大ヒットCM、キウイブラザーズが愛される理由

CM総合研究所が発表した2020年のCM好感度ランキングで作品別総合第1位、昨年はACC東京クリエイティビティアワードの総務大臣賞/ACCグランプリを受賞したゼスプリ。主役であるキウイブラザーズの誕生は、6年前に入社した猪股可奈子さんの存在抜きには語れない。大手外資系メーカーでブランドマネージャーを務めた猪股さんは、15年にゼスプリ社に転職した時の驚きをこう語る。 「いわゆる消費者データを見たら、キウイフルーツを月に1回以上食べている人が50%に満たなかった。さらにキウイの旬の時期ですら、月1回も食べていないというのは、驚きでした」 当時は毎年人気タレントを起用したテレビ広告を展開し、売り上げは順調に伸びていたが、猪股さんは独自に市場調査を開始。現実を知るほどに、キウイの味や栄養価に対する認知度は低いと感じた。 「日本は世界的にみても果物の消費量が極端に少ない。キウイを知らない人はまだまだいるはずだし、開拓の余地があると思いました」 加工食品に比べ、農産物や生鮮食品は競合意識が少ないのが実情。猪股さんはそんな現状に甘んじている会社を説得し、思い切って広告の戦略を変えることを提案する。そして外部のクリエイティブチームとディスカッションを重ね、最終的にキャラクターをつくることで合意した。 「消費者は毎日いろいろな情報に囲まれて生活している。どんなに個性的なパッケージやCMを目にしても、頭に残るのはほんの一部です。キウイの中身をいかに印象的に見せるか、そこが勝負でした。初期はグリーンとゴールドというふたつのキャラクターをわかりやすく表現するために、パーソナリティを設定して表情に落とし込んでいきました」 グリーンは真面目で正義感が強く、しっかり者。対するゴールドは陽気でのんきな甘えん坊。猪股さんはそんなパーソナリティを設定した。地味な外見と華やかな中身が対照的なキウイそのものをキャラクターにしたことで、キウイフルーツの存在感は俄然アップ。昨年からは期間限定でレッドが発売され、妹として仲間入りした。

2016年、CMに初登場したキウイブラザーズは、さまざまなストーリーと、印象的な歌やダンスとで消費者にブランドを認知させた。20年には「ヘルシーは好きなことを楽しみながら」というキャッチフレーズで、おいしさと健康価値という普遍的なメッセージを呼びかけ、CM好感度1位に。 「毎日習慣にしている食事のレパートリーに、いかにキウイを取り入れてもらうか。消費者の食生活を変えるのは簡単なことではありませんが、マーケティングは常にニュートラルに消費者の立場に立つことが大事だと思います」 消費者の現状を冷静に見つめ、購入する際になにがバリアとなっているか理解することで、解決策が見えてくる。職場では「仕事ばかりしないで、家族とご飯を一緒に食べなさい、私生活が楽しければ仕事も楽しくなるから」と言っている猪股さん。「ヘルシーは好きなことを楽しみながら」のコンセプトは、猪股さん自身の持続可能な働き方にも通じている。