「的外れだ」という科学的根拠
まず、なぜ先に挙げたアドバイスが的外れなのでしょうか。それは、人は生まれつきそれぞれに違っているというのを忘れているからです。誰かの行動が無礼かどうかは、あくまで「された側」が決めることです。
無礼な態度のネガティブな影響を乗り越えるのに最も重要なのは、「自分は成功している」と思えることです。
たとえなにも対策を講じなくても、自分自身がエネルギーに満ち、生き生きと活動していて、しかも日々成長していれば、またそれを実感できていれば、誰かに無礼な態度を取られても、さほど悪影響を受けることはありません。
無礼な態度が、その標的になった人にとってどのくらいストレスになるかは、立場の上下によっても大きく変わります。自分より上の立場の人に無礼な態度を取られた場合、これまでの調査では、全体の3分の2近くのケースで、同等からそれ以下の人に同様のことをされた場合よりもストレスが強くなるとわかっています。
また上司の命令や、会社の方針により、無礼な同僚とともに働くことを強制された場合には、絶望感が強くなることもわかっています。
マウスを使った実験、または人間を対象にした実験では、ストレスのかかる状況に直面した時、自分の力でその状況を変えるのが難しい場合に、苦しみは特に大きくなることがわかっています。自分で何もできないという絶望感との戦い方が重要になるのです。
無礼な態度を取る人間がいれば、それにうまく対処する必要があります。
いくつもの業界を対象に実施した調査でも、「自分は成功している」と思える人は、健康で、なにかあっても回復が早く、また仕事への集中力が途切れにくい、という傾向があるとわかっています。
成功しているという自信がわずかでもあれば、それが自分を守ってくれます。ストレスを感じにくく、注意力が散漫になることも、考えが後ろ向きになることも少なくなるのです。
また、自らを成功しているとみなす社員は、自分に対する自信も平均的な社員より52パーセント強く、状況を自分の力で変えられるという気持ちも強いこともわかっています。
仮に他人から無礼な態度を取られたとしても、それによって考えがネガティブになったり、集中力が削がれたり、自らを疑うようになったりすることはあまりないということです。
仕事への悪影響も軽減
自分は成功していると思える人は、悪いことが起きても、それを簡単にいいようにとらえ直すことができます。そのため、大きく傷つくことが少ないです。
あなたに対して無礼な態度を取る人間がいるとします。そのままでは何もいいことはありません。その状況から何か学べることはないか、と自分に問いかけるだけで違うでしょう。
ある状況で私たちが幸せを感じるかどうかは、脳内の神経細胞の配線パターンによって半分くらいは決まるといいます。そして、40パーセント程度は、起きた出来事を私たちがどう解釈し、その出来事にどう反応するかで決まります。また残りの10パーセントは、私たちを取り巻く環境によって決まります。
同じ出来事をどう解釈するかは、自分の意思である程度は変えることができます。出来事にどういう意味を持たせるか、どういう物語を与えるかを自分で決めることも不可能ではありません。自分の気分を悪くするかどうかも、部分的には自分で調節できるのです。
強くなれば、どんな困難も乗り越えられるなどとは言いません。それはあまりに非現実的です。しかし、他人に言われたこと、されたことを気にしすぎないように注意することはできます。
仕事で成功していれば、ひどい態度を取られても、それをあまり気に病まずに済むことが多いです。投げかけられた言葉、されたことを悪い方に取ることは少なくなります。何かあっても、自分は、自分のしていることは間違っていないと思うことができるのです。誰かに無礼な扱いを受けたときに仕事の業績が悪化することも少なくないです。
成功の自覚がある人は、ない人に比べ、他人の無礼な態度の業績への悪影響が34パーセント少ないというデータもあります。これは大きな違いでしょう。
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