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結局、「才能より人脈」で人生が決まる納得理由

どうしても気が重くなる「見知らぬ人との会話」

春──。新しい職場や学校で知らない人と話す場面も増える時期ですが、「見知らぬ相手と話すのは気が重い」という人はいませんか?

コロナ禍で少なくはなりましたが、異業種交流会やパーティー、飲み会などの席も「気疲れするし、好きではない」と感じる人もいるようです。

そもそも、人間は「知らない他人=敵」とみなし、自分を守ろうとする防御本能から、身構えてしまう傾向があります。

そういった席で、誰かに近づいて話しかけようとするときに、なんだか自分が「いかがわしい」「汚れた」ような意識を感じることはないでしょうか?

あの『もやもや感』はいったい何だろう」と私自身も、ずっと不思議に感じてきたのですが、その感覚を学術的に実証した論文を最近、発見しました。

タイトル名もずばり「ネットワーキングはなぜ我々にダーティーな感覚をもたらすのか」という、ハーバードビジネススクールの教授らの研究です。

その研究によると、「仕事を見つけるための人脈作り」などの目的をもったネットワーキング行動において、人は「道徳的で純粋であるはずの『自分』を汚しているような意識」を感じやすいのだそうです。

研究では、権力、パワーをもった人、つまり「有名で地位が上の人」は、その居心地の悪さは感じにくく、「地位が低い人」ほど不快感を覚えることが指摘されています。

権力がある人は「(話す)機会を与えている立場」で、ない人は「与えられる立場」という意識が働くのかもしれません。

いずれにしても、「人脈」「ネットワーキング」といった言葉にどこか、「うさんくささ」を感じてしまうのは、こうした心理が働いている可能性があります。

「クラブハウス」にも多い「人脈自慢」の人たち

私は、人の心を動かすコミュニケーションの研究をしているので、時折、「話がうまい」と言われる人のトークを聞きに、“フィールドワーク”に出かけます。

(自称)カリスマ投資家」や「啓発系のリーダー」など、かなり怪しげなのですが、大勢のファンがいる人。彼らが、よく使う説得術のひとつが「人脈自慢」です。

そういう人たちに限って、元首相などとのツーショット写真を映し出して、「いかに自分が有力者とつながっているのか」を喧伝します。実業は何をしている人なのかわからないけれど、人脈だけで食べているような人も中にはいます。

あるとき、そんな人が主催するパーティーに行ってみると、目がくらむほどダイヤモンドが埋め込まれた大きな時計をした青年が「人類を救う」と息巻いていたり、マダムたちが独自の美容法や美容サプリを一生懸命にアピールしたりしていました。

サラリーマン社会ではまったく出会う機会のなかった「意識の高い」人たちが、成功のカギを求めて、「人脈作り」にいそしむ姿に圧倒されました。

最近、はやりの音声ソーシャルメディア「クラブハウス」でも、「人脈自慢」派の人たちが、徒党を組んで、「布教」活動をしている姿も目立ちます

そうした「人脈自慢」をする人や、臆面もなく強者にすり寄り、近づこうとする人に鼻白むところがあるかもしれません。

しかし、「人脈」を「汚いもの」として、馬鹿にしていると、馬鹿を見ます。なぜなら、実は人の成功や幸福は、「実力や努力」といったものより、「人間関係構築力」に大いに影響されるものだからです。

芸能人でも、起業家でも、コネクションが、その成功の決め手になることはよくあることですし、芸術家でさえ「その『才能』よりは『人脈』で世に出るかどうかが決まる」という研究があります。

コロンビアビジネススクールの教授が行った研究では、「才能に関係なく、幅広く多様なネットワークをもったアーティストが最も有名になりやすい」という結果でした。

「何を知っているか」より「誰を知っているか」

英語で「It’s not what you know, but who you know(何を知っているかより、誰を知っているか)」という言葉がありますが、これはまさに真実。

サラリーマンは、あまり必要性を感じないかもしれませんが、「人生100年時代」を会社に頼らず生きていく「個の時代」には、まさにこの「つながる力」がモノを言うのです。

Your network is your net worth(あなたのもつネットワークこそがあなたの純資産)」、つまり「『人脈』こそがあなたの価値そのもの」というわけです。

とはいえ、「自分の利益のために相手を利用している」「計算高い」「図々しい」などと思われたくはない! と、ついつい遠慮がちになってしまう人はどうすればいいでしょうか

ここで「人脈」を作る3つのコツをお教えしましょう。

1つめのコツは、「自分を利する」のではなく「相手を利する」ことを考えるということです。

人は「自分の話をしたい生き物」。相手を主役に

【コツ①】話しかけるのは「自分を利するため」ではなく「相手を利するため」と考える

人は基本、「自分の話をしたい生き物」です。ですから、「話を聞いてあげる」ことは、「相手を気持ちよくしてあげる行為」なのです。

「自分が話をしよう」と意気込むより、「相手の話をじっくり聞いてあげよう」という気持ちで質問をし、興味をもって話を聞いてあげればいいのです。相手にとって、こんな嬉しいことはありません

「自分を利するため」という罪悪感を覚える必要はまったくないのです。自分同様に、なかなか話しかけられず、話しかけられるのを待っている人も大勢います。

あなたが話しかけることは、相手にとって「メリット」でしかない、むしろ「人助け」をしているということを忘れないでください。

「お話、感銘を受けました」「どちらからいらっしゃったんですか」「どこのご出身ですか」。相手を主役に、まるで「ヒーローインタビュー」をするように話しかけてみましょう

【コツ②】「何かを得よう」ではなく「何かを提供する」ことを考える

相手の興味や関心のない話や、いきなりお願いごとをすれば、迷惑になる可能性があります。

まずは「相手から何かを得よう」とか「何かをしてもらおう」と考えるのではなく、「自分が相手に何をしてあげられるか」を考えてみましょう

相手の役に立つことは何か、相手のニーズや願望、関心などを見極め、自分が提供できるものを探りましょう

 

「何かお手伝いできることはありますか」「何か困っていることはないですか」「何かあったらいつでも声をかけてくださいね」などといった言葉を嫌がる人はあまりいないでしょう。

3つめのコツは「『会う人すべてが師匠』『学びの機会』と捉えること」です。

【コツ③】「会う人すべてが師匠」「学びの機会」と考える

会う人すべてが私の師匠」。これが私の人生訓です。

ネットワーキングを、「相手の時間を奪って悪いな」と感じるのではなく、「学ばせてもらう機会」として捉えるのです。人は誰でも語るべき経験やストーリーを持っています。

「今どきの子どもは何が好きなんだろう」「最近の就活トレンドってどんな感じだろう」「リモートワークについてどう思っているのかな」など、誰に向き合っても、興味をもち、問いかけることで、新しい知識を得ることができるのです。

あなたが話すとき、あなたはすでに知っていることを繰り返しているにすぎない。でもあなたが耳を傾ければ、あなたは何か新しいことを学ぶでしょう」。これはダライ・ラマの言葉です。

「とても勉強になりました」「面白いですね」「参考になります」と、感謝の気持ちをもって、相手から何かを学ぼうとする姿を見せましょう。

ちょっとした一言が「印象」と「次の出会い」を左右する

質の高い人脈は「転職」「昇進」「昇給」に大いに関係しますし、「イノベーション」「コラボレーション」「創造性」、さらに「健康」「幸福」の決め手となります。

もちろん、才能や努力なしでは話になりませんが、「頭の良さより『好感度』で人生が決まる納得理由」の記事の中でも詳述したように、結局のところ、「人たらし力」「人とつながる力」によって、成功のチャンスは大きく広がることは間違いありません。

知らない誰かと話すことは勇気がいることです。しかし、「自分の快適空間から一歩、踏み出してみること」から「成長」は始まります

そして本記事で解説したように、「人脈」を作っていけるかどうかは「話し方」が非常に重要になります。「何かあったらいつでも声をかけてくださいね」「とても勉強になりました」「参考になります」などのちょっとした一言が、「あなたの印象」と「次の出会い」を大きく左右するのです。

 

「話し方」を変えれば、人生は大きく前進していきます。ぜひ、「人脈作りにつながる最高の話し方、ちょっとした一言」を身に付けることで、「素敵な出会い」を重ね、実りある人生を手に入れてください。