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東大教授が教える「頭のいい人」のスゴイ思考習慣

頭のいい人は思考習慣を身につけている

VUCAの時代において、人は不安や混乱を招きやすくなっています。「正解」という出口のない迷路をさまよっているようなもの。しかし、世の中が複雑になって「どうしよう?」と不安ばかり感じて立ち往生する人もいれば、「面白そう! 自分次第でチャンスを掴めるぞ!」とワクワクしながらチャレンジを楽しむ人もいます。あなたはどちらのタイプに近いでしょうか?

私はこれまでに、高速道路や空港での混雑緩和、サウジアラビアにおける聖地巡礼者の混雑解消、トヨタの「カイゼン」で有名な山田日登志さんなどとご一緒したモノづくりの現場での作業効率改善など、さまざまな分野の難題解決に尽力してきました。

こうした仕事を通して気づいたことは、「どんな困難も諦めずに考えれば乗り越えられる!」ということです。「考える力」こそ、どんな時代も生き抜いてきた人間の最大の強みなのです。

ところが、この「考える力」を最大限活用している人と、まったく使いこなせていない人がいるのも事実。「考える力」を発揮している人のほうが、成功を手に入れやすい頭のいい人であることは言うまでもありません。

頭がいい人は、ただ「考える」だけでなく、「考え続けている」のです。これは、筋トレやマラソンのような運動と同じで、鍛えれば鍛えるほど力がつく「考える体力」とも言えます。何か問題に直面したとき、考えることをやめてしまえば、そこで終わりです。

しかし、考え続けている限り、思考は広く、深くなり、最良の答えに近づくことができます。さらに考え続ければ、その答えをどんどん発展させていくこともできるのです。

私はこの考え続けるために必要な“7つの考える力”を、身体の「体力」になぞらえて「思考体力」と名づけました。

【思考体力】
1.自己駆動力:能動的に考える力
2.多段思考力:常に思考の階段のもう1段先を考える力
3.疑い力:あらゆることを疑ってみる力
4.大局力:全体を俯瞰(ふかん)して見る力
5.場合分け力:物事を分類して選び取る力
6.ジャンプ力:思考の階段を何段も飛ばす力
7.微分思考力:物事を細分化して考える力

いかがでしょうか? あなたはこれらの力が身についていますか? 

思考体力を鍛え、思考体力を使って考え続ける「思考習慣」が身についているかどうかがわかるチェック項目があるので、こちらもご紹介しましょう。

〈要注意項目〉
1.やりたいことがない
2.自分の将来のために何をすればいいのかわからない
3.何事も短絡的に考えてしまう
4.いつも途中で挫折してしまう
5.正確な情報を得ることができない
6.ケアレスミスが多い
7.騙(だま)されやすい
8.段取りが悪い
9.気が利かない
10.目先の利益にとらわれて損をする
11.選択を間違える
12.困ったとき、打つ手が考えられない
13.落ち込んだとき、立ち直れない
14.集中できない

1つでも当てはまるものがあった人は、要注意です。なぜなら、上記の14項目は「思考習慣」が身についていないことが原因で起こるからです。

転職や副業を考えている人も、「思考習慣」があれば社会に求められる人材になれます。生き方や働き方に迷っている人も、人間関係で悩んでいる人も、「思考習慣」があれば、解決の糸口を見つけられるはずです。

「考え続ける人」と「気合い系の人」

やりたいことや働き方、生き方などにおいて目標が決まれば、あとはやるべきことをやるだけです。そう思って、行動に移す人には、典型的な2つのパターンがあります。それは、「考え続ける」か、「考え続けない」かです。

先日、その違いがよくわかる場面に遭遇しました。あるセミナーで、「地域活性化のためにどうやってお客を呼び込むか?」という課題について議論をしていたときのこと、話し合いの席にいた方々は、思考習慣がある人とない人に、はっきり分かれていたのです。

「エリアAで新規開店した店舗にどうやって人を集めるか?」といった話題になったとき、思考習慣のない人は、「わかった。俺に任せろ。お店の前で『いらっしゃいませ!』って大声で叫んでお客を呼び込むから」と言います。いわゆる、「気合い系」の人。

それを聞いた別の人は、まったく違う話を始めました。お客がお店に入ってくる場合、次の3つの行動パターンに分けられると言うのです。

【お店に来るお客さんの行動パターン】

  • 1.情報収集をしてどこのお店に行くか探してから来た人……情報収集タイプ
  • 2.たまたまお店の前を通りかかって、そのお店が入りやすそう、美味しそうと思って入って来る人……ふらっとタイプ
  • 3.前にお店に来たことがある人で、また行きたいと思ってくれたり、もらったクーポンを使うために来てくれる人……リピートタイプ
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気合い系の人と比べると、思考体力の「7.微分思考力」のレベルがまったく違います。

思考習慣があるかどうかで差がつく

さらに、お客を増やすために次のようなタイプ別の対策が必要だと説明され、「2.多段思考力」もあることがわかりました。

【お客さんを増やすタイプ別対策】

  • 1.情報収集タイプ……WEBアプリの開発とホームページへのアクセス数を増やす工夫が必要
  • 2.ふらっとタイプ……駅前でチラシを配ってお店の存在を知らせることが必要
  • 3.リピートタイプ……ポイントカードやクーポン、口コミ評価で割引するなどのサービスで顧客ならではのお得感を高めることが必要
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こうしたマーケティング戦略を成功させるためには、インターネット上にあふれる情報の中でお店を検索してもらえる工夫や、駅前のどこでチラシを配ればいいのかを見極める「4.大局力」が必要です。

「ふらっとお店に入ってもらうお客を増やすために、店構えやメニューは今のままでいいのか?」といった「3.疑い力」で、ブランディングも考えなければいけません。

思考習慣があれば、やるべきことがこのように具体化するのです。地域活性化のためにお客を増やしたいという目的は同じでも、呼び込みの1段しか手段を考えられない人と、客層別の対策まで数十段に分けて考えられる人とでは、結果的に大きな差が出ることは言うまでもありません。

身近なところで言えば、部屋の片づけも同じです。物がごちゃごちゃ積み上がっている散らかった部屋は、ぱっと見ただけで片づける気などなくなるでしょう。

では、玄関だけ、廊下だけ、ベッドだけ……と部屋の中を細分化したらどうでしょうか? 「そこだけならなんとかなるかも……」という気になりませんか?

0か100か、白か黒かの2択で考えると、もう片づけは諦めて汚部屋に住み続けるか、業者に処分を頼んで新しい部屋に引っ越しするか、といった短絡的な発想になりがちです。

時間も場所も関係ない

そんなときも思考習慣が身についていれば、「2.多段思考力」と「7.微分思考力」で1つひとつやるべきことを具体化して実行し、目標達成することができるのです。

「思考体力」を使って考え続ける「思考習慣」を身につけることができれば、失敗も、挫折も、学びにでき、成功につなげることができるでしょう。

「思考習慣」を身につけることに、時間も場所も、まったく関係ありませんし、お金は1円もかかりません。忙しくて余裕がなかったり、面倒くさくなって考えることをいったんやめても、諦めずにまた考え続ければ思考習慣が身についていくのです。