確定申告を無視する人に襲いかかるヤバい罰則

会社員の場合、税金の支払いは会社がすべて担ってくれます。天引き後の手取り金額しか見ず、自分がいくら納税しているのか気にしていないという人も多いでしょう。しかし、フリーランスになったらそれは通用しません。確定申告も納税も、すべて自分でやる必要があります。

「ハードルが高い!」と感じるかもしれませんが、実は確定申告で100点をとれているフリーランスはほとんどいません。

フリーランスの所得税は「申告納税制度」といって、自分で税金を計算して申告し、納税をする仕組みです。税務調査が来たときが初めての答え合わせになります。ただし、税務調査は必ず来るわけではありません。フリーランスになった直後に来るという可能性は低く、もし来るとしても数年後です。

税務調査の際、論点となるのが「自分が支出したものがどこまで経費になるか」です。とは言え、間違っていたからといって税務署の人から怒られることはありません。満点はとれなくても大丈夫。いくつかポイントをおさえていればOKです。

まず知っておくべき「4つの税金」

個人が知っておくべき税金は、「所得税」「住民税」「事業税」「消費税」の4つ。

「所得税」は、1年間稼いだ所得に対してかかる税金で、国に納めます。所得額によって、税率は5〜45%と変動します。

「住民税」は、自分が住んでいる都道府県と市区町村に払う税金です。所得に対して税率は一律原則10%と決まっています。確定申告をすると、市区町村に所得の情報がいき、その額をもとに住民税が決まって毎年6月に通知が来ます。

「事業税」は、所得に対してかかる税金で、確定申告をすると地方から通知が来ます。税率は0〜5%ですが、全員が払うわけではなく、払う人と払わない人がいます。

払わなくていいのは、利益が290万円以下の人、「事業税を払わなくていい職種」に指定されている人(例:芸術分野の職業、林業、農業、医療など)です。

ウーバーイーツの配達員の中には、月収100万円を稼ぐというツワモノもいるそうですが、ウーバーの場合「第一種事業」に分類される「運送業」になるので事業税は5%です。

最後はおなじみの「消費税」です。売り上げが1000万円を超えた翌々年は、事業者として納める必要があります。

4つの税金はそれぞれ納税のスケジュールがバラバラなので、フリーランスの人は、いつどのくらいの金額を支払うのかを、事前に把握しておく必要があります。

とくに住民税は前年の収入に対して翌年支払う税金なので、前年の年収が高く、今年の年収がダウンしてしまった、という人は要注意。6月に支払い通知が届くので、慌てることがないようにしましょう。

控除をうまく活用しよう

売り上げから経費などを引いた差額が「課税所得」です。経費以外にも引いていい「控除」がたくさんあります。自分はどの控除を使えるのか? 確定申告前に、ぜひ把握しておきましょう。

主な控除は以下のとおりです。

①基礎控除(所得により0〜48万円引くことができる)
②生命保険料控除(生命保険や医療保険を払うと引くことができる)
③配偶者控除・配偶者特別控除(配偶者がいると引ける可能性がある)
④扶養控除(子供や親を扶養している場合、引くことができる)

ほかにも、障害者控除、寄付金控除など、控除は全部で14種類あります。

よく「節税が大事」といいますが、その方法は2つしかありません。「経費をたくさん作ること」と、「控除をたくさん使うこと」です。そのためには、何が経費にできるのか、どの控除を自分は使えるのかを把握しておきましょう。

一方で、確定申告してしまうと、税金をとられて損をするのでは……と思っている人が多いですが、確定申告をしないと、脱税となり延滞税、加算税などさらなる課税をされてしまうリスクがあります。

 

確定申告をしない=自分の収入を証明できないことになるので、ローンが組めない、部屋を借りられない、事故にあったときに休業補償を受けられない、などさまざまなデメリットがあります。必ず、確定申告はしてください。

経費が多い人の場合、納めすぎた税金が還付されるチャンスでもあります。「どこまでを経費にできるの?」と疑問に思う方も多いと思いますが、経費の基本は「自分の仕事に関連したもの」と「事業をやってなければ支出しないもの」のみ。

ウーバーイーツの配達員なら、配達のために購入した自転車代やシェアサイクル代、配達時にアプリを利用する場合はスマホの通信費なども経費として計上することができます。

ただし「ウーバーイーツ用に10万円のクロスバイクを買ったけど、趣味のサイクリングとしても使っている」という場合は10万円を全額経費に計上することはできません。もし仕事8割、趣味2割で使っているとしたら、8割分、つまり8万円を経費として計上しなければなりません。

このように、仕事と私用での使用割合を勘定して計上する考えを「家事按分(あんぶん)」といいます。自宅で仕事をしているライターやデザイナーの場合は、家賃を家事按分で何割か経費計上することができます。明確なルールがあるわけではありませんが、仕事場の広さや業務時間で割合を出すケースが多いです。

人前に出るような仕事をしている人の場合、衣装代や美容代なども経費として認められるケースがあります。もちろんプライベートでも使えるものだから全額は無理ですが、仕事だけでしか着ない衣装なら、全額経費になる可能性もあります。

これらは偽装しようとしたらできますが、それはNG。ウソは見破られるものと心得ましょう。やましい気持ちがなくて、本心ならば、凛とした態度で税務調査に臨めます。

大事なのは「説明できる」こと

インターネット上では、あれはダメだとかこれは大丈夫とか、無数の情報が散乱しています。

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しかし、それらは税務調査で認められたものではなくて、あくまで一般論。万に一つ税務調査で負けなかった事実だとしても、あなたのケースに置きかえたら、結論はいくらでも変わります。

経費において大切なのは、税務調査が入ったときに「これはあのときにこういう理由で仕事に必要だから使いました」と自分がきちんと説明できるかどうかです。「絶対に説明できる!」と思うのであれば、自信を持って経費に計上しましょう。

初めての確定申告でどうしても自信がない、という方は税理士会と税務署主催の「確定申告無料相談会」などを活用するのもおすすめです。

フリーランスになったら、会社員時代よりもはるかに高いマネーリテラシーが求められます。しかし、そのお金の知識はきっと自分の一生の財産になるはずです。