記憶力をアップする方法5つ。今日から変えられる生活習慣

記憶力がアップすれば、仕事や学業におけるさまざまなシーンで役立ちます。仕事の手順の暗記、試験に向けての勉強、人前での発表に向けての原稿の暗記。記憶力が必要とされる場面が幾度となく現れますよね。あなたは、記憶は得意ですか?

ちょっと記憶力には自信がないという方に朗報です。普段の過ごし方を少し工夫するだけで、記憶力はアップさせられます。今回は、記憶力をアップさせる方法について紹介します。

記憶力とは

記憶力をアップさせる方法を紹介する前に、まずは「記憶力」とは何か簡単に説明します。そもそも記憶は「今日の朝食に何を食べたか」というように数時間から数日で消えていってしまう短期記憶と、幼い頃に先生から怒られた経験のように何年経っても忘れない長期記憶の2種類に大きく分けられます。したがって、長期記憶を数多く作り出せる人が記憶力が良い人ということになりますね。

ここで重要なのが、長期記憶は短期記憶から作られるということです。自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授によれば、私たちが長期記憶を形成する際、脳内の中心に位置する海馬という領域では、必要な短期記憶と必要のない短期記憶が振り分けられ、必要な短期記憶の情報だけが長期記憶へと変換されているのだそう。

つまり、海馬がよく働き、短期記憶を長期記憶へと効率的に変換できる脳が、記憶力が良い脳だと考えられるのです。 次の項目からは記憶力がアップする習慣を5つ紹介します。

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記憶力がアップする方法1:よくかんで食べる

記憶力がアップする習慣の1つ目は、よくかんで食事をすることです。 関西福祉科学大学の重森健太教授は、著書『走れば脳は強くなる:体を鍛えながら記憶・思考・発想力を高めるコツ』のなかで、よくかむとコレシストキニン(CCK)が分泌されると伝えています。

このCCKについては以前から、海馬が含まれる領域である、中枢神経系の活性化作用が報告されていました。そして、2019年1月9日に「Neurobiology of Aging」のオンライン版で公開されたアイオワ州立大学の研究では、CCKレベルが高いほど「記憶スコア」が改善されるなど、記憶力をアップする効果が見出されたそうです。

忙しいと、食事をしっかりとかんで食べる機会は減ってしまうかもしれません。しかし、そういうときほど、よくかむことを意識し、記憶力をアップさせましょう。

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記憶力がアップする方法2:タンパク質をとる

記憶力がアップする習慣の2つ目は、タンパク質を摂取することです。先ほど述べたとおり、CCKレベルが高いほど、記憶力がアップする効果が見られています。そして、このCCKレベルは、タンパク質を摂取することによっても向上させることができるそうです。

昭和女子大学の渡辺睦行准教授が著した『いちばんやさしい管理栄養士国家試験合格講座最新出題基準対応』では、脂質が十二指腸に達すると、コレシストキニン(CCK)が分泌すると説明しています。 また、臨牀消化器内科の医学書にも、脂肪やタンパク質などを食べることによって、小腸から分泌されるとあります。

(STUDY HACKER|「よく噛む」と記憶力が上がる!? “ゆっくり食事” はやっぱり脳に最高だった。

勉強や仕事に忙しくなると、夜食をとることがあるかもしれません。そういう場合は、おにぎりやパンなど、炭水化物で食事を済ませがちですが、卵を食べるなど、タンパク質を取ることを意識しましょう。記憶力のアップが期待できますよ。

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記憶力がアップする方法3:インスリンを活性化させる

記憶力がアップする習慣の3つ目は、インスリンを活性化させることです。インスリンはすい臓で分泌され、体内血糖値を維持するホルモンとして知られています。広島大学名誉教授の鬼頭昭三さんによれば、脳内でのインスリンの働きが悪くなることによってマウスの学習能力が低下した一方、インスリンを補給することによって学習能力が元に戻ったのだそう。

したがって、インスリンの働きを高めることができれば、記憶力を向上させることができるかもしれないのです。では、インスリンの働きをよくするためには、どうすればよいのでしょうか?

内臓脂肪型肥満になってしまうと、インスリンの働きが徐々に悪くなります。したがって、とにかく肥満にならないよう、体重を適正にコントロールすることがインスリンの働きをよくするうえで大切です。

日本肥満症予防協会によれば、普段からエレベーターを使わない、ちょっとした距離は乗り物に乗らずに歩くなどのことで、特別に運動をしなくとも、肥満対策になるそうですよ。記憶力をアップさせるため、ぜひ試してみてください。

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記憶力がアップする方法4:充分な睡眠をとる

ここまでは特に海馬に関連した、記憶力がアップする生活習慣を紹介しました。ここからは、脳全体に影響がある生活習慣を紹介します。

記憶力がアップする習慣の4つ目は、十分な睡眠をとることです。睡眠には、脳が取得した情報を取捨選択し、必要な情報を記憶として定着させる役割があるからです。早稲田大学研究戦略センター教授・枝川義邦氏は、記憶力を高める最適な睡眠を紹介しています。

記憶を維持する上で最適な睡眠時間は6時間半~7時間半とされています。試験対策などで寝ずに勉強をすると、記憶力と同時に集中力も落ちるので逆効果。

(引用元:NIKKEI STYLE|物忘れを防ぎ、記憶力を高める10の習慣 太字による強調は編集部が施した)

毎日充分な睡眠時間を確保するように心がければ、記憶力のアップが期待できますよ。

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記憶力がアップする方法5:座りっぱなしにならない

記憶力がアップする習慣の5つ目は、座り続けないことです。勉強などに必死になっていると、机の前に座り続けて、全く移動しないという方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、座り続けることは記憶力を劣化させるということが分かっているのです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のPrabha Siddarthさんらのチームは次のような研究結果を報告しています。

日頃から座っている時間が長ければ長い人ほど、「記憶の形成」に欠かせない脳の領域の皮質が薄くなっていたとのこと。しかも、その脳の領域と、運動強度との間には、相関関係が見られなかったそうです。

(引用元:STUDY HACKER|「座りすぎ」で記憶力が低下する!? 仕事中に取り入れたい、脳機能回復のための3つの習慣

座りすぎによる記憶力の低下を防ぐには、こまめに休憩をとり、「立ったり座ったりする」機会を増やすことが大切です。予防としては次の3つがおすすめです。

  1. デスクワークと、デスクワーク以外のタスクを交互に入れて、強制的に立ったり座ったりを繰り返す。
  2. 社内で情報をやり取りする際には、ビジネスチャットやメールだけで済ませず、席を立ち対面で話す。
  3. 座りながら右足・左足交互にかかとの上げ下ろしをする。

記憶力をアップさせるため、ぜひ試してみてください。

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記憶力がアップするトレーニング

続いて、記憶力がアップするトレーニングをひとつ紹介します。それは、普段から「思い出そうとする時間」を長くとることです。例えば、単語帳を使って英単語の暗記を確認する際、思い出せない単語をすぐに調べようとするのではなく、「これ、なんだったかな」と考えることが大切なのです。

『脳が認める外国語勉強法』の著者であり、わずか数年で4カ国語をマスターしたというガブリエル・ワイナーさんは、いまにも思いだせそうな瞬間は記憶にとって最適なのだといいます。その理由は、思い出したいワードを必死に頭の中で検索し始めると、脳の扁桃体(へんとうたい)が「生死にかかわる事態が起きた」と勘違いするからなのだそう。

扁桃体は、感情の動きにともなう出来事に関連付けられる記憶において、主要な役割をもつ脳の領域。探している単語が見つかった暁には、生死にかかわる緊張から解放されるわけですから、強烈な記憶として残るということです。このように、普段から思い出そうとする時間を長くとれば、どんどん記憶力はアップするはずですよ。

記憶力をアップさせるためには、普段の生活習慣を整えることが非常に重要です。海馬に良い習慣を心がけ、ぜひ素晴らしい記憶力を手に入れてくださいね。