「田舎の一軒家」購入前に押さえたい修繕の知見

家を長持ちさせるのにとくに大切な箇所は外壁と屋根

梅雨時の雨、雪、地震、台風、シロアリそのほか季節ごとの風や温度差など、あなたが想像している以上に家は厳しい環境の中で頑張っています。健康に気をつかわずにいると知らないうちに体がボロボロになる危険性が増しますよね。

それと同じように、持ち家も何もせずにいると、厳しい環境に負け、雨漏りがひどくて住めなくなったり、地震などの災害で家が壊れやすくなったりといった事態におちいる可能性が高まるのです。ですから、体のアンチエイジングケアと同じように、家のアンチエイジングケアも大切です。

家を長持ちさせるアンチエイジングケアという観点で、最も大切な箇所が、外壁と屋根です。家にとっての最大の敵は水分です。つまり、「長く住み続けられる家」として保つことは、すなわち、水分から家を守ることといっても過言ではありません。

雨水、生活用水、結露という、家に関わる水分のうち、量が圧倒的に多く、家に与える影響も大きいのが雨水です。「雨露をしのぐ」という言葉がありますが、人類が家を建てて暮らし始めたのは、雨から体や財産を守ることも大きな理由の1つでしょう。そして、そのときから人類と雨漏りの付き合いが始まりました。

科学技術・防水技術が発達した現代でも、雨漏りはなくなっていません。住宅瑕疵担保責任保険法人によると、新築時の欠陥によって起きた事故のうち、なんと90%以上が雨漏りに関わるものだと報告されています。これほど技術が発達した今でも、なぜ雨漏りが起きるのでしょうか?

雨水から家を守っているのは、外壁、屋根、床下といった部位です。なかでも、風雨に直接さらされる外壁と屋根は、とくに大きな役割を果たしています。ここを健全に保てるかどうかが、家を長持ちさせられるかどうかの大きな分かれ道なのです。

では、あなたにできることはなんでしょう。それが以下の3つです。

・換気を心がける
・壁の周りには、物を置かない
・家のチェックを怠らない

これまで述べてきたように、家の最大の敵は湿気です。そのため換気は、頻繁に行うのがいいでしょう。1時間に10分換気を行うよりも、5分を2回するほうが効果的だと言われています。

また、空気の流れを意識して窓を開けることも大切です。窓を開けたら、できるだけ遠くの窓から空気が逃げるように、もう1つ窓や部屋のドアを開けましょう。台所の換気扇を回すのも効果的です。

よく外壁のそばに物置きなどを置いている方がいますが、できれば外壁の周りは何も置かないほうがいいでしょう。物を置いたところに風や太陽があたらず、湿気がたまりやすくなってしまうからです。

チェックを怠らず異変に気づく

また、家の異変に早く気づき、修繕することは何よりも大切です。次が家のチェックポイントです。このポイントを常日頃から気にかけ、どれか1つでもあてはまるようでしたら、要注意です。

□ 家の中がしけった臭いがする
□ 家の中が時々カビ臭い
 壁紙や天井に雨漏りのようなシミがある
 実際に雨漏りがある
 屋根や外装にひび割れなどがある
□ シーリング(外壁と外壁をつないでいる部分、窓サッシ周りの外壁と重なっている部分)が切れている(割れている)
外壁の表面を触って白い粉が手につく

外壁の表面を触って手につく白い粉は、防水や美装のための塗料が、雨水や日光の紫外線によって劣化し、粉状に分解されたものです。

 

大体築10年ほどでこうした兆候が現れますが、そのまま放置すれば水分が外壁材に直接触れて吸収されたり、日射を受けた水分が熱とともに湿気として内部に侵入したりして、家の内部を傷めることもあるので、注意が必要です。

さて、では先ほどのチェックポイントで気になるところがあった人はどうすればよいのでしょう。基本は、屋根・外壁の専門工事会社の方に、塗り替えや張り替えといったリフォームを頼むことになります。

見た目をきれいにするのはもちろんですが、塗装の塗膜(塗料が乾いて固まって膜になったもの)には、雨や紫外線から建物を守るための重要な役割があります。だからこそ塗り替えるのですが、ここで注意が必要なのが今の新築木材住宅の大半を占める「サイディング」という外壁材を使っている方です。

「外壁を塗り替えて3年もたっていないのに、塗料がはがれてきてしまった。やむをえず、またすぐに塗り替えたら、今度は2年ももたなかった。もう、どうすればいいのかわからない……」そんなお悩みの相談を受けることがよくあるのです。

そこでまず疑われるのが、サイディングの基材が水分を多く吸ってしまっているということです。このような状態になると、いくら塗り替えても無駄です。外壁を新しいものに張り替える必要が出てきます。塗膜がひび割れていたり、膨らんで表面がボコボコになっていたりしたら張り替えの可能性があるので注意してください。

「大幅値引き」を提案してくる工事会社に注意

また、築20年以上経っている場合、家の大切な部分に水分が染み込まないようにするための透湿防水紙が劣化している可能性があるので、張り替えを考えたほうがいいかもしれません。

状況がわからずに、「塗ってくださいと言ったから塗りました」で済ませる工事会社も少なからずいます。事前にきちんと工事会社と話をしておくことが、無駄なリフォームをして損をしないためには必要です。

工事会社選びも非常に重要です。まず「今、キャンペーン中で、すぐに契約をしたら、大幅に値引きしますよ」など、大幅な値引きをする会社は要注意です。当然手がける作業の分だけ、コストがかかります。

逆に、「相見積もりをとってみて、他社のほうが安かったら値引いてくれませんか?」と聞いたときに即答しなかったり、できないと断ったりする業者は、むしろ信用できる業者である可能性が高いです。

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依頼前に「今、施工中のところを見せていただけないですか?」と尋ねてみるのもよいでしょう。工事の善し悪しまでは判断できないかもしれませんが、いい仕事をしているかどうかは意外と現場に表れているものです。あちこちにゴミが散らかっていないか、職人がきびきびと動いているかなどをチェックし、できれば別の日に、もう一度訪ねてみてください。

お客さまの訪れるとわかっている日だけ、しっかりと振る舞っている可能性があるからです。ちょっとした抜き打ち検査。多少の時間はかかることになりますが、後悔しないためには念には念を入れましょう。いずれにしても工事会社選びは急いで決断せず、納得するまでじっくりと慎重に行うようにしましょう。