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トップコンサルも重宝!「おでん図」のすごい力

おでんの正体はビッグ・ピクチャー

私が、最初に「ポンチ絵」に出合ったのは、まだ私が駆け出しのコンサルタントの頃のこと。

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ホワイトボードに図を描いて議論を前に進めることが得意なベテランコンサルタントがいました。その人の描いていた図がポンチ絵でした。

みんなはそのポンチ絵のことを「おでん」と呼んでいました。その形がおでんに似ていたのです。

□が現状。〇が目標。△が道筋です。そしてみんながそれぞれに思ったことを述べ、ベテランコンサルタントが、その意見をこの「おでん」の中に書き込んでいくと、なぜかその議論がうまくかみ合い、この「おでん」の中に収まっていく。

そして、気付くと問題解決の道筋が見えてくる……。そんな不思議な感覚でした。

出所:『武器としての図で考える習慣』

なぜ、こうもうまく議論がかみ合っていくのか? その理由は、この「おでん」は、現状からあるべき姿に至るまでの「ビッグ・ピクチャー」だったからです。全体像だから、どんな議論でもうまく吸収できる。関係性もハッキリわかる。そんな感じです。ちなみに、ヨコ軸は時間、タテ軸はものごとのレベル感です。

「おでん」がビッグ・ピクチャーだったからこそ、つまり、各論や細部にとらわれる若手コンサルタントが見失う全体像だったからこそ、この「おでん」には大きな意味があったのです。

空白にうまみが隠されている

また、おでんの余白(汁にあたる部分ですね!)は新たな気づきのヒントにもなります。余白を見るということは、何か抜けていないかと、図を「健全に疑ってみる」ことにつながり、新たな切り口や新たな要素を強制的に思いつくためのきっかけになるからです。

余白が発想を刺激する。その余白に新たな着想が書かれていく。これは、余白が発想を広げることを支援し、新たな着想が図を豊かにしていくという好循環です。

例えば子どもが小学校の高学年になって、将来を考え始めたとき、描く「おでん」は次の図のようになるかもしれません。

出所:『武器としての図で考える習慣』

そこで、余白をにらむのです。「いい大学に入る」ために、ただひたすら「大学受験のための勉強をする」しかないのかと……。

さまざまな視点で何かを無理やり思いつこうと努力すると、推薦入試やAO入試、あるいは海外に出て帰国子女枠を狙うという違った山の登り方が見えてくるかもしれません。

出所:『武器としての図で考える習慣』

ビッグ・ピクチャーやタテ・ヨコを意識しながら、自由に、シンプルに、思考の形を整えていくことができる。これが「おでん」のパワーです。

では次に、「おでん」の描き方を使って、キャリアプランを策定するプロセスをたどってみましょう。次のような状況を考えてみます。

今、あなたは日本のとあるメーカーに勤める30代の技術者。男性・既婚・子ども1人、です。仕事に大きな不満があるわけではないのですが、社会に出ていろんな世界に触れるにつれ、より大きな舞台、例えばグローバルなビジネスシーンでリーダーとして活躍したいという思いが強くなってきました。あなたは今後どのようなキャリアパスを選んでいくべきなのでしょうか。

この課題の大きな立て付けは、「現状→ありたい姿」。なので「おでん」が適していそうです。ヨコ軸を時間、タテ軸をキャリアのレベル感にするのが自然でしょう。右上が「グローバル企業で活躍するリーダー」、左下が「日本のメーカーの技術者」です。

このギャップを埋めようと「余白」をにらむと、いくつかの考えが浮かんできませんか。

グローバルだから外資系企業に転職? 将来のために事業立ち上げ経験を持つ? もっと身近なところでは英会話を習う、経営に関する勉強をする、いやいやしばらくは今の職場で頑張って後で考える? などです。

出所:『武器としての図で考える習慣』

練り合わせて新しい「具」をつくる

これらを眺めて、関連しそうなものを点線で「囲んで」みると、新たなアイデアが湧いてきます。例えば、経営と英語を「囲む」と、海外にMBA留学するという具体的な選択肢も思い浮かびます。経営と転職を囲むと外資系企業のみならず戦略コンサルティング会社への転職、あるいは、事業立ち上げと経営を囲んでみるとベンチャー企業へ転身、という選択肢も見えてきます。

出所:『武器としての図で考える習慣』

このように「おでん」を描き、余白を眺めたり、文字を「囲む」など手を動かしていくと、問題解決に向けた第一歩を踏み出せます。

ぜひ皆さんも、いちどお試しください。