コロナで「勉強不安が再燃」の親子がすべきこと

今後の「教育の方向性」に合わせていく

コロナ禍により、2020年度は異例の事態の連続でした。親も子も不安になるのは当然のことでしょう。この異例の状態は、まだまだ進行中です。今後の状況によっては、2021年度の学習環境に影響を与える可能性も否定できません。

一方、中学校は2021年4月から、新しい学習指導要領に基づく指導が始まります。教科書もかなり変わります。教科書作成会社によれば、“教科書史上最大の改革”と言っても過言ではないとも聞いています。

またGIGAスクール構想の前倒しにより、中学校では1人1台のパソコンが配布されることが予定されており、デジタル教科書の使用も始まる方向です。このように考えると、中学生にとって2021年は大きな変化の年になりそうです。それがコロナ禍のまっただ中で行われるため、“変化の中の変化”という極めて異例の状況になるわけです。

しかし、ここからが大切なのですが、「重要な部分をしっかりおさえておけば、どのような事態になっても右往左往する必要はない」と筆者は考えています。そこで、今後の教育の大きな方向性を知り、それに家庭の教育の方向性を合わせてしまうといいでしょう。不安もきっと安心に変わるはずです。

新しい学習指導要領では、次の3つが基本となっています。

「知識・技能」
「思考力・判断力・表現力」
「学びに向かう力・人間性」

 

これまでは「知識・技能」を中心とした学習指導が行われてきましたが、これに「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」が加味されるようになります。そして入学試験でも「思考力・判断力・表現力」が問われるようになります。つまり、親世代が受けてきた授業や入試とは異なる形になるということです。

ただ宿題をやり、知識を獲得すれば安泰という勉強の時代は終わりました。親世代が経験してきたことがそのまま子ども世代に活かせる場合もあるでしょうが、そうではない場合もあるということなのです。

筆者はこれまで4000人以上を直接指導してきましたが、その指導経験の中では、思考力や表現力が高い子は、偏差値レベルも高くなる傾向がありました。

しかしこれまでの勉強では、思考力がさほど高くない場合でも、知識の獲得だけでも点数が取れ、入試にも合格できました。トップレベルの高校でも、高い思考力がある子と知識型の子の両者が混在していました。ところが、これからは思考力や表現力そのものが評価されるため、従来とは違った局面になることが想定されます。

家庭は「思考力・判断力・表現力」を養う場に

こうした教育変化の年を、チャンスと捉え、次のことを家庭内でされることをおすすめします。

「コロナ禍における非常期特有のテーマを対話で使い、『思考力』を育てる」

具体的には、宿題等の知識の獲得はそのまま進め、家庭内では、「思考力・判断力・表現力」を養う場にしてしまうということです。つまり、机で勉強していることだけが学びではなく、日常の対話そのものを学びにつなげてしまうというあり方です。

平常期においても家庭内を学びの場にすることはできました。例えば、

部屋の片付けは「情報整理」と意味づける
料理などは「プログラミング」と捉えてみる
困ったことがあれば「問題解決思考」を鍛える場と考える
日常会話は「読解力とボキャブラリー獲得」の場とする
旅行は「経験と刺激」「思考の枠」を広げる場と捉える

など、すべての日常の活動を、「学び場」として意味づけることは可能でした。

しかし、今は非常期です。平常期では考えられないことを思考し、判断し、表現できる絶好のチャンスと考えましょう。

 

例えば、次のような問いを日常でさりげなく取り入れます。

 トイレットペーパーなど、物資が枯渇するという情報が正しくなくても、なぜ人は購入に走るのか? 自分だったらどう行動するか?
 オンライン授業と通常授業のメリットとデメリットとは何か? 自分はどちらに向いているか? またそれはなぜだろうか?
 コロナによって生活の何が変わったか?
 テレビ番組の作り方はどう変わったか?
 テレビCMはソーシャルディスタンスを意識して作られているか、そうではないか。意識してないとしたらそれはなぜか?
 コロナになってYouTuberたちはどのようなテーマを出しているか
 海外旅行に行けなくなると、人はどういう行動をとるのか
 コロナ期でも繁盛しているレストランはどのようなレストランか?
 非常時に出てくる新しいテクノロジーや仕事はどんなことか? またそれはなぜか? 

また、図や表をみて読み取る問題が、今後の入試では多く出題されます。そこで、統計データから何がわかるのかということも、身近なテーマを使って慣れてしまいましょう。

非常期においては、毎日のようにグラフや表が出てくる傾向にあるためそれを有効活用するのです。

例えば、

 コロナ感染者数のグラフと100年前のスペイン風の感染者数のグラフを見比べてみて何がわかるか?
 47都道府県の感染者数のばらつきはなぜ起こるのか?
 人口当たりの感染率でみたらどういう順位になるか?
 同じ感染症対策をしていて、なぜ新型コロナは増えて、インフルエンザは激減しているのか?

こうした”思考活動“をしていると、日常の観察力が高まり、調べる習慣がつくといった知的効果があるだけでなく、物事を冷静に見る習慣が身につきます。

非常期だからこその対話で「学び」を

非常期の気持ちは不安、心配、恐怖に向かいがちです。しかし、このような非常期特有のテーマを意識的に目的を持って話題にすることで、論理的思考ができ、ネガティブな感情が緩和する可能性もあることでしょう。そして時には、楽しさや面白さも誘発されることもあるはずです。

以上のような問いに、子どもが乗ってこない場合もあります。それはそれでまったく問題ありません。そのときは親の学びの機会にしてしまえばいいのです。このような問題意識を大人が持つことで、その姿は自然と子どもに目に映ることでしょう。

また、子どもはこのような問いに対して「わからない」という言葉で返してくることもあります。それも問題ありません。なぜなら、このような問いをされて、一瞬でも子どもは「思考状態」になるからです。思考すること自体が重要なのであって、答えが出るかどうか、正しいかどうかは二の次だからです。

ぜひ、非常期にしか扱えないテーマで対話することで、「学びの土台」と「気持ちの安定」をもたらしてみてください。