16カ月の調査であぶり出された「GAFA」12の罪

アメリカ議会下院は世界4大テクノロジー企業が市場支配力を乱用していると厳しく非難する報告書をまとめた。10月6日に公表された報告書はアマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルに対する16カ月間にわたる調査をまとめたもので、各社の事業分割を提案している。反トラスト法(独占禁止法)に何十年かぶりの大変革を迫るものだ。

報告書に記された各社の主な「罪状」は次のとおり。ただし、この報告書は下院で過半数を握る民主党議員からしか賛同を得られていない。

アマゾンとアップルの「罪」

アマゾン

——ネット通販最大手、そして電子商取引マーケット最大手としての市場支配力を自社に有利となるように利用し、潜在的な競争相手の事業を妨害している。電子商取引のルールを牛耳っているのはアマゾンだ。アマゾンのマーケットプレイスに出品する第三者の販売業者は世界でおよそ230万に上るが、うち37%はアマゾン以外に収入源がなく、アマゾン依存になっていると報告書は指摘する。事実上、アマゾンに手足を縛られているというわけだ。

——アマゾンはマーケットプレイスの販売データを吸い上げ、売れ筋の商品を特定。これをマネして、自社で類似商品を提供している。それも、一段と安い価格をぶつけてくるのが一般的だ。元従業員は下院の調査委員会にこう語った。「アマゾンは1にも2にもデータ企業であり、データをたまたま物販に利用しているにすぎない」。

——クラウドコンピューティングで圧倒的な市場占有率を持つアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、ソフトウエアを無料で公開していることの多いオープンソース開発者を一部で不当に扱ってきた。オープンソースのあるエンジニアはこう証言した。「骨の折れる開発作業をしているのは私たちなのに、大企業がそれをかっさらって利益を上げている」

アップル

——iPhoneとiPadのアプリ配信サービスを独占し、アプリ開発者の売り上げから過剰な手数料を徴収、「尋常でない利益を上げている」。アップルは多くのアプリの売り上げから30%の手数料を徴収しており、この状態は10年以上前に手数料制が導入されたときから続いている。これにより、消費者に対する値上げや開発費の削減を余儀なくされたアプリ開発者も少なくない。

——アプリストアでの支配力を乱用し、競合他社を痛めつけている。競合他社のアプリの検索順位を引き下げたり、顧客との連絡手段に制限を加えたり、アプリストアでの取り扱いを取りやめたりすることによって、だ。アップルがルールを支配するアプリストアには不透明な点が多く、アプリ開発者が異議を申し立てる手段はほとんどない。

——アップルは自社のアプリやサービスをアップル製の端末にプリインストールし、デフォルトの設定とすることで、自らが有利となる状況をつくり出している。例えば、iPhoneの利用者がウェブページ、楽曲、または住所のリンクをクリックすると、通常はアップルのアプリが立ち上がる。さらにアップルのサービスはアップルのソフトウエアの深い部分で統合されていることから、サードパーティーのアプリやサービスによる競争が難しくなっている。

「内なる独占の下でのなれ合い」

フェイスブック

——ソーシャルネットワーキング市場におけるフェイスブックの独占力は「極めて強固」であり、同社は戦略的買収やサービスの模倣などを通じて競争相手を排除してきた。買収したデータ分析企業オナボなどの技術を活用することでフェイスブックは、アプリストアで急成長し、今後競争相手となる可能性のあるサービスの出現を「いち早く察知」できるようになっている。

——フェイスブックはあまりにも強大となったため、内部では最大の競合相手はグループ内に存在すると考えられるようになっている。傘下のインスタグラムが急速に成長し、フェイスブックの人気を脅かすようになったため、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は戦略を素早く変更。ある従業員はこれを「内なる独占の下でのなれ合い」と呼んだ。

——競争の不在から、利用者のプライバシーが侵害されている。偽情報や有害コンテンツが同社のあらゆるサービスで拡散されているが、こうしたサービスを定期的に利用しているユーザーは30億人を超える。

グーグル

——第三者から許可なく情報を収集して検索能力を向上させることで、検索業界における独占的地位を維持してきた。さらにグーグルは自社サービスが上位に、競合相手のサービスが下位に表示されるように検索の仕組みを変更している。

——利用者が真っ先に使う検索エンジンがグーグルとなるように、あらゆる策をろうしてきた。過去にはスマートフォンのメーカーに対し、グーグルが手がけるアンドロイドOSを利用する条件として、グーグル検索のインストールとアプリストア「グーグルプレイ」の利用を強要していた。アップルには100億ドル以上を支払い、iPhoneでグーグルをデフォルトの検索エンジンとするよう働きかけた。ブラウザの「グーグルクローム」では、利用者が別の検索エンジンに切り替えるのを防ぐ対策が講じられている。

——9つのサービスで10億人を超す利用者を持つグーグルは大量のデータを入手し、これを「ほぼ完璧な市場戦略情報」として利用することで、独占的地位の強化につなげている。人々がどのような新製品や新サービスを利用しているかリアルタイムで情報を追跡することで、競争相手の動きを細かく監視しているのだ。