「日本酒の買い方」が下手な人に欠けている視点

好みのお酒を買うために「説明力」を養おう 

日本酒の銘柄は1万以上ある、といわれています。お気に入りの銘柄を楽しみ続けるのも素敵ですが、せっかくですから、たくさん味わいたいものです。ただし、お酒のラベルを見ただけではその中身が想像しにくく、自分の好みに合うお酒を、数ある銘柄の中から選ぶのは至難の業です。

酒販店や百貨店には、専門知識と資格を持つスタッフがいます。ぜひ、スタッフの知識と力を借りましょう。このときに必要なのが、「説明力」です。上手に自分の希望を伝えられなければ、スタッフも想像で選ぶほかなく、飲んでみたら好みに合わなかったということにもなりかねません。

好みのお酒を手に入れるために、伝えるべきは次の4つです。

① 購入の目的を伝える

何のためにお酒を購入するのかを伝えましょう。自宅用なのか、贈り物なのか。また、1人で飲むのか、家族と一緒に飲むのか、それとも仲間とのオンライン飲み会用なのか、お礼として贈るものなのか、お祝いとして贈るものなのかなど、目的を明確に伝えましょう。

 

日本酒は味わいと共に、ボトル、ラベルのデザイン等も楽しめる要素の1つです。ちょっとしたこだわりを演出したり、オンライン映えを意識したり、金額やお酒の格、製造方法など、選ぶ基準がここで決まります。

② どんな味わいが希望(好み)かを伝える

希望する味わいを表現するのは難しいものです。たとえば日本酒の味わいを伝える際に使う表現に「辛口」があります。日本酒の甘口、辛口の判断はとても難しく、ラベルに「辛口」とあっても好みの辛口具合なのかはわかりません。スタッフが辛口だと思っていても、あなたにとっては辛口に感じないということもあります。ちなみに、日本酒はお米、つまり、糖質(炭水化物)でできているので、多かれ少なかれ必ず甘味があります。

もう1つよく使う表現が「飲みやすい」です。「飲みやすい」と聞くと、クセがなく、すっきりとしたお酒をイメージしますが、これも飲む人の感じ方次第で、やはり明確な基準はありません。

日本酒は、おおむね以下の4つのタイプに分けることができます。味わいを伝えるときは、以下の表現をベースにアレンジするといいでしょう。

  • (1) クセがなく、すっきりとしたタイプ
  • (2)フルーティーで、甘酸っぱいタイプ
  • (3)コクがあって、飲みごたえあるタイプ
  • (4)熟成していて、ちょっと個性的なタイプ

お酒を飲むシーンをイメージできるように

③ いつ、どこで、誰(どういう人)が飲むのかを伝える

「週末に自宅で、家族みんなで飲む」のであれば、家族の構成、年齢やどんな場で飲むのか、食事と一緒なのか食後なのかなど、詳しく伝えましょう。

「今晩、コンビニつまみと一緒に、テレビを見ながらひとりで」「来週の持ち寄り飲み会で。店はイタリアン」「お世話になった日本酒通の上司にお歳暮で」「クリスマスに恋人と2人で」「新年のお屠蘇(とそ)として親戚と」など、飲む人やタイミングや飲み方がはっきりすることで、料理との相性、雰囲気に合うセレクトができます。

味わいの好みが同じであっても、取引先とお寿司を食べるときにいただくお酒と、友人たちとフランクに語り合いながらイタリアンの食事を楽しむ席でいただくお酒とでは、まったくセレクトが違ってきます。いつ飲むかによっても保存の仕方を含めてセレクトしてもらえます。

場をイメージできるからこそ、より適したお酒を選べるのです。時には、お酒の紹介の仕方、見せ方のアドバイスもしてくれます。スタッフの腕の見せ所でもありますね。

④ 予算は明確に伝える

忘れてはならないのが、予算です。これはとても大切です。予算を超えてしまった結果、そのことが気になってお酒を楽しめなくなってしまうこともあります。

 

予算を伝える時には、「サイズ」「本数」も伝えてください。「四合瓶720ミリリットルを1本、2000円以内で」「一升瓶1800ミリリットル1本、5000円程度、贈り物として」「720ミリリットル、桐箱入り、お祝い用に包装、2本2万円で」など。これくらい情報を伝えれば、希望に沿ったものを購入できるはずです。

日本酒に限らず、お酒をプレゼントすることはとても難しいです。贈る相手を思い、時間と費用を費やしたにも関わらず、相手のまったく好みでないお酒、むしろ嫌いなタイプのお酒を贈ってしまうかもしれない怖さがあるからです。

お酒を贈るときは、気持ちも一緒にわかりやすい形で添えるといいでしょう。「おすすめのおつまみは〇〇です」「ワイングラスでいただくとより美味しいです」「お燗にしてどうぞ」など、贈るお酒の楽しみ方を記したカードやお手紙を同封するのです。「このお酒を選んだ理由」でもいいでしょう。ひと言を添えることで、そのお酒に込められたあなたの思いが伝わります。

ネット購入は販売サイト選びが重要

日本酒の銘柄によっては、あまり市場に出回っておらず、ネットでしか購入できないものもあります。

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また、近くに相談できるスタッフがいる酒販店や百貨店がなかったり、行く時間がなかなか取れなかったりして、ネットを活用して購入する人もいるでしょう。その場合に気をつけるべきポイントを、最後にお伝えします。

まず、ネットでは直接手に取って品物の確認ができないため、管理状況がわかりません。なかには、粗雑な管理をしているところもあるため、どこで買うかの見極めが大切です。

おすすめは、蔵元自身が運営する自社サイト。これは間違いありません。または、蔵元HPにリンクが貼られている販売プラットフォームもいいでしょう。それもない場合は、蔵元に連絡して紹介してもらいましょう。いまは、ほとんどの蔵元がメールで対応してくれます。

蔵元での対応が難しそうな場合は、サイト上でのお酒の説明がきめ細かなお店を選ぶといいでしょう。販売店が自らテイスティングした感想や、蔵を訪ねたリポートが掲載されているサイトは、メーカーとのお付き合いがあるうえで販売しているということです。単にメーカーの情報の受け売りではなく、販売者自身がテイスティングしたうえで、おすすめしているわけですから信頼できます。

今年はコロナ禍で、年末年始の宴席は控える傾向になるとは思いますが、それでも、家族や恋人と、本当に仲のいい友人とお酒でお祝いすることもあるでしょうし、お酒を贈りあう機会もあるでしょう。そういった時に、上手に日本酒を選べたら粋な年の瀬、新年の過ごし方となるはずです。