「熱中症」で見落とされがちな3つのポイント

首都圏では連日最高気温30度以上が続き、1週間で1万人以上が熱中症で搬送されるなど酷暑が続いています。

近年は、在宅勤務の増加に伴い、炎天下での運動による熱中症だけでなく、屋内で発症する熱中症が増えてきていることが問題視されています。子どもや高齢者のみならず働く若い世代でも注意が必要です。

熱中症とは?

以前は日射病・熱射病・熱失神・熱痙攣などさまざまな呼び方がありましたが、現在はこれらをまとめて「熱中症」と呼び、その重症度を1~3度の3段階に分けて表しています。

1度:(日射病)「自身で対処できる段階」
めまい、立ち眩み、生あくび、大量発汗、強いのどの渇き
2度:(熱疲労)「医療機関の受診をすすめる段階」
頭痛、嘔吐、倦怠感、軽い意識障害
3度:(熱射病)「入院が必要な段階」
重い意識障害とともに肝臓や腎臓、脳など臓器に影響

ただし、これらはあくまでもガイドラインに沿った分類です。一口に倦怠感といっても「ちょっとだるい」「ぐったりして動けない」というように症状はさまざまで、症状も刻一刻と変わるため、いつ受診するべきかを日常生活で判断するのは大変難しいことです。

すると元気に歩いてきて「なんとなくだるい」とおっしゃるような不要な救急受診が起こる一方、命に関わる症状にもかかわらず受診しないケースも出てしまい、医療機関側でこれをすべてケアするのは非常に困難です。

したがって、「まず熱中症にならないよう自分自身で予防する」ことが重要です。熱中症の予防には3つのポイントがあります。それは「水分補給」「暑い環境からの回避」「冷却」です。

熱中症では汗などで水分とともに塩分が失われるため、0.1~0.2%の食塩水、つまり1Lの水に対して1~2g(およそひとつまみ)の食塩が含まれるものがよいとされています。水やお茶だけでは「水分」は補給できても塩分を含まないためうまく身体に吸収されません。

最適な飲みものは経口補水液(いわゆる「OS-1」)であり、これには医療用の輸液に近い成分が含まれています。最近では高齢者でも安心して飲めるよう、誤嚥のしにくいゼリータイプのものも市販されているようです。こちらももちろん同様の効果があります。

市販のスポーツドリンクも塩分が含まれるため熱中症予防に効果的ですが、経口補水液に比べて塩分が少なく、糖分が多いことに注意する必要があります。飲みすぎは「ペットボトル症候群」と呼ばれるような、血糖値が上がるためにのどが渇き、またスポーツドリンクを飲むという悪循環に陥る可能性があります。

経口補水液の味が苦手な方は、スポーツドリンクに頼りすぎることなく、梅干しやお味噌汁、塩飴と一緒に水やお茶を摂取することで水分と塩分を同時に補うようにしましょう。

逆に水分補給として不適切なものは、コーヒーなどカフェインを含むもの、そしてお酒です。嗜好品としておいしく飲むのはいいことですが、カフェインやアルコールには利尿作用があるため、水分補給という意味ではむしろ脱水になってしまうのです。

飲み物を飲むタイミングは「のどが渇く前に、こまめに」が基本です。とくに寝起きやお風呂上りには身体が脱水状態になっているため、コップ1杯の飲料を必ず飲むようにしましょう。1日の目安となる水分量は約1.2Lです。

暑い環境からの回避と冷却の方法

熱中症は、身体の外への熱放出がうまくできず体温が著しく上昇した状態をいいますが、これには温度・湿度・風速・太陽からの日射が関係します。見落とされがちなのは湿度で、湿度が高いと汗が蒸発せず熱がこもってしまいます。湿度の高い日は、たとえ曇りでも水分補給を十分行うようにしましょう。

室内の環境を適切に涼しく整えることも、熱中症予防には非常に重要です。室内ではやはりエアコンが素早く効果的です。温度調節はもちろん、除湿機能で湿度を下げて風量調節で適度な風を送ることも可能です。

ここで毎年問題視されているのは「エアコン嫌い」の方が多くいることです。熱中症で搬送された人の8割がエアコンをつけていないという報道もありました。にもかかわらず使用しない方が案外多いという印象です。

理由はさまざまですが、風が身体に当たるのが不快であれば風向き調節で吹き出し口を上方向にする、ブランケットを羽織ることで対策になります。電気代が気になる場合は、カーテンなどで外からの熱を遮断する、サーキュレーター(空気を循環させるもの)を併用することで冷房効率を上げることができます。

また、加齢に伴って体温調節機能が低下するため暑さを感じにくく、エアコンなどの必要性を感じなくなってしまう方も多くいらっしゃいます。温度計や湿度計を設置することで、視覚的に目標の温度・湿度をわかりやすくして温度調節をするとよいでしょう。

それでも室内が暑くつらい日は、保冷剤などをタオルに包んで首・わきの下・足の付け根といった太い血管が通る場所を中心に冷やしましょう。冷えた血液が全身に回りやすくなり、たいへん効果的です。

熱中症予防の3つのポイントを押さえ、残暑の季節も健康に乗り切っていきましょう。