「説得力のある人・ない人」は何が違うのか?
僕が検証した100冊の文章術をまとめた本のうち、実に38冊に、文章の「型」の重要性が書かれていました。「型」とは、文章の流れを示すパターンのことです。
「38冊」というのは、全40のポイントの中で「2番目」に多い(つまり重視している人が2番目に多い)冊数です。
文章のプロの多くは、「頭の中に浮かんだことを浮かんだ順番で書くより、型に合わせて書いたほうが、伝わりやすく説得力のある文章になる」と説いています。
① 「結論を先」に言う
文章のプロの多くが実際に使っている型の中でビジネスシーンに向いているのは以下の2つです。
・逆三角形型……「結論→説明」。結論を先に述べる。
・PREP(プレップ)法……「結論→理由→具体例→結論」。結論を述べたあと、結論に至った理由と具体例を述べる。
この2つはどちらも、結論を先に出しているのが特徴です。
結論を先に出すメリットは、次の5つです。
(1)「この文章は何が言いたいのか」が明らかになるため、情報を的確に伝えることができる。
(2)最後まで読まなくても概要がつかめるので、読み手の時間を取らない。
(3)「一番大事な情報」を先に書けばいいので、文章の「書き出し(導入部分に何を書くか)」に悩まない。
(4)文章を短くする場合も、「後ろ」から削っていけばいいので、結論を削らなくて済む。
(5)重要な情報を最初に提供するため、読み手の関心が高くなる。
同じ話を聞いたり読んだりする場合でも、まず結論を知ってから詳細を付け足すほうが、物事の全体像をとらえやすく、細部も理解しやすくなります。
②形容詞や副詞をなるべく数字に置き換える
次の2つの例文を見てください。
どちらの文章が、より説得力が高く、プロブラムの稼働を促せると思いますか?
例文A
プロジェクトの進行が、とても遅れています。原因を突き止め、できるだけ早くプログラムが稼働するようにしてください。
例文B
プロジェクトの進行が、2週間遅れています。原因を突き止め、8月2日にはプログラムが稼働するようにしてください。
例文Bのほうが「説得力がある」と感じた方が多いのではないでしょうか。
何かを説明する際によく使われる言葉として、形容詞や形容動詞、副詞があります。
・形容詞……名詞や代名詞を修飾する言葉。「熱い」「美しい」など「~い」で終わる。
・形容動詞……人やものの性質、状態、感情などをあらわす言葉。「満足だ」「静かだ」など「~だ」で終わる。
・副詞……おもに動詞、形容詞、形容動詞を修飾する言葉。「ゆっくり」「とても」「すごく」など。
これらは、「受け取る人によって幅の出る言葉」です。ある人にとって、「とても遅れている」は1カ月かもしれません。一方、スケジュール管理に厳格な人にとっては、1日の遅れを「とても遅れている」と感じる場合もあります。
明確に数字にすれば幅がなくなる
「幅のある言葉」は、ビジネスシーンではとくに避けるようにするといいでしょう。例文Bのように明確に数字化すれば、幅がなくなり、内容をはっきり伝えることができます。
先ほど僕自身も、文章の「型」の重要性が「100冊中38冊」に書いてあり、それは「全40のポイントの中で2番目に多かった」と書きました。
「100冊のうち、たくさんの本に文章の『型』の重要性が書かれていて、ランキングでも上位でした」
と書いた場合と比べて、説得力に差があったのではないでしょうか。
③「文章の見た目」を大事にする
説得力を増すための3つめのポイントは、「文章の見た目」にこだわることです。
見た目とは、紙面、誌面、画面の字面(文字を並べたときの印象)のこと。
100冊中36冊に、文章の見た目を整えることの重要性が書かれていました。
普段、文章を書いたり書き方を伝えていたりする立場から正直にいうと、「文章の見た目」を大切だという人がここまで多いのは、意外でした。
文章のプロの多くが「内容はもちろん、見せ方が重要である」と指摘しています。
なぜ「見た目」が説得力につながるのでしょうか。それは、「見た目」が「文章を読む気」につながるからです。
文字がぎっしり詰まっていて、段落分けも余白もない文章を想像してみてください。忙しい仕事のなかでは、読む気がすっかり失せてしまうと思いませんか?
漢字とひらがなの使い分けも「読む気」を左右します。
漢字が多いと文字の詰まりが助長されたり、堅苦しい印象になったりするため、さらに読む気が失せてしまいます。
「漢字よりもひらがなを多く」したほうが、親しみやすくてわかりやすい文章になります。
話のまとまり(段落)ごとに改行を入れたり、空白行を入れたりすることで、文章をパッと見た瞬間の認識のしやすさが改善します。
文字の読みやすさや頭への入ってきやすさも変わるので、説得力につながります。なお、「読みやすい文章の、ひらがなと漢字の割合」については、「ひらがな7、8割」「漢字2、3割」が、プロの総意でした。
説得力は、人を動かし、仕事を進めるエネルギー源
説得力を高めるコツとして、
1 「結論を先」に言う
2 「形容詞や副詞をなるべく数字に置き換える」
3 「文章の見た目」を大事にする
の3つをご紹介してきました。1と2は、文章に限りません。口頭での報告やプレゼンなどでも意識すると、説得力を増すことにつながります。つまり、見逃されがちなコミュニケーションの基本とも言えるのです。
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