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面白いほどわかる「プログラミング教育」のツボ

小学校のプログラミング教育の中身は曖昧

今年度よりいよいよ小学校で必修化された「プログラミング教育」ですが、保護者の方々からは「ぜんぜん情報がない」「何をするのかよくわからない」といった声が多く聞かれます。

それもそのはずです。私は学校の先生方にもアドバイザーとして関わることが多いのですが、その先生方でさえよくわかっていないというのが現状ですから。

小学校でのプログラミング教育については、文部科学省による指針や教育指導案集などは発表されているものの、どのような教材でどのように行うかといったことは定まっておらず、各学校の裁量に任されています。

また、「プログラミング」という独立した科目が生まれるわけではなく、「算数」や「理科」、「総合的な学習」といった既存の授業の中でうまく取り入れたり、授業の中以外では「クラブ活動」といった形で取り組んだりといったことが推奨されています。

中学校では「技術・家庭」、高校では「情報」という必修科目の中でプログラミングの授業が取り入れられますが、小学校にはこれらに該当する教科がないため、このような曖昧な形がとられているようです。

ゆくゆくは「プログラミング」が独立した教科として扱われる日が来るとは思いますが、それはまだまだ先になるでしょう。

政府は以前より、小学校に1人1台のパソコンの配備を目指すと言ってきましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、そういった体制がまったく整っていませんし、先生も保護者も「どうするのかよくわからない」状態になってしまっているのは当然ともいえます。

記憶に新しいところでは、2012年度より中学校で必修化された「ダンス」がありますが、実はこれも「最近、やっと定着してきた」という学校もあるようで、国の政策と現場との温度差が見られます。

プログラミングコードは書かない

「プログラミング教育」においても、例えば生徒全員にタブレットを配るなどして積極的に取り組む私立の小学校などもあるでしょうし、「少しずつやれるところからやっていこう」という学校もあり、各学校によってかなり差が出てくるのではないかと思われます。

そうなると、中学校でのプログラミング授業のスタート時点ですでに差がついてしまっているということになりますから、小学生の段階で後れをとらないよう、家庭で学習しておきたいというニーズも増えるでしょう。

そこで問題になってくるのが、「プログラミングを親が家庭で教えられるのだろうか?」という点です。プログラミング経験がなかったり文系出身であったりしても、プログラミングを子どもに教えることができるのか、心配な方も多いでしょうから、その点について解説していきましょう。

まず、「プログラミングっていうと、英文字や数値でコードを書いていく、あれでしょ?」と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、そうではありません。

現在、プログラミング学習の主流となっているのは、「ビジュアルプログラミング」というもの。これは、ビジュアル的なブロックを組み立ててコンピューターに指示するスタイルのツールで、プログラミング言語を知らなくても感覚的に使うことができます。その代表的なツールの1つが、「Scratch(スクラッチ)」です。

スクラッチはMIT(マサチューセッツ工科大学)で開発された、プログラムを学習するためのツールで、多くの教育現場で使われています。パソコンでもタブレットでも使え(タブレットでも動作しますが、一部機能しないブロックがあります)、無料で誰でも利用できるのが特長です。

現在、海外でも国内でも、プログラミングの導入としてもっとも使われているツールがこのスクラッチです。使いやすく、無料なので、プログラミングの勉強に初めて取り組む際には、まずスクラッチから始めてみるといいでしょう。

使い方は簡単で、「〇歩動かす」「(右回りもしくは左回りに)〇度回す」「〇〇へ行く」などと書かれた「ブロック」を上から下に並べていくだけ。これにより、パソコン内のグラフィックを動かすことができます。

プログラミングの考え方は難しくありません。大きく分けると、次の3つだけです。

① 順次実行
② 繰り返し
③ 条件わけ

まず、「順次実行」ですが、「上から順に実行していく」という考え方です。ちょっとした順番の違いで結果が大きく変わるので、この順番を考えるのも、プログラミングの楽しいところです。

そして「繰り返し」は、同じことを何度も繰り返して実行するときに使います。例えば、ネコのグラフィックをどんどん前に進ませたいときに、何回も同じブロックをクリックする必要はなく、「繰り返し」を使えば1回クリックするだけでどんどん前に進みます。

最後の「条件わけ」は、「もし〇〇ならA、もし△△ならB」というように、条件によって実行するプログラムを変えるときに必要な考え方です。例えばキャラクターを動かすゲームであれば、「Aボタンが押されたらジャンプする」「Bボタンが押されたらしゃがむ」という動きは、「条件わけ」を使っています。

実は、スマートフォンでやるゲームや、YouTubeといったサイトの仕組みなど、プログラムで動いているものはすべてこの「順次実行」「繰り返し」「条件わけ」でできています。

スクラッチでも、この3つの考え方だけでオリジナルの作品を作ることができるのですが、このツールの優れている点は「音楽」や「グラフィック」を自分で作成したり、それらを組み合わせて「動く絵本」や「マンガ」「アート」「ゲーム」「音楽作品」を作ったりと、幅広い表現ができるところです。

つまり、この「スクラッチ」は、プログラミングが軸ではありますが、新しいモノ作りのツールであり、子どもの得意なものや才能をより伸ばしてあげることができるものなのです。

ゲーム感覚でできるので、楽しみながらやりやすいですし、ほかの教科は苦手でもプログラミングは得意という子もいるでしょうから、大きな自信につながることでしょう。

親子で取り組めるビジュアルプログラミング

このように、スクラッチのようなビジュアルプログラミングであれば、特別に複雑なゲームを作るわけでなければそれほど難しくはありませんし、ご家庭にパソコン環境があれば無料で簡単にできますから、親世代でも子どもと共にプログラミング学習に取り組むことができるでしょう。

それに、親が教えてあげるといっても、きっとそれは最初だけ。子どものほうがあっという間に知識を吸収していきますから、つまずいたときにだけ「たぶん、順番が違うんだね」といったアドバイスをするくらいで、子どもは自力でどんどん成長していくでしょう。

 

スクラッチには、サイト内の漢字表記をひらがなに変更するモードがありますから、早い子では、小学1年生でも取り組んでいます。

また、親は子どものそばについて手取り足取り教えてあげるのではなく、きっかけだけ与えてあげるだけでもいいと思います。

「ビジュアルプログラミング」に入る前にも、例えば、身近にあるプログラミング技術が使われているもの……自動改札機や自動販売機、センサー式エスカレーター、ロボット掃除機、テレビゲーム、スマートフォンのアプリなどについて「これもプログラミングで動いているんだよ」と教えてあげるだけでも、プログラミング教育の入り口になります。

また、今はYouTubeで「子どもプログラミング」などと検索すればたくさんの動画も見られますので、それらを見せてあげるのもいいでしょう。

興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。