文章がわかりにくい人と「伝わる人」の決定的な差

読者の欲求を高めるには、「すぐできる」「簡単」などのベネフィットが必要になります。人は楽をしたい生き物なので「難しい」と思われてしまうと、ハードルが高く感じてしまいます。

これは過去に流行したキャッチコピーなどをみれば明らかです。『レンジでチン』(クックパッド)、『ブレスダイエット』(3秒息を吸って7秒吐く)などは有名です。「メリットのある情報」も重要な要素になりますが、ノウハウでもあるので無理に提供する必要はありません。むしろ、取りかかるハードルが低いということをイメージさせたほうが読者にとっては響くはずです。

「今日からできる」「誰でもできる」などはハードルを下げるための効果的なベネフィットです。このようなハードルを下げるためのベネフィットは覚えておくとよいでしょう。

ほかにも、「東大脳」(東大に入れるレベルの脳を簡単に手に入れる)、「ビリギャル」(学年ビリから有名大学に合格した女子)、「医師(弁護士)だけが知っている〜」(専門家の情報が簡単に手に入る)などがあります。実際の再現性はさておき、このような表現は読む人に伝わりやすいのです。

次の2つの情報を見てどのように感じますか?

A タウリン2000mg配合
B コレステロール値を下げて肝臓の機能を高める

ドリンク剤の宣伝にはタウリンが含まれていることがウリになっていますが、タウリンの効能を理解して購入している人は少ないでしょう。厚労省の「e-ヘルスネット」には「タウリンには、コレステロールを消費してコレステロールを減らす、心臓や肝臓の機能を高める、視力の回復、インスリン分泌促進、高血圧の予防など、さまざまな効果がある」と書かれています。

 

この説明をさらにわかりやすく解説したほうが伝わりやすいでしょう。読者目線を整理したら、それを伝えるための書き方にしなければなりません。

文章を書く際には、「客観性」「明瞭さ」が求められます。視点がかたよりすぎていたり、極端に歪曲したものは好ましくありません。以下の文章は、以前あるニュースサイトに投稿したものです。就活に関する記事ですが評判になりました。

伝え方は客観性をもたせて明瞭に

「就職情報サイトは、企業が掲載料を支払って登録し、その対価として学生を自社にエントリーするように誘導するサービスです。企業の実態を伝えることや、学生が欲している情報を伝えることを目的としているわけではありません。エントリーシートは業種別に数バージョンを用意して、基本は企業名を変えるだけで使用可能なコピペエントリーシートで十分です。私が、多くの就活講座やセミナーで『就活のエントリーシートはコピペで十分』と訴えるのにはこのような理由があるからです」

人気企業でなくても上場企業であれば、相当数のエントリーが殺到します。採用数にかかわらず、人事担当者は数名が一般的です。仮に2名として1万人のエントリーシートを読むのにどの程度の時間がかかるのか計算してみましょう。

1枚1分として、採点までを含めて、1時間でこなせるのは30枚程度です。1日の実働8時間として考えれば、240枚。1万人のエントリーシートを採点するには41日もかかる勘定になります。1カ月の稼動を20日とするなら、ざっと2カ月です。2名でこなしたとしても1カ月はかかります。

これは、ほかの業務を一切せずにエントリーシートの採点のみに費やすだけで、その程度の時間がかかるということです。このように根拠を示したうえで、最後に次のように結びました。

「すべてのエントリーシートを読むことは非効率ですから、採用ではスクリーニングが必要になります。学校名や写真映りなどによるスクリーニングです。あなたが企業にとって意中でない学生ならふるい落とされる可能性が高いということです」

この論調は、採用企業を批判したことに加え、就活の裏側をつまびらかにしたことから大変話題になりました。これくらい言い切るとよほどの間違いでない限り、批判はしにくくなります。伝えたいことに自信があるならより根拠を明確にしたほうが伝わります。反発や批判も増えますが、肯定的な読者も増えます。

紙の本をぱらぱらとめくったとき、「読みやすそう」と感じるものと、「読みにくそう」と感じるものはありませんか? その違いは、レイアウトによるものです。読みやすい文章は、改行、段落、行間を適度に空けています。書く内容も大事ですが、デザインレイアウトにも気を配りましょう。

伝えるためのレイアウトを理解しよう

文字だらけの文章は読む気が半減します。1行20文字程度で表示されるスマホ画面では、文字が多くなると画面がいっぱいになってしまいます。「その記事がどうしても読みたい」のであればいいでしょうが、そうでなければ、冒頭の一文すら読まれない可能性が大です。

読みやすく改善するためには、一文は40文字以内、文章のひとかたまり(段落)は140文字程度に抑えて、改行する――たったこれだけのことで、適度に行間が空いて、文章がとても読みやすくなります。

文章レイアウトは、紙の書籍とWebページで異なります。紙の書籍は、段落ごとに1マスあけますが、Webサイトでは、基本的にはすべて左揃えで統一します。同じWebサイトでも、ニュース記事はあまり行間を空けず、約140字で改行し、1行空けて次の文章を書きます。

ブログやメルマガなどは、一文書くごとに改行、1行スペースを空けて次の文章を書きはじめます。文章を投稿する場所によって、使い分けます。

紙の書籍の場合は、文字は基本的に縦書き。1行あたりの文字数は40文字程度です。おおよそ2、3行ごとに改行をします。それによってページ下段に余白ができます。紙の場合は、話が一段落したところで、1行空けて余白を作ります。

Webサイトの記事は、パソコンとスマホで読まれることを前提にデザインを組みます。このとき行間が空きすぎていると、最後まで読み切るまでに何度も画面をスクロールしなければいけなくなります。

ブログに関しては、逆に文字がぎっしり詰まっていると、息苦しさを感じます。なぜなら、ブログなどは、リラックスした気分で読みたいからです。こんなときは、余白が多いほうが読まれやすいのです。

文章の内容以上にレイアウトも大事です。自信のない方は一度、自分の文章のレイアウトについて、見直してみることをおすすめします。紙媒体、Web媒体、ニュース記事、ブログ記事。それぞれ読む局面と目的、読者層も異なります。目的に応じたレイアウトを心がけるといいでしょう。