「絶対安心」な銘柄はない
コロナ禍には、家で過ごす時間が増えました。ユーチューブやネットフリックス、またはアマゾンのプライムビデオで動画を観たり、iPhoneでGメールやSNSをチェックしたり。
ご存じのとおり、ユーチューブはグーグルの、インスタグラムはフェイスブックの傘下企業です。そのように考えると、私たちは日常のすべてを「FAANG」に頼っていることに気づかされます。
FAANG(ファング)とは、Facebook / Amazon / Apple / Netflix / GoogleのIT巨大企業5社の頭文字をあわせた造語です。日本では、ネットフリックスを除いたGAFA(ガーファ)という呼び方が一般的に知られています。
いま世間では、コロナ禍でも業績が堅調だったこのFAANGを中心とした「米国株式」の投資ブームが起きています。ネット広告でも目にする機会がかなり増えました。この5銘柄の時価総額を合わせると、日本の東証一部の上場銘柄、二千数百社の時価総額とほぼ同じです。これは1980年代後半に、JR山手線の内側の不動産価格でアメリカ全土が買えると言われたことがあったのとよく似ています。
「株式」だけではありません。FAANGの銘柄をすべて含んだ「投資信託」もやはり人気です。米国株式を投資対象とした投資信託銘柄も、たくさんリリースされているのです。たしかに、株式市場が「FAANG頼り」になっている点は否めませんが、ここに投資していれば安心というわけではないという点は知っておいたほうがいいでしょう。
FAANGのような桁外れの時価総額をたたき出している企業が、リーマンショックのときにやり玉に上がったウォール街の金融機関のようにバッシングされる可能性もゼロではありません。
何らかの理由で大きく落ちることもあるので、「絶対安心」な銘柄はないのだと思ってください。むしろ私の目には、この現象こそが「バブル」そのものに映っています。株価というものは上がったら、必ずいつか落ちるもの。それは株式の歴史が証明しています。
また、もうひとつ大切なことは、人気になっているということは、そもそもその時点でたくさんの人が商品を買っているということ。冷静に考えれば、すでにブームの後追いになっていて、相場よりも高くなっているものを買わされるのだという点を注意しましょう。
「米国株式投資」について、たくさんの人が成功しているとか、億単位の資産ができるとか、投資に興味がある人なら、さまざまな噂や甘い話を耳にしているのではないでしょうか。
そのような話を聞けば、よし自分もやってみよう、と考える人もいるかもしれません。けれど、ちょっと待ってください。「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、以前こんな話をしていました。
全米で「じゃんけん大会」をやったとします。アメリカ人3億人が、ひとりにつき1ドルコインを握りしめている。2人一組になってじゃんけんをする。勝った人は相手から1ドルをもらえて、持ち金が2ドルになります。
今度は勝った人同士でじゃんけんをして、勝ったらその人が持っていた2ドルをもらう。そこでも勝ったら、次の人と対戦して、また買ったら4ドルをもらう。これを二十数回繰り返すと、億万長者になる人が100人か200人ぐらい出るそうです。
その勝った人たちは「億万長者になれるじゃんけんの勝ち方」という本も出せるかもしれません。でも、その人の話をあなたは聞きたいと思いますか? 真似したいと思いますか? それはただの運で、何か特別な才能があるわけではないのです。「投資の世界は実力がなくても運で億万長者になる人もいるのです」というのがバフェットの言いたいことでした。
生半可な知識で勝つのは難しい
これがスポーツの世界であれば、草野球レベルの人がプロ選手相手に勝てるわけはないと、誰もがわかります。たとえば、メジャーリーグのダルビッシュ有選手の投げる凄まじいボールは、素人ではバットに当てることすら困難でしょう。または、将棋を始めて3~4年の人が、あの藤井聡太さんに勝てるとは思わないはずです。
他のあらゆる業界でも素人がプロには勝てないとすぐにわかるのですが、なぜか金融業界だけは素人がプロに勝てる気になってしまう世界なのです。
株式市場にしろ、不動産にしろ、外貨にしろ、数千人、数万人のプロの機関投資家が戦っている世界です。その人たちは蓄積されたノウハウや最新のAI技術などを駆使しながら、世界中の市場の分析や情報収集に明け暮れ、莫大な資金を動かしています。
証券会社の「中の人」だった私だからこそ、そんな人たちに生半可な知識で勝つのは難しいとわかっています。とにかく、アレやコレをすれば「億り人」になれるといった話は、「全米じゃんけん大会」と本質的に変わりません。ですから、お金の不安から一生自由になり、着実に資産を築くためには、そういった話はまったく気にしなくていいのです。
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