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新入社員は「Excelを覚える」が即戦力の近道だ

 

利用頻度が最も高いソフト

ジャストシステムが毎年、会社員を対象に行っている「業務標準化に関する実態調査」の2020年版の結果によると、業務で利用するソフトは、Excel 73.0%、Word 65.3%、PowerPoint 44.6%の順になっている。

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ただ「最も利用頻度が高い業務ソフト」に絞るとExcelが70.3%で、Word(14.5%)やPowerPoint (7.3%)以下を圧倒している。デスクワークが基本の仕事であればほぼExcelを使うことが必須といえるだろう。

なぜ、Excelを使うかというと、ビジネスの現場では、お金や商品の数量など数字を扱うことが日常茶飯事。それらの計算や集計に表計算ソフトが欠かせないからだ。

実際、「パソコン教室わかるとできる」が2016年に実施した調査によると、Excelの用途のトップは「データ分析」で、以下、「見積書、請求書の作成」「業務報告書の作成」「売り上げ管理」「発注書、納品書の作成」と続く。

新社会人にとって、この普段から使うことになるExcelのスキルを早くから身に付けておけば、先輩社員から評価も高まる。即戦力と認められるには、Excelのマスターが近道だ。

では、このExcelを先輩社員たちはどのようにしてマスターしているのか? Excelに使い慣れているビジネスパーソンに聞くと「先輩に教わった」「必要に迫られて覚えていった」という声が多かった。Excelのノウハウ本などを読まずに、独自に覚えていくのが主流で、必要な関数などは業務で困った際にネットで検索して使っていくという。

しかし、それだけでは目の前の業務のための機能だけしか使わないため、ほかの多彩な機能は覚えられないままになってしまう。請求書や納品書の処理に携わる仕事が多い人は、複雑な表計算や関数を使いこなせるようになるが、グラフ作成はまったく触れたことはないというケースは少なくない。あるビジネスパーソンからは「それだけでは自己流で覚えている部分も多く、しっかりと勉強した方がいい」という声が上がった。

ではどうやって、Excelをマスターしていけばいいか。

ExcelやWordなどパソコンスキルの解説動画をYouTubeで配信し、そのチャンネル登録数は70万を超えるYouTuberの金子晃之氏は、「時間をかけて少しずつ学ぶよりも、数日間で一気に学んだほうが上達は早い。数字やデータに苦手意識がある人もいるかもしれないが、小学校で習う四則計算や分数、小数の計算がわかればExcelは使えるようになる」と語る。

さらに、学んだことを実務に当てはめて覚えていくと上達の実感も得られやすいという。

進化するExcel

また、Excelはバージョンアップの度にどんどん機能が進化していっている。そのフォローも重要だ。

たとえば、使えればVLOOKUPという指定した範囲の中から、検索条件と一致するデータを検索し、その同じ列にある数値や文字を引っ張ってくる関数がある。

マスターできれば中級者レベルとわれる関数のひとつだが、これの進化版となるXLOOKUPという関数が、サブスクリプションモデルである「Microsoft 365」のみであるが使うことができる。VLOOKUPは一致させたい文字列を最初の範囲の最初に列に置くなど、決まりごとが多かったが、XLOOKUPはそうした制約がかなりなくなり、自由度と効率性が増している。

また、グラフや分析機能についても、「Excel 2016」から、業績の増減分析をする歳につかわれる「ウォーターフォールグラフ」や、過去のデータから推計予測ができる「予測シート」などが加わっている。

社員クチコミサイトを運営し、企業の評価・分析も行っているオープンワークの大澤陽樹社長は、「経営などの分析ならExcelで十分。わが社もほぼExcelしか使っていない」と語る。予測推計などは、かつては「R」などの統計ソフトを使わないと行えなかったが、Excelでもできる分析が増えているという。

このように新しい機能をフォローしていかないと、効率化を図れないし、自分のスキルも陳腐化しかねない。まずは、Excelでどんなことができるかを把握していくことが重要だが、その後は定期的にExcelについて学び直す機会をつくっていくことも大事になってくる。