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「一生許されない人」「OKな人」謝り方、6つの差

 

不祥事でも「許される人と許されない人」に分かれる

芸能人スキャンダルネタが後を絶ちません。

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そうした人々を完膚なきまでにたたきのめそうとするメディアや一部の人たちの姿に、人間の強烈な妬み意識や制裁感情の恐ろしささえ覚えますが、古今東西、有名人の不祥事はお茶の間の格好の「娯楽」「ネタ」として、注目を集めてきました。

「スキャンダル」が関心を集めるのは、「自分が果たせない掟破りの行動を疑似体験する」「制裁欲求を満たす」「許しを請われることによる満足感を得る」、そして、何より「退屈をしのげる」「自分自身が抱えている問題から目をそらせる」といった効果があるからだそうです。

長年、企業トップのコミュニケーションコーチングやPRのコンサルティングに関わってきた筆者も、「危機管理広報」のお手伝いなどをする中で、企業の不祥事対応のサポートをしてきました。

「たたかれるには共通の理由がある」わけですが、企業や人への風当たりの強さは個々のケースによって違いがあります

ここでは、まずは不祥事で「許される人、許されない人」を分ける「6つの壁」を解説したうえで「正しい謝り方」の「6つのスキル」を紹介します。

【1】事案の悪質性

1つ目は何と言っても、「事案の悪質性」です。犯した過失や罪の度合いが重ければ重いほど批判されます

「人的被害がある」「複数回」「長期的」「故意」である場合は、「人的被害がない」「単発」「短期的」「単純ミス」よりも、責めを負いやすくなります。

【2】「早期に」「迅速」にきっちりと謝ったかどうか

2つ目は、「早期に」「迅速に」説明、謝罪をしたかどうか、です。うそをついたり、弁解したりすると、非難が強まります

危機管理においては、「不始末よりも後始末」と言われ、不祥事そのものより、その後の対応がのちの評価を大きく分けるのです。

【3】「言行の不一致」があるかどうか

常日頃「優等生タイプ」「上から目線でモノを言うタイプ」「偉そう」など、イメージと行動に乖離があり「言行の不一致」があるほど、たたかれやすくなります

【4】実力・実績があるかどうか

誰にも負けない実力があり、「その人を置いてほかにはない」と思わせる実績を持っていれば、最終的には許されやすいものです。

【5】仲間がいるかどうか

企業であれば、ほかに同様なことをしている企業があるかどうか
個人であれば、その人をかばい、支えてくれる仲間がいるかどうかが、その後のレピュテーション(評判)の回復に影響します。

【6】見た目の印象

「何を言うか」だけではなく、「どのように言うのか」というのが、印象に大きく影響するものです。どう見ても、あまり、申し訳なさそうに見えない、わざとらしく見える場合は、許されにくくなります。

「日頃の言動」も仇となってしまうことがある

こうした条件によって、おとがめの質・量ともに大きく差が出るのです。

最近、最も話題になったお笑い芸人の不倫ネタをこれに照らすと、批判を受けやすい要素がてんこ盛りであることがわかります。

 

「謝罪の遅れ」「故意」の行為、「複数回」であること、身を挺して笑いを取る「ボケ」タイプというより、日ごろから自分の見識をアピールし、マウントをとる「ツッコミ」タイプであったことなどが、仇となっている側面はあるでしょう。

2016年、オハイオ州立大学が「完璧な謝罪法」の研究をしています。そこで「許される謝罪」には、次の「6つの要素」が必要なことがわかりました。

この6つができるかどうかが、「許される人」「許されない人」を大きく分ける決定的な差になります。

①「後悔の念」を表す
(例)「本当に申し訳ない」「謝っても謝り切れない」
②「原因」を説明する
(例)「自分の不手際であった」「心に隙があった」
③「責任」を認める
(例)「私の責任である」「すべての責任は私にある」
④「反省の弁」を述べる
(例)「猛省をしている」「心から反省している」
⑤「改善策」を提示する
(例)「これまでの行いを正す」「これからは絶対に〇〇はしない」
⑥「許し」を請う
(例)「どうか許していただきたい」「もう一度チャンスをもらえないだろうか」

「責任」を認め、納得のいく「なぜ」を説明

研究によると、これらの要素の中で最も優先順位が高いのは「③『責任』を認める」だそうです。

また「②『原因』を説明する」ことも重要です。みなさんが事件や事故のニュースを見て、思うことは何でしょう。「なぜ、この人はこんなことをしてしまったのか」ですよね。

人は「動機」を知りたがる生き物。「謝罪の王様」になるカギは、「納得のいく『なぜ』を説明できるかどうか」にかかっているのです。

そして、何より肝心なのは、前ページでも挙げた「見た目」です。「何を言うか」よりも「どのように謝るか」。「許される謝罪」のステップを踏んでいたとしても、申し訳なさそうに見えないと、相手は許してくれません

しかし、たまに、どうやっても「謝罪顔」ができない人がいます。

「謝罪顔」ができない人の特徴としては、「ふとした弾みに笑っているように見える」「態度が大きく、反省しているように見えない」などがあります。

そういった人には、「頭のてっぺんから、足のつま先まで『とにかく申し訳ない』という気持ちになりきる」ことが大切とお伝えしています。

例えば、次のようなことに注意してみましょう。気をつけるべきポイントは山ほどあります。

【謝るときの態度・しぐさ・服装】
・目を「見開く」のではなく、「伏し目がち」にする
・アゴを上げて発言すると横柄な印象になるので、アゴは「引き気味」に
・よどみなく早口で謝罪するよりも、「絞り出すように」言葉を発する
・テーブルに肘をつかない
・記者とは「適度な距離」を確保する
・「派手にならない服装」にする など

「謝罪」は軽視できない「奥の深いスキル」である

コミュニケーションの要諦は「自分が何を言ったか」ではなく「相手がどう受け止めるか」です。

日本ではコミュニケーションについて戦略的に振る舞うと、「狡猾だ」「あざとい」という言い方をされてしまい、その「技術」を軽視する傾向があります。

しかし海外では、どのような表情やしぐさをすればコミュニケーションがうまくいくのか、「大学の学問」として「エビデンス」を積み重ねながら真剣に研究されている分野です。

ボディーランゲージの専門家が大勢いて、1つひとつのしぐさを観察し、「どんな意味があったのか」「どんな意図があるのか」を分析されてしまいます。「髪型」から「服装」「表情」「手の動き」「姿勢」まですべてを計算して、「相手に与える影響」を予期し、十分な準備をする必要があるのです。

たとえ間違いを犯しても、「美しい謝罪」によって、許され、再び受け入れられる人がいる一方で、「醜い謝罪」をする人は、長い間そのツケを払わされることになります。そういった意味で、「謝罪」は実に奥の深いスキルであり、その「技術」を軽視することはできません。

話し方を変えれば、人生が変わりますが、「正しい謝り方」も、話し方の重要なスキルです。皆さんも、ぜひトラブルや失敗を最小限で食い止められる「正しい謝罪の技術と話し方」を身に付けてくださいね。