確定申告「雑にやる人」が今年要注意の6つの点

確定申告の改正の注意点6つ

まずは、どんな改正があったのかを、ザっと見てみましょう。今年、注意したいのは、主に次の6つです。

①すべての人に関係する基礎控除の改正⇒減税
②給与やアルバイト収入のある人に関係する改正⇒増税
③年金をもらっている人に関係する改正⇒増税
④青色申告をしている人に関係する改正⇒増税の場合あり
⑤寡婦、ひとり親の人に関係する改正⇒減税または増税
⑥配偶者、扶養家族に関係する改正⇒減税の場合あり

パッとみると非常にややこしいですね。しかし、改正による影響について見てみると、②③で増税となりますが、①で減税となるため、全体としては増減なく変わらない人の多い改正となっています。

個人事業や不動産賃貸業をしている方は、①で減税となりますが、青色申告者の場合、e-Taxを使って申告しないと増税となる④の改正があるため、要注意です。

未婚のひとり親の方、寡夫の方は、⑤の改正により減税となります。ただし、今回の改正で対象から外れて増税となる人もいるので注意しましょう。⑥は控除対象になる人の範囲が広がるため、場合によっては減税となります。

 

では、それぞれの内容について見ていきましょう。

①すべての人に関係する基礎控除の改正

注意したい改正点の1つ目は、「基礎控除」です。これは、申告する人すべてに関わってくる控除になります。

従来、基礎控除の金額は38万円でしたが、今年の申告からは48万円となり、10万円引き上げられています。とくに例年申告している方は、昨年分と金額が違いますので、注意しましょう。

基礎控除は、所得から引くこと(控除)のできる項目(所得控除)ですから、多いほど、税金面では有利となります。

したがって、通常は減税となりますが、合計所得が2400万円を超える方は、下図のように控除額が段階的に引き下げられ、増税となります。

年収850万円超の人は増税に

②給与やアルバイト収入のある人に関係する改正

注意したい改正点の2つ目は、給料やアルバイト・パート収入のある人に関係する改正です。大きく2つあります。ただし、年末調整を受けた方は、会社がすでに改正を反映させて給与所得を計算してくれていますので、「こんな改正があったのだな」くらいに思っていただければ、大丈夫です。

1. 給与所得控除額の引き下げ

1つは給与所得控除額の改正です。下図のように、年収850万円以下の人は給与所得控除額が一律10万円引き下げになり、年収850万円超の人は一律給与所得控除額が195万円となります。

給与所得控除額は、給料収入から所得を計算するときに、必要経費のように引くことができる項目です。その金額が少なくなったということですから、増税となります。

 

ただし、前述の基礎控除が10万円引き上げられたため、年収850万円以下の人については、全体としては増税も減税もなし、という建て付けになっています。

2. 所得金額調整控除の創設

年収850万円超の方については、前述の改正による影響があまり大きくならないよう、「所得金額調整控除」というものが創設されました。これは、子育て世帯と特別障害者のいる世帯(本人または家族)に限って、最大15万円の所得金額調整控除額を、給与所得の金額から引くことができるというものです。

年金に関する改正の注意点は2つ

③年金をもらっている人に関係する改正

注意したい改正点の3つ目は、年金をもらっている人に関係する改正です。大きく2つあります。

1. 公的年金等控除額の引き下げ

1つは、公的年金等控除額が一律10万円引き下げられたことです。また、合計所得の金額によって計算区分が3つに分けられました。図は公的年金等の所得を計算するための図ですが、赤字の部分が引き下げられた箇所になります。

 

公的年金等控除額は、年金収入から所得を計算するときに、必要経費のように引くことができる項目です。その金額が少なくなったということですから増税となりますが、前述の基礎控除が10万円引き上げられたため、結果的に増税も減税もないことになっています。

 

2. 所得金額調整控除の創設

公的年金収入に加えて給料、アルバイト・パート収入がある方に対して、最大10万円の「所得金額調整控除」が設けられました。

今回の改正では、前述したように給与所得控除額と公的年金等控除額が10万円引き下げられました。両方の所得がある人は、20万円の所得アップとなってしまいます。そこで、10万円の所得アップですむよう、調整するために設けられたものです。

e-Taxを始めるには

④青色申告をしている人に関係する改正

青色申告をしている人が注意したいのは、今年からe-Tax(インターネットを使った電子申告)をしないと、青色申告特別控除額が55万円に引き下げられてしまうことです。e-Taxで申告しないと増税となりますが、e-Taxを使えば、従来どおりの65万円の控除を受けることができます。

e-Taxを始めるには、マイナンバーカードとICカードリーダライタを使う方法と、IDとパスワードを税務署に発行してもらう方法の2つがあります。くわしくは、図をご参照ください。

⑤寡婦、ひとり親の人に関係する改正

寡婦、ひとり親の人に関係するものでは、大きく3つの改正があります。また、「寡婦、寡夫控除」という名称が「寡婦、ひとり親控除」という名称に変更されました。

改正の1つ目は、未婚のシングルマザー・ファーザーの人も控除を受けられるようになったことです。従来は結婚していた人でないと、控除が認められませんでした。これは減税となる改正で、控除額は35万円となります。

2つ目は、寡夫控除が廃止されて、「ひとり親控除」に統合されたことです。控除額は従来の27万円から35万円に引き上げられ、減税となります。

3つ目は、「合計所得500万円以下」という所得制限が加わったことです。従来は、夫と死別・離婚して子どもか扶養親族のいる人であれば、所得と関係なく、控除を受けることができました。合計所得が500万円を超える方は対象から外されますので、増税となります。

具体的な要件などをまとめると、次のようになります。

確定申告の際には改正内容をよく確認して

⑥配偶者、扶養親族に関係する改正
『自分ですらすらできる確定申告の書き方 令和3年3月15日締切分』(KADOKAWA)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

注意したい改正点の最後は、配偶者や扶養親族がいる人に関係する改正です。

控除の対象にできる家族の所得(合計所得)が10万円引き上げられました。

扶養控除と配偶者控除は、合計所得48万円以下(改正前38万円以下)になり、配偶者特別控除は、合計所得48万円超133万円以下(改正前38万円超123万円以下)となります。

ただし、合計所得が10万円引き上げられた一方、給与所得控除額も10万円引き下げられたため、対象となる年収は従来と同じです。具体的には、扶養控除と配偶者控除は給与年収が103万円以下、配偶者特別控除は103万円超201万5999円以下であることが条件となります。

以上、今年の変更点をご紹介しました。今回の改正は、フリーランスやシングルマザーの方は減税、給与年収が高い方は増税など、ケースによって増税と減税に分かれます。また、青色申告をしている人は、e-Taxを使わないと増税です。

 

今年は、所得金額調整控除も創設されましたので、改正内容についてよく確認をして確定申告をしていただくとよいでしょう。