示唆型の「声がけ」に効果はない
学習というのが、勉強を指しているのであれば、子どもが自ら進んで学習することは通常見られない景色です。なぜなら、いつしか子どもたちは、勉強は「しなければならないこと」と思うようになってしまったからです。「しなければならないこと」を進んでやる子は多いとは言いがたいでしょう。
しかし、学習をいわゆる学校の勉強ではなく、自分の興味があることを学ぶという意味であれば、自ら学ぶ人はたくさんいます。
例えば子どもの頃、歴史の勉強が嫌いであったのに、大人になってから大河ドラマを見て急に戦国時代にハマり、本を読んだり、ネットで検索したりして、“学習する”人も少なくありません。子どもでも、鉄道が好きな子は、何も言わなくても鉄道に関する知識をどんどん吸収して“学習”していきます。つまり、興味、関心があるかないかが学習するうえで、決定的な要因の1つになると考えていいでしょう。
本来、学校の勉強や宿題が、そのように興味関心がわくように工夫されていればいいのですが、現実は必ずしもそうではないため、子どもたちが自ら進んで学習することは難しいのです。そうなると、「しなければならない勉強」をやらせようと思う親御さんは、たまらず「声がけ」をします。
例えば、「勉強しなさい」「宿題しなさい」といった指示命令型の声がけから、「そろそろ勉強やったほうがいいんじゃないの?」とか「もう時間よ」といった示唆型声がけをすることもあります。
これらの声がけは、やってはいけないというものではありませんが、まず効果は期待できないと思ったほうがいいでしょう。
その結果、効果がないとわかると「声がけの種類が悪いのではないか。もっと別の声がけがあるのではないか?」と思う方もいます。しかし、残念ながら、声がけによって子どもが前向きに勉強するようになることは難しいでしょう。もし、声がけによって子どもが進んで学習するのであれば、とっくにそのような言葉が世の中に流通しており、すでにその効果が出ていて、進んで勉強する子だらけになっているはずです。
では、どうしたらいいでしょうか。筆者は、「声がけ」ではなく「仕組みを作る」ことをお勧めしています。つまり、進んで学習するための「仕組み」です。
仕組みを機能させる2つの要素
仕組みが機能するためには、次の2つのいずれかが必要であると考えています。
2) 好奇心
1つずつ説明していきます。
習慣化については2つの代表的なアプローチがあります。
1つは、「すでに習慣化されていることに、新しい習慣をくっつけてしまう方法」です。例えば、ご飯を食べる、お風呂に入る、歯をみがくといった日常のすでに習慣化された習慣に、新しい習慣をくっつけます。歯をみがく前にプリント1枚とか、朝起きたら、朝食の前にプリント1枚やってしまうなどです。
これは多くの家庭で取り入れられている方法で、比較的容易に習慣化されますが、子どもが小さいとき(未就学児段階)から行うほうが効果が出やすい方法です。小さいときからこのスタイルが当たり前であれば、苦になりにくく、身に付きやすいでしょう。
もう1つは「『見える化』させてしまう方法」です。
やるべきことを見える化させることによって、自ら進んで行動するようになることは、筆者が提唱してきた「子ども手帳」を実践された方から多数報告があります。
「子ども手帳」とは、やるべきことを手帳に書き、終わったら赤で消し込みし、ポイント化するという単純な仕組みです。いつ、何をやるのかが明確になり、しかも消されていないことは、自ら消したいという気持ちが出てきて、自ら行動するようになる仕掛けです。さらに、ゲームのようにポイント化して数値化しているため、自分の成長が「見える化」されていきます。
このような方法で習慣化されると、やっている内容がさほど楽しくなくても継続率が上がります。例えば、習慣化されている歯磨きが楽しいと思う子はいないでしょう。しかし、毎日の習慣になっているため、継続できるのです。そして、勉強の場合、継続すると力がついてくるため、結果が出てきて、それがさらに「やる気」につながることもあります。
習慣化のコツは例外の日を作らないということです。つまり、勉強であれば、土曜も日曜も5分でもいいから「やった」という実績を残しておきます。インターバルをおくと、人は再開するのに大きなエネルギーが必要になり、なかなか再開できなくなる場合が少なくないからです。
好奇心があれば、子どもは自主的に行動します。ということは、勉強そのものを通じて好奇心を引き出す仕組みを作ってしまえばいいわけです。そのためには、勉強内容を子どもの関心と「リンク」させるという方法を作ります。
そのリンクさせる方法はたくさんありますが、2つ紹介します。
勉強の「内容」「形式」どちらかにリンクを
1つ目は、勉強内容をリンクさせる方法です。
例えば、「鬼滅の刃」にハマっている子であるならば、算数の速さの文章題で、太郎君と花子さんが登場したら、炭治郎と禰豆子と置き換えてしまいます。鉄道好きの子であれば、東海道線と新幹線に置き換えてしまうなどです。ありえないような場面が作られるため、笑いとともに、子どもたちの興味関心が喚起されます。
筆者が子どもたちを指導していたとき、このようにして子どもが興味を持てそうな用語に置き換えて説明していました。すると子どもたちは途端に目を輝かせるため、身近なイメージで捉えることは大切であるとしみじみ感じたものです。
もう1つは勉強の形式をリンクさせる方法です。
子どもはゲーム、クイズ、なぞなぞが好きで、前のめりになることが知られています。ということは、勉強も、ゲーム、クイズ、なぞなぞの一種と思えてしまえば、前のめりになる可能性が高いということです。
例えば、国語は親が読み聞かせをして、問題にさしかかったら、設問をクイズ風に読んであげます。さらにクイズでは制限時間があるので、20秒とか30秒で設定し、答えられなかったら「第1ヒント」を、それでも答えられなかったら「第2ヒント」を言ってあげます。クイズはヒントがありますからね。
また、計算問題であれば、5分でどこまでできるかストップウォッチで計測して、正答率が何%であったかを記録していきます。そして新記録更新!というようにしていけばいいでしょう。
これまで、これらの方法を数多く実践してきましたが、効果はかなりありました。親が勉強に関わる場合、はじめの段階はサポートする形で進め、徐々に子どもが自分でできるようにしてあげるといいでしょう。いつまでも親が勉強に関わるというのは現実的ではありませんから。
以上、子どもが自ら進んで学習する仕掛けについて4つお伝えしました。いずれか1つでもよいと思いますので、親が楽しんでできることから試されてみてはいかがでしょうか。
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