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部下の生産性下げる「感情的な上司」がマズい訳 「忖度はびこる組織」を作らない大事なコツ

チームやメンバーの働く環境には気をつかっていても、肝心要の自分自身の働き方がおろそかではいけません。チームの要であるあなたが疲労困憊し、感情の起伏が激しく、判断や言動がぶれているようではチームのパフォーマンスも上がらないからです。

リーダーたるもの、何があっても過度に一喜一憂しないようにしておきたいもの。GLAYのリーダー・TAKUROさんが「自分が尊敬しているリーダーたちは、みんな感情のムラがない」という話をされていたのを聞いて、なるほどと感じたことがありました。

「感情のムラがある人」ほどリーダーに不向き

「なぜ感情のムラがないことが重要なのか」という問いに、「それは自分の気分や感情を一方的に押しつけないことが相手への何よりのリスペクトだからです。それは、家族に対しても同じ」と答えられたからです。確かにそうかもしれません。

日々想定外のことが起きる中で、感情を一喜一憂させていては本人が疲れるだけでなく、その指示に従うメンバーも右往左往することになるからです。最悪の場合、いつもリーダーの顔色をうかがい忖度(そんたく)して動くようにもなりかねません。チームを預かるリーダーにとって、「いつ会っても同じ」という安定感は重要なのです。

では、ストレスが多い会社生活の中で、どうすれば安定したメンタルを維持できるでしょうか。ポイントは「自分で自分の機嫌をとる方法」をいくつか用意しておくことです。

まず物事にはすべて陰と陽(裏と表)が存在すると理解しておくと、イライラが減ります。人間万事塞翁が馬と言われるように、どんなに悪い出来事でも見方によってはいいこともあります。

例えば、車を運転しているときに、誰かに追突されたら、「いい加減にしろ」と思うはずです。ただ、少し見方を変えれば、追突してきたのが大型トラックでなくてよかったとか、自分が追突するほうでなくてよかったと考えることができるかもしれません。

会社でも同じです。例えば、クライアントと相性が悪く、ほかのプロジェクトへ移されたとしても、そこで今まで自分では気づかなかった適性を見いだし、新しいキャリアが開けることもあります。

一方で、外されたことで腐ってしまい、周りに当たったり仕事に身が入らなかったりすると、その先の結果は火を見るより明らかです。

世の中、起きた出来事というのは、その時点では陰でもあり、陽でもあります。結果的によくするか、悪くするかは、その後どう行動していくかにかかっているのです。しかも、その出来事を評価できるのは10年後、20年後といった将来からでしかないと知っておけば、一喜一憂せずにすむはずです。

人間関係においても同様です。「人にはつねに陰と陽の側面がある」と理解しておけば「裏切られた」と人間不信に陥ることなく、心穏やかに仕事を続けていけるようになるはずです。

もうひとつ、メンタルを安定させるうえでネガティブな感情を押し潰さないことも大切です。本当は悲しかったり、いらだったり、嫉妬の気持ちを感じているのに、「人の上に立つ者として、そういう感情を抱いてはいけない」と無理に押し潰していると、気づかないうちに心を蝕み、爆発してしまうことがあるからです。

感情が存在している目的は、ただ感情を感じるためです。自分1人のときでも構いません。つらいときは「つらいなぁ」と口に出し、腹が立ったら「むかつくなぁ、嫌になるな」とつぶやくと少し気持ちが浄化されるはずです。自分がどういう気持ちでいるのか、あえて紙に書き起こすのにも同じ浄化効果があります。

ポジティブ・シンキングの罠

一方で、最近もてはやされるポジティブ・シンキングは過度にやりすぎると危険です。陽への執着が、「陽」でないことへの恐れや、「陰」を受容できなくなる状況を生み出すからです。すると、想定外のネガティブな出来事に遭遇したときに、「そんなはずはない」と事実を受け入れることができずに自分をだまし続け、そのあとの改善に移ることが難しくなります。

リーダーは、起きた出来事や、その時々で持つ感情をまずは素直に受け入れつつ、時に右に左にかたむきながらも、最後は「心のやじろべえ」をバランスさせることを意識しましょう。感情を感じ尽くし、味わっていくという心構えです。

仕事において「あの行動はなかったことにしたい」という後悔は誰しもあります。

「なぜ、あのときにこうしなかったのか」と悔やんでも時間は戻らず、前へ進むだけなのでどうしようもありません。飲んで発散という手もありますが、それでは心だけでなく体も懐も傷めてしまいます。日々積み重なる後悔に対し、私たちはどう折り合いをつけていくと良いのでしょうか。

今、「セルフコンパッション」という概念が注目されています。

不完全な自分を優しく受け入れることで、自信を回復させる方法です。あなたという存在は、あなた以下でもあなた以上でもありません。実力不相応に背伸びをしても、すぐに足がつってしまいます。まずは等身大の自分をそのまま受け入れるという姿勢が大切です。

完璧主義は禁物

もし「周りから下に見られる。嫌われたくない」と必死になっているとしたら、それはほかならぬ、あなた自身が「本当の自分は駄目で嫌われる」と思い込んでいるせいなのかもしれません。

何かと「出る杭は打たれる」今の社会において、あなたまで自分の敵に回ってしまっては味方がいなくなってしまいます。

とくに完璧主義は禁物です。「100点の出来ではないかもしれないけど、今の自分ができる100点でやればいい」ぐらいの心持ちでちょうどいいのです。

これからのチームは、あなた自身がスーパーなリーダーでなくても、チームさえうまく機能していれば必ず結果はついてくるからです。

「よく見せたい」よりも「よくなりたい」という気持ちこそ、大事にしていきましょう。