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「書ける人」が話せる人より有利になったワケ

いまは「書ける人」が有利な時代

僕は、現代ほど「書ける人」が有利な時代はないと思っています。なぜか? ひと昔前まで、人と出会うのは「リアル」の場がほとんどでした。友達や知り合いを介して出会う。なにかの会合やパーティーで出会う。あいさつをして、名刺交換して「僕はこのあいだ会社を辞めて、ライターをやっている者です」などと自己紹介をする。そんな感じでした。そういうケースでは「話すことがうまい人」が有利でした。

初対面の場面でうまく話すことができれば「いま、こういう本を書きたいと思ってまして。もしよかったら御社にお邪魔させていただけないでしょうか?」などとスラスラ言える。話が上手な人が得をするのです。「話す」のが得意な人が圧倒的に有利だったのです。

しかしいまは「初対面がテキスト」というケースが増えています。

最近の「初対面」は、ツイッターやメール、メッセンジャーやLINEだったりします。本人にリアルで会う前に「テキストにおける接触」がある。つまり「テキストが初対面」という機会が増えているのです。

そういう時代に有利なのは、話の得意な人ではなく、書くのが得意な人です。最初にテキストでその人を判断して「この人、面白そうな人だな」というのがすぐにわかる。文章がアドバンテージになる、引っ込み思案の人の時代と言えるかもしれません。これからは「書ける人」が有利になっていくのです。

例えばこんなことはないでしょうか?

初対面で、ある人に会ったとします。そのあと「そういえばあの人って、どんな人なのかな?」とその人のツイッターやフェイスブックを見てみる。すると、やたら自慢ばかりの投稿が並んでいたり、誰かへの批判などネガティブなことばかり書いている人だったとしたら……「ああ、ちょっと距離を置こうかな」と思ってしまうでしょう。

逆に「あの人、あんまり印象なかったな」と思っても、SNSをたまたま見ていたら「あれ? 意外と文章がうまいな」「けっこう面白いこと言ってるし、フォロワー3万人いるんだな」と思うこともあるでしょう。

書くことによって「逆転」できる

僕はリアルだと割と引っ込み思案ですし、あまりグイグイと他人の懐に入っていくような性格ではありません。印象が濃いか薄いかでいったら、薄いほうだと思います。それでも伝わる文章を書いてSNSに投稿すれば反応をもらえますし、印象を強くすることができます。

つまり、印象の薄い、話が苦手な人であっても、その後の「テキストでのコミュニケーション」で「敗者復活戦」ができるのです。

これまで「自分をアピールしたいのに前に出ることができない」「ほんとはやりたいことがあるのに言えない」「プレゼンが苦手でうまく話せない」という人は泣き寝入りするしかありませんでした。でもいまは、書くことにチャレンジすれば逆転できるのです。

人前でうまく立ち回る。あらゆる人と仲よくなる。ペラペラと楽しく話をする……。こういったことをするには、ある程度、生まれつきの性格や才能がものをいいます。生まれた環境や、教育によるところも大きいかもしれません。

一方で「書く」能力は、後天的に獲得しやすいものです。どんな人でも幼少期は書く能力に差はなかったはずです。よって、『書くのがしんどい』で書いたような、ちょっとしたコツをつかむだけで書く力はアップさせることができるはずなのです。

書くコミュニケーションは、「話すコミュニケーションの代わりになる」という以上に、メリットが多くあります。

「書く」コミュニケーション、3つのメリット

1つ目は、時間と場所を問わないということです。録画・録音は別にして「話す」コミュニケーションは、時間と場所が固定されます。一方テキストであれば、時間と場所を問わず読んでもらえます。通勤途中に昼休みに、ささっと触れてもらえます。

2つ目は、何人が読んでも緊張しないということです。話すコミュニケーションは相手が増えれば増えるほど緊張します。これはライブ配信などでも同じです。「向こうで何百人、何千人が見ている」と意識しただけでかたくなってしまう。テキストはそんなことはありません。何万人が読もうが、内容もテンションも変わりません。

3つ目は、勝手に拡散していくということです。テキストはコピペも簡単ですし、SNSを通じて瞬時に拡散させることもできます。自分が必死に「営業」しなくても、内容がよければ勝手に広がっていってくれるのです。

しかも一度書いてネット上に載っけておけば、その後に何もしなくてもずっと自分のことを営業してくれます。1回書けば、24時間365日「自走」してくれるのです。

「話す」よりも「書く」が先に来る時代――。そんな時代では「書く」というテキストでのコミュニケーションを制する者が勝てます。「私は内気だから、言いたいことが言えない」「俺は話すのが苦手だから、活躍できない」。もしそう思っている人がいたとしたら、ものすごいチャンスの時代です。書く力を磨くだけで、影響力を増やすことができるのです。