土用の丑の日「うな重とうな丼どう違うの?」

「うな丼」起源は芝居小屋の食事?

Q.昔から、「うな丼」と「うな重」が存在したのでしょうか。それぞれ、どのようなきっかけから生まれたのですか。

『うな丼』の由来は諸説あるようですが、江戸時代末期に刊行された随筆『俗事百工起源』によると、文化年中(1804~18年)の頃、堺町(現在の東京・人形町)の芝居小屋『中村座』のスポンサー、大久保今助が、かば焼きが冷めないようにと、丼飯の間に挟んで芝居小屋に届けさせたものが始まりのようです。

『俗事百工起源』には『うなぎ飯』の起源と書かれていますが、現代のうな丼に近い形だと思われます。

江戸時代にはすでに、うな丼は庶民の間で人気となり、陶器や磁器、漆器の丼を使って出されていたようです。

明治時代に入り、それまで地焼き(焼くのみ)だったかば焼きから、焼く工程で蒸す方法が取り入れられ、かば焼きがやわらかくなったことで、ご飯の上にのせるスタイルが確立、その後、さらに見栄えよくお重に入れたものが登場し、人気になって『うな重』となったそうです。

お重が使われるようになった由来は、他にも説があります。うなぎ飯が冷めないように重箱を3段重ねにし、上下のお重にお湯を入れて、真ん中のお重に入れたうなぎ飯を保温したという説です。お重に入れたうなぎ飯は、その辺りからも、丼よりも高級なものとして認識されていったとみられます」

Q.うな丼、うな重の違いは何でしょうか。丼に入っているか、お重に入っているかの違いだけですか。

「お店によっては両方のメニューがあり、違いは丼に入っているか、お重に入っているかという、器だけの違いというところもあります。中には、丼のご飯にたれを絡ませたり、刻んだかば焼きとたれをご飯に絡ませた『ひつまぶし』のようなご飯を使ったりするところもありますが、多くはおわんや漬物など、付属の品数が違っている程度のようです」

Q.うな重の方が、うな丼よりも値段がかなり高いことがあります。

なぜ、このような差が出るのでしょうか。

「うな重は、うな丼よりもうなぎの量を多くしていることで、値段が高く設定されていることが多いです。

丼よりもお重の方がサイズが大きく、うな丼と同じ量のうなぎを入れたのでは、隙間が多くて見栄えが悪くなってしまうためです。それが値段にも反映されているようです。

その他にも、付け合わせや小鉢、汁物などの品数が違うことで値段に開きがあるようです」

Q.うな丼、うな重には「松竹梅」「並・上・特上」などのランク付けがあります。こうしたランク付けにより、それぞれ何が異なるのでしょうか。

「お店によっても違いますが、一般的には、うなぎの量や大きさ、養殖か天然かの違いで決められています」

Q.うな丼、うな重の両方が食べられるお店では何を基準にして、うな丼か、うな重かを選べばよいのでしょうか。

「うな丼は、うなぎを使う量が一番少なく、値段の設定もお手頃感があるため、所持金の都合で選べばよいと思います。うな丼をお昼だけ提供するなど、お店も集客を考えたメニュー構成にしている場合があり、結果的にあまり大差ないこともあるようです。

お店で使うたれやご飯は丼もお重も同じなので、その店の味わいを楽しみながらお手頃感で選ぶなら、うな丼がおすすめです。一方で『土用の丑の日くらいは奮発したい』ということであれば、うな重を注文してもよいのではないでしょうか」