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急に「エコグッズ」に開眼する若者の隠れた本音

今、日本の若者たちの間で急速に「環境意識」が高まっていることをご存じでしょうか。

一部のメディアでは、やたらと環境意識の高い、いわゆる「意識高い系」の若者が特集されているものも目にします。一方、毎年、夏になれば海を汚す若者たち、ハロウィンの時期には街を汚す若者たちもメディアで取り上げられます。実際のところ、いまどきの若者たちの「環境意識」はどうなっているのでしょうか?

今回も現役大学生たちが、このテーマについてレポートしてくれます。

若者のエコ意識はどれほど?

写真上段左から髙杉真由香(慶應義塾大学 2年)、加藤 耀(東京理科大学 1年)、写真下段左から山崎瑠莉(慶應義塾大学 1年)、山本理沙(慶應義塾大学 1年)

若者たちの間で、今年に入って従来以上に「環境意識」が高まってきている。スターバックスで紙ストローが導入されたり、レジ袋が有料化されたり、エシカルブランド以外の企業でもサステナブルファッションが取り入れられたりするなど、さまざまな取り組みが見られるようになった。

こうした中、若年層では従来のエコ意識とは少し異なる考え方が広まりつつある。それは、周囲の人に「自分は『エコ意識』を持っていて、環境に配慮しているいい人だ」とアピールしたいというものである。

世間のエコ意識が強まってきている今、頑張りすぎている感じを出さずにさりげなく環境意識が高いと思われることが、若者にとって一種の自己ブランディンングになってきているのだ。

これに伴い、さりげなく「エコ意識」をSNS上でアピールする若者が増え、そのコンテ ンツとなるエコアイテムも多く出てきている。本来のエコ意識ではない「エセエコ」を自己ブランディングとして使う、いわば「エゴ」のために利用する「エセエゴ」といってもいいかもしれない。

今回は、このような意識を持った若者たちに刺さるアイテムについて調査した。

① マイストロー
ダイソーの「マイストロー」(写真:筆者提供)

マイストローとは、お店で配布されているストローをもらわなくていいように持ち歩く自分用のストローである。2018年に、プラスチックのストローが亀の鼻の奥まで刺さった動画が世界中で拡散したことをきっかけに、海洋生物を守るためにと、世界中で持ち歩く人が出てくるようになったとも言われている。

 

日本では、最近になってマイストローが普及するようになった。スターバックスなどの大手チェーンが紙ストローを導入したが、使い勝手が悪いとしてマイストローを持ち歩く若者が増えてきた。そして、最近普及し始めているマイストローは実用性だけでなく、SNSに投稿した時に映えるデザイン性の高いものが多い

 

「My sexy ストロー」(写真:筆者提供)

芸能人やインスタグラマーもマイストローの所持を発言したり、男性アイドルグループ・Sexy zoneのライブグッズとなったことでも話題を呼んだ。

「My sexy ストロー」はSexy zoneの一員が環境問題を考慮して、ジャニーズで初めてのエコグッズ販売を提案したとも言われている。あるファン曰く、推しのメンバーの写真と一緒にマイストローを写した写真をSNSに載せて楽しみ、実際にストローを活用している人も多いと言う。この取り組みを通じてメンバーの環境意識の高さに驚くとともに、環境問題について自然と考えさせられたと、周囲のSexy zoneファンの友人は言っていたそうだ。

ブランドアイテムなど高級なものをSNSに載せるのではなく、身近なアイテムで他人との違いを出す点は、自分をより良く 見せたいと思いつつも周りから意識が高すぎると思われることを恐れているSNS世代特有の傾向のひとつなのかもしれない。

スターバックス、タリーズ、ローソンも……

②マイボトル

環境保護のために、繰り返し使うことのできるマイカップの持参を推奨する飲食店が年々増えている。スターバックス、タリーズ、ローソン、カフェドクリエ、上島珈琲店など、マイカップを持っていくと割引になる制度を導入する店舗も一般的になってきた。

若者たちの間では、割引を受けられることはもちろん、見た目がカラフルで可愛く種類が豊富なことが好まれている。見た目もおしゃれなのに、さりげなく「環境に気を遣っています」というアピールができる。

「stojo(ストージョ)」(写真:筆者提供)

今年、SNSで話題となったもののひとつが、「stojo(ストージョ)」というニューヨーク発のマイカップだ。特徴的なのはその形状で、飲み終えた後には、ストローや蓋を折りたたみ、ポケットに入るほど小さくして持ち運ぶことができる。かわいい見た目の一方、漏れ防止や耐熱といった機能性にも優れている点が受けている。

「Afternoon Teaのマイボトル」(写真:筆者提供)

そのほか、若者の間で人気になっているひとつが、Afternoon Teaのマイボトルだ。

シンプルかつカラフルで、温かい飲み物も冷たい飲み物も入れることができる、といった点では過去のマイボトルと同じだが、今人気なのは今年発売されたばかりのシリコン製のマイボトルだ。軽量な点などが受けているようだ。

「見た目も可愛く、SNS上で映える見た目に加え、環境に 気を遣っている自分をアピールすることができるため、自己満足にも繋がる」と、この商品をSNSに投稿した若者は語っていた。

昨今、若者の間でもミニマリストが増加傾向にあり、荷物は少ない方がいい、といったムードがある。その点でこうした小型化できるマイボトルが流行っている側面がある。

しかし「エコ」の面ではどうかというと、若者の意識には差がある。実はエコ意識が高くても、「それを全面に押し出すのは抵抗がある」とこれらの商品を投稿した若者たちは語っていた。その点、こうしたおしゃれなグッズであれば、それが悪目立ちしない。こうして、さりげなくエコ意識をにじませられるマイカップが流行している面もあるかもしれない。

③エコバック

2020年7月1日からレジ袋の有料化が義務付けられたことに伴い、コンビニで軽食を購入する時から服や雑貨を購入する時に至るまで、多くの場所で袋にお金を支払わなければならなくなった。

こうした中、エコバッグを使用する若者が増加している。若者たちの中には、単なる「袋」では飽き足らず、自分を表現できるお洒落なファッションアイテムという要素を求める人も少なくない。

Franc Francの「バッグチャームエコバッグ」(写真:筆者提供)

たとえば、Franc Francの「バッグチャームエコバッグ」が人気だ。使用時以外は手の平サイズほどの大きさに収納することができるという利便性のほか、普段のバッグにチャームとして付けることができる点から、自分の個性を表現することができるということが人気の理由だ。

実際にこの商品を使用している女子大学生のAさんは、友人のInstagramのストーリーズ投稿でこの商品を見て、デザインの可愛さとチャームとしてつけられる点に惹かれ、購入を決めたという。数あるエコバッグの中では、比較的小さい容量だが、コンビニやドラッグストアで小さな買い物をした時に重宝しているそうだ。

今、コンパクトで利便性の高いものから、お洒落アイテムとしてSNSに投稿したくなるデザイン重視のものまで、多様なエコバッグが急速に増えており、そうした中で若者たちの話題に上ることも急増している。

スニーカーにもブームが

④スペースヒッピー

サステナブルファッションという言葉が近年出てくるなど、環境を意識したファッションに若者たちの間で注目が集まっている。日本ではまださほど浸透しているとは言えないが、今年、NIKEから発売されているスペースヒッピーというスニーカーが話題だ。これは、ペットボトル、Tシャツ、糸くずをリサイクルした再生素材を85%以上使用した商品。

NIKEの「スペースヒッピー」(写真:筆者提供)

通常、サステナブルファッションは、デザインより作り方が重視され、値段も高いことも少なくない。しかし、この靴は再生素材から作られたとは考えられないほどお洒落で、値段も2万円弱と普通の靴とさほど変わらない。環境にいい商品であるのにも関わらず、デザインや値段において普通の靴に引けを取らないという点が人気の要因になっている。

この商品を購入した大学生のCくんは「環境にいいからということよりも、シンプルにデザインがカッコよくて購入した」と語っていた。

また、服と異なり、靴は高頻度で履くものであるため、新しい靴を買えば友達との間で「新しい靴買ったの?」と話題になりやすい。

 

実際にCくんは、この靴を学校に履いて行ったら友達が「『新しい靴じゃん』と触れてくれてそこで廃材から作ってる靴なんだという話になった」という。自分から環境への配慮をアピールしているわけではなく振られた話題の中で環境の話につながるため、嫌味にならずエコ意識をアピールできているようだ。

以上の事例を見ると、多くの若者はエコを本気で追求しているというより、さりげなく自分のエコ意識をアピールできる、お洒落なアイテムを求めている。このような需要に応えているために、ここまでにあげたアイテムが人気化しているといっても過言でなさそうだ。

今の若者たちにとっては、エコ意識をアピールすることが個性となり、自分のイメージをよくする一種のステータスともなっている。しかし、この「エセエゴ」をきっかけに、次第に若者たちは今後しっかりとエコを意識するようになっていくかもしれない。

原田の総評:そこから見えてきた「可能性」

学生たちの「今時の若者たちの環境意識」についてのレポートはいかがでしたでしょうか。

もちろん、若者と言っても様々なタイプがおり、環境への関心が高まる時代、そして、環境教育が増える中で育ってきた今時の若者の中には、純粋に環境意識を高めている人たちも少なからずいると思います。特に欧米からの帰国子女を中心に、こうした意識が広められる傾向もあるようです。

私は数年前、スウェーデンとデンマークにて、たくさんの現地の若者たちに家庭訪問調査を行なったことがあります。調査中、まだあまりお金のない学生たちから、「値段が上がっても環境に良い商品だったら買う」と多くの若者たちが言っていたのに驚いたことがありますが、一般的な日本の若者の多くは、こうした意識にまでは至ってないように思います。

かわりに多くの日本の若者の間に生まれた環境意識が、「ファッション環境意識」で、インスタ映えを中心に、環境問題をファッションとして捉えるムーブメントのようです。

本物の環境意識を若者たちに身につけてもらう教育は、国をあげて、時間をかけてやって頂くとして、賛否はあるにせよ、結果的に環境に良いことをしているのであればよい、と捉えることもできるかもしれません。

こうして考えていくと、今後、今時の若者が離れていると言われる「政治」なども「ファッション政治意識」として、若いからあまり関心が持ちようもない「健康」も「ファッション健康意識」として、若者たちの間で盛り上がり、市場が拡大されていく可能性はあるかもしれません。