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アウトドア「キャプテンスタッグ」の意外な来歴

インスタントラーメンでいえばカップヌードル。スニーカーだったらコンバース。サーフボードはドナルド・タカヤマ。ロイホで迷ったらコスモドリアが鉄板……etc.。

キャンプ用品にも、「外さない鉄板ブランド」がいくつか存在する。なかでも、高い品質と手頃な価格を両立させた抜群のコスパを誇る選択肢が「キャプテンスタッグ」だ。

「アメリカで見たBBQを日本でも再現したい」

キャプテンスタッグは、金物の町・新潟県三条市を拠点とする家庭用品メーカー、パール金属株式会社のアウトドア部門として1976年に誕生した。

現在は調理器具から収納用品にいたるまで、家の中にあるものは何でも揃うほど、幅広い製品を手掛けている。

キャプテンスタッグ設立のきっかけは、社長の高波文雄氏がアメリカの市場調査に赴いた1975年のこと。大型グリルを使って、公園でBBQを楽しむ家族を見て衝撃を受けたことに端を発する。

「日本でも、このBBQを再現したい」。

当時の日本にBBQ文化はまだなく、アウトドアで食事をするのは花見くらいだった時代。

もちろん、BBQ用の網など存在しない。最初は玄関用の金属マットを網代わりにして、河川敷でレンガを囲炉裏型に組んで肉を焼いていたらしい。

以降はBBQコンロの開発に明け暮れる日々。日本ならではの需要に合わせ、コンパクトに収納、携行できるようにするなど、アイディアを盛り込みながら試行錯誤を続けた。

そして、’76年ついに『ジャンボバーベキューコンロA型』を発売。記念すべき、キャプテンスタッグ製品第一号の誕生である。

上ふたつは旧ロゴである(写真:OCEANS編集部)

ちなみに、この発売を機にスタートしたブランド名には、牡鹿(スタッグ)が冠されている。

群の統率を図り、安全な場所へと導く大切な役割を果たす牡鹿のキャプテン。そこには「大自然の中で頼りになるリーダーになりたい」という想いが込められているそうだ。

独自性、品質、価格。どれも諦めないものづくり

『頂点を目指そうとするあまり、保守的な発想へ傾きかけたり、造作にこだわりすぎて価格的に手が届かなくなってしまっては、存在する意味がない』。

これは、創業当初から現在まで、彼らが掲げ続けるブランドコンセプトだ。

ユーザーからの声を積極的に取り入れ、独自の機能や構造を追求しつつ、誰もが手に取りやすい価格に抑える。

簡潔にいえば、独自性と品質、価格のバランスを追求する。言うのは簡単だが、これを実行し続けるのは想像以上に難しい。

しかし、キャプテンスタッグが手掛けてきた製品の歴史を振り返ると、彼らがいかにこのコンセプトに向き合い続けてきたのかがよくわかる。

例えば、今やキャンプサイトでは当たり前の光景になっているロースタイル。このスタイルが生まれるきっかけとなったのは、’95年に発売した「オリバー ツーウェイテーブル」だ。地面にシートを敷いて食事をする花見でも使えるサイズとして考案されたのだ。

同様に、1994年に発売した「ラニー メッシュタープ」は、側面にメッシュを配する構造を初めて採用したタープである。

これまた、日本のキャンプシーンならではの虫除け問題に対応するために、伝統的な「蚊帳」をアイデアソースに生み出した形だった。

同社を代表するロングセラー商品「アルミロールテーブル コンパクト」も、トレッキングやツーリングなど、日本ならではのニーズに対応するために作れらたもの。

独創的な発想力から生み出されたこれらの製品は、どれも高い品質と手にしやすい価格を両立している。

多くのユーザーに届けることによって、現在のキャンプシーンの基盤を形成してきたと言っても過言ではない。

現在の製品ラインナップは約2万点!

 

45年前にBBQコンロからスタートした彼らの製品は、2021年現在は約2万点もの製品を展開する規模にまで成長を遂げた。

その展開はキャンプ用品にとどまらず、自転車やカヤック、SUPなどの開発も手掛けている。

’16年には40周年という節目を迎え、近年のアウトドアスタイルを鑑みた新しい提案の形としてプロダクトブランドをいくつか設立している。

質とデザインを求めるナチュラル志向のキャンパーへ向けたシリーズ「CSクラシックス」。都会的でスタイリッシュな空間を演出するブラックカラーでまとめた「CSブラックラベル」。野外フェスなどにもマッチする遊び心あるデザインが魅力の「キャンプアウト」。

どれもキャプテンスタッグとしての基本的な方向性は変えずに、品質と価格のバランスを第一に考えた、手頃な製品を継続して展開している。