元ひきこもりが「友人関係」で悩まなくなった理由

“幸せ”な人生のレールに縛られなくていい

いい大学を出て、いい会社に入る。たくさん稼いで、いい人と結婚して、家を買って子どもをいい子に育てる、そんな“幸せ”な人生のレール。そのためのアドバイスは世の中にたくさん存在します。でもその価値観は、あなたの「これが本当にしたいことなんだろうか」「どう生きるのが幸福なんだろうか」という不安を解消してくれるでしょうか。

学校では成績で、運動会では運動能力で、SNSではフォロワー数で、大人になれば年収や立場で、住んでいる地域や子どもが通う学校で評価される。そんな世界が生きやすい人にとってはいいと思いますが、楽しめない人や、疲れてしまう人もいるでしょう。私は完全に後者のタイプでした。

自分が間違っていると思い、人生から逃げ出したくなるときもあります。でもふとした“出会い”によって、「世界はひとつじゃなかった。そんな考え方もあるんだ」ということに気づかされ、一瞬で視界が開けるような感覚を味わえることもあります。

学校や職場、所属するコミュニティがひとつしかなければ、そこでの評価、価値観が世界のすべてだと錯覚しやすいです。それはとても変化に弱いし、生きにくいでしょう。いろんな世界をのぞき見して、いろんな価値観と出会ってください。いくつかのコミュニティに飛びこんでみたり、それが怖かったらせめて眺めたりしてみてください。

たとえば、私のような黒い白衣を着ている人はあまり多くありません。

15年前、この格好を拒絶する人はたくさんいました。受け入れてくれる人を探すというのは、とても難しいことでした。高専時代のクラスメイトに友だちはできなかったし、親は悲しみました。

 

そのときは、それが現実だと思いました。おかしいのは自分なのかもしれないと。もしあなたがが1万人に1人しか理解できない「好きなこと」を持っていたとしたら、小さなコミュニティの中でそれを周囲に理解してもらうのは難しいでしょう。

でも、ネットの世界は広いです。「それすごくいいね!」「僕もたったいま白衣を黒く染めたよ!」「僕は赤い白衣を作ったよ!」「緑の火炎放射器を撃つなら白より黒い白衣だよ!」と言ってくれる味わい深い変人たちと出会うことができました。ワクワクしました。

自分と気の合う人は必ずいる

場所や環境とは関係なく、自分とつながった感性の近い人。周囲とはわかり合えない価値観を共有できる彼らとはとても仲良しになれる可能性があります。実際に私もそうでした。いまでも関係は続いているし、中には多くの人が知るような活躍をしているような人もいます。

いまはもう、協調性や我慢によって友だちをつくらなくてはいけない時代じゃなくなりました。自分はこういう人間だと、自分の表現を外に向かって広く発信するか、あるいは勇気を出して新しいコミュニティに一歩飛び込んで発信してみましょう。

すると自分のことを面白しろいと思った人が声をかけてくれたり、あるいはこちらから話しかけたりする場合にも、自分がどんな人間なのか理解してもらったりしやすく、興味をもってもらえたら返信をもらえる機会が増えます。

そして自分の特性に合った、「なにをしたいか」がまだわからない人も、いろんな人と交流をすれば自然にはっきりしてきます。「あの時、あの場所にいてくれたおかげで、いまの自分はある」と多くの大人たちは言います。

15歳までひきこもりで、人と話すことが苦手だった私も、たくさんの気の合う、憧れる人たちと会うことができたことでいまの私があります。運が良かったんだろうと言われればそのとおりです。しかしよく考えてみれば、これだけ多くの人と会ってきたのに、合わない人の方が圧倒的に多かったので、むしろ運は悪い方だったのかもしれません。

これからどんな人と出会うかで、あなたの人生は大きく変わるでしょう。良い人と出会うためには、出会い方だけではなく、出会う数も大切です。トライ&エラー、たくさん試すことです。

自分をいじめたり、反対したり、無視したり、傷つけてくるのも人ですが、ほめてくれたり、才能だと言ってくれたり、価値を見出してくれて、自分が成長する機会を与えてくれるのも、また人なのです。

いつか、自分とすごく気の合う人と偶然出会える確率を上げる、“コミュニケーションの福祉機器”を、私はつくりたいと思っています。

「将来なにになりたいか?」は意味のない質問

生まれてから一度くらい「将来なにになりたいか?」と考えたことはあるでしょう。野球選手、銀行員、ユーチューバー、アニメ声優、政治家、ファッションデザイナー、アナウンサーなど、いろんな「職業」がありますが、時代の変化が激しいいま、これからすごく苦労してなりたい職業につけたとしても、仕事の内容が変わってしまったり、その仕事自体が無くなっていたりするかもしれません。

だからこそ「なにになりたいか」ではなく「なにがしたいのか?」を考えることはとても大切です。なにがしたくて大学に入るのか、なにがしたくて〇〇になりたいのか。「これがしたいから」と信じるものがあると、迷ったときの助けになりやすいです。

あなたの心を一番おどらせるのは、どんなときでしょうか。誰かに料理を食べてもらっているとき、絵をほめられたとき、ひたすら工作をしているとき、文章を書いているとき、謎に挑んでいるとき、大勢の前でスピーチをしているとき、人を笑わせているとき、人の悲しみを聞いてあげているときなど、きっとそれぞれでしょう。

あなたがすでに気づけているなら最高ですが、もしまだなら時間をかけてもいいから、いろんな世界を体験し、自分の目で「したいこと」を見つけてほしいと思います。自分の「したいこと」で生きていけるほど、世の中は甘くないしと思うかもしれません。たしかに昔はそうでした。でも今はネットがあります。

あなたが「したいこと」を続け、発信を続けていれば、地球の裏側からでも、あなたのそのユニークな仕事にお金を出してくれる人が現れる可能性があります。人の「能力」は、その人が持つ力そのものだと思われがちですが、実際は”喜んでくれる人がいるかどうか”です。喜んでくれる人を見つける事は才能を開花させる事と同義です。

覚えておいてほしいのは、これから「したいこと」で生きていくためには、「この人にやってもらいたい」「この人につくってもらいたい」と思ってもらえるような“他人との関係づくり”が大切になります。世の中は無情で合理的な方向に進んでいると思いがちです。

ところが私たちは安い店よりも、友人が営む店を選んで食事をします。少しくらい遠くても顔なじみの美容院へ行くし、長年かかりつけの町医者に通いますよね。

つまり関係性さえあれば、腕は一流じゃなかったとしても、ただの趣味で“プロ”ではなかったとしても、「今度のキャンプでごはんを担当してくれない?」「ギターを演奏してほしい」といった依頼を受けることがあります。そのとき相手はプロの味や演奏を求めているのではなく、”あなた”にやってもらいたがっています。趣味からはじめ、喜ばれ、ほめられながらスキルアップし、少しずつお金を得る。そんなふうに「自分と気の合う人たちを見つけ、その人たちと生きていく」ということを、意識してほしいと思います。