コロナ変異株ついに「ネズミ」も感染した不安

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ひでどん(@komatu00713)です。

コウモリ、サル、ミンク、ネコ、大型類人猿……。新型コロナウイルスはヒト以外にも多くの動物に感染することがわかっているが、そのリストに今度はネズミが加わった。不安をかき立てる研究結果だ。

ネズミ(げっ歯類)の感染は人間に差し迫った危険をもたらすわけではない。この点は、そこら中にネズミのいるロンドンやニューヨークのような大都会でも変わらない。

南アフリカ型とブラジル型が獲得した「新たな能力」
そうだとしても、この発見は気がかりだ。専門家によると今回の研究は、従来の研究結果と並んで、新型コロナウイルスが変異によって一段と幅広い動物種に感染する能力を獲得しつつあることを示唆するものだという。

「ウイルスは変化し続けている。残念ながら、その速度はかなり速い」と今回の研究には関与していないノースカロライナ大学チャペルヒル校のウイルス学者ティモシー・シーハン氏は語る。

実験用マウスの鼻腔にウイルスを入れた今回の研究では、中国の武漢で最初に検出された従来型のウイルスと現在ヨーロッパで感染が広がっている変異株「B.1.1.7」のどちらにもマウスは感染しなかった。

ところが、南アフリカとブラジルで発見された「B.1.351」と「P1」の変異株には感染しうることがわかった、と研究を率いたパスツール研究所(フランス)のザビエル・モンタギュテリ博士は話す。博士は獣医学者でマウス遺伝学が専門だ。3月にインターネット上で発表された同研究は、学術誌の査読をまだ終えていない。

今回の研究結果は、ウイルスがネズミに感染する可能性があることを示しているにすぎないという。捕獲した野生のネズミから新型コロナに感染した個体は今のところ見つかっていないし、ウイルスがヒトからネズミに感染したり、ネズミからヒト、ネズミからネズミに感染したりする能力を持っている様子もない。

「私たちの研究結果によって強まったのは、ウイルスが感染する動物種の範囲を定期的にモニターする必要性だ。新たな変異株が生まれているとなれば、その必要性はなおのこと強まる」と博士。

新型コロナはコウモリから発生し、別の動物が中間宿主となってヒトに感染したと考えられており、科学者はいわゆる「動物の貯蔵庫」にウイルスが再び還流する展開を危惧している。

 

それでもシーハン氏を含む専門家は、今回の研究によってウイルスの急速な変化を注意深く監視する必要性が強まったと口をそろえる。シーハン氏が言う。「動く標的のようなもので、厄介このうえない。私たちにできるのは、ワクチン接種を大急ぎで進めることだけだ」。

動物の中で「危険な変異」が加速新型コロナが別の種に広がると、その動物集団に壊滅的な打撃を与える可能性があるだけではない。危険な変異を遂げて、現在のワクチンでは対応できない変異株がヒトに再感染する恐れがある。

ヒトから新型コロナに感染し、そのウイルスをヒトに感染させる可能性のあることがわかっている動物は、これまでのところミンクだけだ。昨年11月上旬、デンマーク政府はミンクに感染した新型コロナが危険な変異を遂げるのを防ぐため、毛皮採取用に飼育されていたミンク1700万匹の殺処分を命じた。

最近の研究では、ペットのネコとイヌに感染した変異株「B.1.1.7」が、ヒトの感染者と似た心臓障害を引き起こす可能性のあることがわかっている。

新型コロナが感染に成功するには、動物の細胞表面にあるタンパク質と結合して細胞の中に入り込み、細胞のメカニズムを利用して自らを複製しなければならない。感染を阻止しようとする免疫系の初期攻撃をかわす必要もある。

こうした諸条件を勘案すると、新型コロナがこれほど多くの種に感染できるというのは「極めて驚くべきことだ」とアメリカ国立アレルギー感染症研究所のウイルス専門家ヴィンセント・マンスター氏は話す。「通常、ウイルスの宿主はもっと限定されている」。

ネズミはハンタウイルスの宿主であることがわかっており、そのハンタウイルスはヒトに感染すると死亡率の高い珍しい疾患を引き起こす。新型コロナの変異株はネズミからヒトには感染しないようだが、それでもげっ歯類の間で広がって新たな変異株に進化し、再びヒトに感染する可能性はあるとマンスター氏は指摘する。

変異株はクロアシイタチのような絶滅危惧種にとって絶滅の脅威となる恐れもある。

警戒すべき、さらなる「想定外」
「このウイルスはどうやら、これまでに存在したどのウイルスよりも私たちを驚かせる能力を持っている」とマンスター氏。「私たちは慎重すぎるくらいの安全策をとらなくてはならない」。

ノースカロライナ大学のシーハン氏がヒトへの感染を懸念しているのは、ネズミよりも家畜やペットだ。

 

「ネズミを家の中で捕まえて抱き寄せて、ペットのネコやイヌにするように顔を近づけて同じ空気を吸い込んだりする人はまずいないだろう」とシーハン氏。「私としては(ネズミよりも)人間ともっと親密な関係にある動物のほうが心配だ」。