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デキる人が実践「必ず目標達成」を導く8つのコツ

「どうしたらできるか」を考える

最初に「プロジェクト」とはどんなものでしょうか。定義はさまざまですが、一般的には「独自の目標」と「期限」という2つの要素が設定されている一連の「活動」とされています。独自の目標とは「過去に経験したことのない要素が含まれている未来の目標」で、その目標を達成する期限を「未来に設定」します。

・お客様から注文を受けた経理システムを〇月×日までに開発して納品
・今までに発生したことのない在庫管理問題を□月△日までに解決

ビジネスでは、こうしたものになりますが、プロジェクトは仕事に限りません。試験、旅行、誕生日パーティーなどもプロジェクトにあてはまります。プロジェクトは、私たちにとってとても身近な活動なのです。

では、目標設定のポイントを具体的にお伝えしていきますが、プロジェクトでは「できない理由を考える」のではなく、「どうしたらできるか」という思考が求められます。そのため、まず大切なのが、①「ゴールから考える思考をもつ」ことです。

目標を立てる際に、自分の能力、会社の状況、経営資源などを最初に考えてしまうと、それが足かせとなり、本来達成すべきものが目標として設定しづらくなります。例えば、自社で通信販売の新規事業を立ち上げるとしましょう。そのときに、現在の組織力や人材を最初に見てしまうと、「システム開発する人材がいない」などの「できない理由」を考えてしまいがちです。それでは先に進めません。

 

一方、最初に目標を設定し「どうしたらできるか」を考えると、どうでしょうか。「通販システムを外注しよう」「コールセンター経験者を10名採用しよう」といったアイデアが生まれ、目標達成に進むことができます。

目標を立てるときには、②「『6W2H(What、Why、When、Who、Whom、Where、How、How Much)』を明確にする」ことが大切です。「何を」「なぜ」「いつからいつまでに」「誰が」「誰に」「どこで」「どのように」「いくらで行うか」を明確にします。これにより目標がイメージしやすくなり、以降の計画もスムーズに進みます。

 

「従業員のモチベーションを高める」では不十分

社内プロジェクトで「従業員のモチベーションを高める」という目標が立てられたとします。でも、これでは目標としては不十分です。6W2Hの「What」が決まっていそうに見えますが、「モチベーションを高める」といっても、何をどこまで高めればよいのでしょうか。「従業員」とは誰のことでしょうか。誰がこのプロジェクトを実行するのでしょうか。

また、「従業員のモチベーションを高める」という目標では、「測定」ができません。そのため、目標が達成されたかどうかも不明確になってしまいます。ですから目標設定においては、プロジェクトの望ましい目標となるように測定可能なものにします。

「従業員満足度を前年対比10ポイント増加」
「モチベーション向上により生産性を5%改善」

これが、測定可能な6W2Hの「What」です。このようにして6W2Hの残りの要素で、ステークホルダー(プロジェクトにかかわる人たち)が求める条件や、目標を達成するための技術・方法などを明確にし、それをもとに目標設定していきます。

では、6W2Hをまとめるための情報は、どこから入手するとよいでしょうか。それが3つめのポイント、③「プロジェクト化される前に存在する『資料類』と『ヒアリング』から情報を得る」です。

資料類:「契約書」「提案依頼書」「要件定義書」「計画書」「企画書」など
ヒアリング:プロジェクト・オーナーやお客様、営業担当者などから「情報をダイレクトに得る」こと

これらの情報を活用して6W2Hをまとめ、目標設定をしますが、資料類やヒアリングから得た情報には、「要求事項」が含まれています。「予算は1億円としてほしい」「〇月×日にお客様の検査に合格してほしい」といったもので、これらを満たさない目標設定をしてしまうと、途中で「こんなものは依頼していない。やり直し!」となってしまうことがあります。

そうならないためにも、④「ステークホルダーの『誰が』『何を』要求しているのかを必ず確認」することも大切なポイントです。

要求事項をまとめると気づくことがあります。それは「利害が衝突している要求がある」ということです。

お客様からのオーダー製品の納入に際して、営業と製造の双方が

営業「4~6月に毎月200個納品してほしい」
製造「製造工程の都合から6月に一括で600個を納入したい」

と要求する、などです。

目標設定では、利害が衝突している要求への対応も大切なポイントで、対応としては、⑤「要求事項を確認し、優先順位づけをする」、そして、⑥「優先順位づけが難しい場合は、話し合う場を設けて検討する」になります。この2つを行ってもなお解決されない場合は、決裁者の意思決定をあおぎ、優先順位づけをしていきましょう。

プロジェクトの前提となる資料をまとめ、ステークホルダーへのヒアリングをし、要求事項の調整をしたら、いよいよプロジェクトの目標を書類としてまとめます。この書類を「プロジェクト憲章」といいます。

プロジェクト憲章は、プロジェクトの計画と実行をする前の「企画書」の位置づけで、この中で6W2Hの詳細を明確にしていきます。まとめるべき項目は、「名称」「目的」「成果物・要素成果物」「納期」「条件」「予算」「実施場所」「体制」「主要ステークホルダー」「リスク」「承認日・承認者・改定履歴」などですが、作成時に大切なのが、⑦「必ず決裁者の承認を得る」です。

お客様や自社の決裁者などから承認をもらい、その証拠をプロジェクト憲章内にしっかりと記載しておきます。承認を得ずにプロジェクトを進めてしまうと、「こんなことは依頼していない」といったトラブルが発生し、後々に問題になる場合があるのです。プロジェクト憲章の承認は、そうしたときの重要な証拠にもなりますので、面倒でも必ず承認を得るようにしましょう。

大きなプロジェクトはフェーズで細切れにする

 

ただ、プロジェクト憲章は、なかなか承認されないこともあります。「コストが大きくて承認されない」「技術的に不確実性があるので決裁者が意思決定しづらい」といったケースです。決裁者の立場では、未来の不確実なものに対して決裁するのには、勇気がいります。プロジェクトが大きくなって長期間になるほど目標設定も難しくなります。

このようなときには、どうしたらよいでしょうか。ポイントをお伝えすると、⑧「プロジェクトをフェーズで細切れにし、最初のフェーズだけを目標設定して承認を得る」です。

仮に、新しい人工知能(AI)システムを開発する場合、全体のコストが大きく技術的に不確実性も高いため、最初からすべての承認を得るのは難しいです。ですからこうしたときには、まずはシステム設計のフェーズまでをプロジェクト化して目標設定し、承認を得るのです。

大きなプロジェクトで目標設定に難航したら、フェーズを細切れにして「スモールスタート」することで、目標設定しやすくなり承認・決裁も得られやすくなります。

こうしたマネジメントをきちんとすることによって、格段にプロジェクトがうまく進みます。ぜひ実践してみてください。