出すかの「活動」を書き出します。これが一般的には「活動時のタスク」になります。本の紙であれば、業者選定、見積もり依頼、注文、配送などの活動に分解されます。

 

WBSは、プロジェクトの目標を書類としてまとめた「プロジェクト憲章」などを基に、未来の活動をイメージしながら作成します。作成時には、切り口や細分化の粒度で悩みがちですが、これには決まりがありません。

重要なことは、④「プロジェクトを『やりくり』するときにベストなサイズや切り口で細分化する」ことです。大きすぎれば進捗管理が難しくなり、小さすぎると進捗管理の工数が増えてしまうので気をつけましょう。

次に、スケジュールを考える際のポイントをお伝えします。プロジェクト憲章などをもとにスケジュールを作成すると、期日までに活動がおさまらないことがあります。この場合は、人員や高性能の機械を投入して作業スピードを早め、特定のタスクの時間を圧縮する、あるいは同時並行で複数のタスクを実行するといった「やりくり」をして期日までにおさめていきますが、このときに大切な指標となるのが「マイルストーン」です。

マイルストーンとは、鉄道や道路などにおいて起点からの距離をマイルで表した距離標識に由来する言葉です。プロジェクトでは、プロジェクト期間内での重要な「時間的目印」として使われます。簡単にいえば「ゆずれない時間的ポイント」で、契約や検収、決裁者の承認など、これをクリアしないと次に進めない重要なポイントをさします。

ですから、スケジュールを考える際には、⑤「まずマイルストーンを決める」ことが大事です。そして、それぞれのマイルストーンに間に合うようにタスクを調整すると「やりくり」がしやすくなります。

遅れが生じる2大要因とは?

いろいろとやりくりをしても期日までにスケジュールがおさまらないことがあります。そのような場合は、プロジェクト憲章の内容が現実的でなかった可能性がありますので、⑥「プロジェクト憲章を承認した決裁者とあらためて会議を行い、スケジュールを修正」しましょう。よくある修正としては、「プロジェクトの期日を後倒し」にする、または「要求事項を調整し、レベルを下げてスケジュールにおさめる」があげられます。

ところで、スケジュール遅延はなぜ発生するのでしょうか。「2大要因」を特別にお伝えします。

(1)「チームの生産性」を考慮しない
チームというのは、プロジェクトの実行開始から徐々に生産性が高まるもので、最初のうちは、同じタスクボリュームでも時間がかかるのです。ですからプロジェクトの開始時は、同じタスクボリュームでも時間がかかることを想定してスケジュールをつくりましょう。

(2)「決裁者の意思決定時間」を考慮しない
決裁者の承認を得ないと次に進めないプロジェクトでは、決裁者との会議調整、意思決定などの時間を考慮してスケジュールをつくりましょう。

 

最後に、皆さんは「パーキンソンの法則」や「学生症候群」という言葉や理論をご存じでしょうか。簡単にいうと、「人は時間や資源の余裕があると、その余裕を残さず使ってしまう」というものです。

私は大学院の講師をしていますが、学生に、1時間で終わるレポートを来週の同じ時刻の講義までに提出するように宿題を出したとします。

このときの時間余裕(バッファー)は6日と23時間です。でも多くの学生は、時間余裕を先に使ってしまい、宿題は次の講義の前日か前々日にやります。

プロジェクトでも同じで、タスクの完了を確実にするために時間余裕をつくっても、多くの場合、先に使ってしまいます。ですから、各タスクでは時間余裕を設けず、⑦「マイルストーン前やプロジェクト期間終了前に、『まとめて』バッファーを設けておく」ことをおすすめします。時間という貯金を、プロジェクト全体で「まとめて」管理するイメージです。

今回、ご紹介したポイントをふまえて計画を作成すると、実行時には驚くほどスムーズに進みます。ぜひ実際のプロジェクトでお試しください。