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自動車整備士版「Uber」が旧弊から見いだす勝機

――現在の整備士業界の問題はどこにあると考えていますか。

一般的に車の整備はお客さんからは会計がわかりにくく高いと思われているが、自動車整備士の給料は安い。時給換算すると東京では1000円前後、地方だと800円程度だ。国会でも質問が出ていて、国家資格が必要な職種なのに給料の安さが人手不足に繋がっていると指摘されている。同じ会社でも営業職のほうが給料が高いといった職種間の給与格差もある。

賃金だけではなく評価の問題もある。整備士はお客さんと直接関わる機会が少なく、フィードバックを受けにくい。お客さんには営業が対応し、整備士は直接関わらないというルールを持つ会社もあるほどだ。

整備士が意義を感じにくい

私の実家で利用しているディーラーでは整備士が応対することはなく、スーツを着た営業担当者とだけ話をして終わる。過去に作業現場を見たいと依頼したら、それはできませんと断られた。これでは整備士が自分自身の評価を得る機会が少なく、仕事に意義を感じにくくなってしまい、離職にも繋がる。

問題の根本にはディーラーによる垂直統合の問題があると考えている。新車販売とアフターサービスは、本来違う機能なのにディーラーの下で垂直統合されている。

結果、新車販売で値引きして車検や整備といったアフターサービスで(利益を)回収する構造になっている。そのしわ寄せが整備士にきている。明らかにディーラーの整備は回っていない。予約が取りづらく、場合によってお客さんは2~3週間待たなければならないこともある。

――そうした問題をどう解決していますか。

まずは整備士の方に対価をしっかりお支払いする。現状、時給換算で3000円。Seibiiでは出張して整備を行うので利用者に直接応対する。評価制度もあるのでフィードバックを受けやすく、仕事に意義を感じやすい環境になっている。

同時に、ユーザー側の問題も解決していく。ユーザーは整備のために車をディーラーなどに持ち込まないといけないし、予約がなかなか取れない。(専門性が高く)相見積もりを取って整備料金の妥当性を確認するにもハードルが非常に高い。不満を感じながらもあきらめている人が多いと思う。私もそうした不満を感じて、サービスの立ち上げに繋がった。

Seibiiでは、ドライブレコーダーの取り付けや冬用タイヤへの履き替え、バッテリーといった消耗品の交換や修理といったことを、整備士がお客さんの自宅に行って行う。

――Uberなどに似た形ですね。人の命に関わる車の整備を扱ううえで気をつけていることはありますか。

単なるマッチングにはしたくない。あくまでもお客さんには僕たちのブランドでサービスを提供している。整備士の登録時には整備士資格、運転免許証(車で出張して整備する必要があるため)はもちろん、出張に使う車の車検証も提出してもらっている。登録前に面接も行っており、半分くらいの方はお断りをしている。お客さんと接する以上、技術はもちろん人柄も大切だ。面接では接客ができるかどうかについても見ている。

整備士1000人体制を目指す

何かあったときの責任もすべて当社が負っている。作業ミスがあった際の再整備費用はSeibiiで負担しているし、何かあったときのために損害賠償についての保険にも加入している。修理などに使用する部品も一括で仕入れて(整備士へ)提供している。全国の部品の卸売り会社と付き合いがあるので、ほとんどの場合即日対応が可能になっている。

――今後の展開は。

まずは、Seibiiに登録している整備士1000人体制を目指す。さらに、ディーラーでの整備が回っていない現状を考えると、工場で行う必要がある車検などにも対応できるようにしていきたい

自動車整備では相見積もりを取るなど、業者を比較するハードルが高く、不満を感じながらもディーラーに整備を頼んでいる人も多い。そこで、お客さんと町の整備工場などの間にうまく両者を繋ぐプラットフォームが入れば、新車販売と自動車整備の分業ができていくとみている。車検などは出張ではできないので、整備工場と利用者を繋ぐようなプラットフォームの提供もいずれはやりたい。

さらに、CASE(コネクティッド・自動運転・サービス・電動化)などで車が高度化する中、町の整備工場の中には最新技術にキャッチアップが難しいところも出てきている。そうした課題に対応するスキルセットもSeibiiで一括して整備工場に提供できればと考えている。